残酷な神の翼下で②

~~その日の夜:幼児院住まいの孤児の少女レニの告白~~

神様、マティウス兄さんが死んじゃったのは、あたしのせいなんでしょうか。

初めて兄さんに会ったのは、あたしがこの院に来た日のことで。

それ以前のことは、もうあまりよく覚えていません。
お父さんお母さんがいつもいつも怒鳴っていたこと、しょっちゅうおなかがすいていたこと、ひっきりなしに殴られたりぶたれたりしていたこと……そんな感じです。
2人が流行り病で亡くなって、しばらくして誰かが、寝込んでいた私を家から運び出してくれたみたいで。

気が付いた時には、この院に引き取られていました。

最初、あたしは弱っていて、ただ寝ていたのですが。
その間のあたしの面倒を見てくれてたのが、兄さんだったんです。

兄さんは自分の勉強や院の雑用なんかで忙しかったのに、毎日のようにあたしの様子を見に来てくれました。
清潔な寝台で寝かせてくれて、食事をきちんと食べさせてくれて、年上の子たちの古着の中から綺麗そうなものを私にもらってきてくれたり。
下働きの女性たちに頼んで私をお風呂に入れさせてくれたり、髪を切らせたりもしてくれました。

あたしは少しずつ健康になり、元気になり。
それでも最初は人が怖くて、兄さんの後ばかりついて歩いていました。
そのうちだんだんと慣れて、他の院の子達と一緒に勉強したり、女の子達と一緒に針仕事や手仕事を習ったり、雑用の手伝いをしたりもするようになっていきましたが。
でも、あたしがいつでも一番好きで、安心できる相手は兄さんだったので。
何かというと、あたしは兄さんの後に付いて歩いてばかりいた感じでした。

そんな感じで、あたしはこの院に来る前よりはずっと幸せでしたが、幸せではないこともありました。
あたしはあまり頭が良くないみたいで、仕事も勉強もなかなか覚えることができず、うまくできずに失敗することばかりで。
いつも、院長先生をはじめとする先生たちに叱られてばかりいたんです。

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