ギリシャ旅行記 1日目〜2日目
はじめに
先日、一週間ほどギリシャに行ってきた。
その旅行記を書こうと思う。
「ギリシャに行ってきた」と人に言うとなぜギリシャにしたのかとよく聞かれるのだが、はっきりとした理由はない。地中海を見てみたいという思いがあって、イタリア・スペイン・モロッコ・エジプトなども検討し、最終的にはギリシャにした。温暖でおおらか、青い海と白い建物、というリゾート的なイメージにひかれたのかもしれない。
それでは初日、日本を発つところから。
1日目
エティハド航空に苦しめられる
16時半の便に乗るために成田空港に来た。ここからアブダビを経由して、翌日の昼ごろにアテネにつく。エティハド航空というUAE(アラブ首長国連邦)・アブダビ拠点の航空会社の便だ。
しかし、空港に到着するやいなや、チェックインカウンターの大行列を見て絶望することになる。
どうも、①通常運行便(わたしが乗るやつ) と ②前日の欠航便の振替 が同名のため、カウンター業務が大混乱しているらしい。
そんな素人みたいな理由があるかと思ったのだが、現場はわけのわからない状態になっており、どちらが欠航便の列でどちらが通常便の列なのかもわからない。列形成がぜんぜんできていないのである。わたしはこの時点でエティハド航空を見限った。
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2〜3時間ぐらい並んでようやくチェックインが終了し、保安検査と出国審査に駆け込む。今の出国審査って自動化されてて速いですね。
この時点で航空便の遅延は確定しており、先が思いやられる。
早めに出国審査を終えて空港内でゆっくりする予定だったのだけども、チェックイン大荒れによりぜんぜん時間がない。正確にいえば、遅延の程度がわからないので、時間がないのかもわからない
本屋があったので「地球の歩き方」ギリシャ篇を駆け込みで買った。長らく陳列されっぱなしだったのか、記載情報が少し古い旨をレジで告げられた。まあいいかと思って買う。
忘れていたので、大急ぎで日本円をユーロに両替する。3万円を両替したら185ユーロになったのでかなり心細くなる。いまだに1ドル=100円が外貨に対する認識のベースになっているので、3万円を両替したら300ユーロぐらいになってほしい。
両替を済ませて飛行機に乗り込む。乗ったら乗ったで、離陸までこれまた1時間半ぐらい待つ。機内アナウンスはアラビア語と英語で、(わたしの語学力ゆえに)あまり何を言っているかわからなかった。とりあえず謝ってはいた。
搭乗
エティハド航空の機内食は意外なほどにうまかった。失われた顧客からの信頼がわずかに回復する。
チキン・フィッシュ・ベジタリアンの三種類から選ぶ形式で、わたしはフィッシュにした。魚の揚げ物に青椒肉絲が絡んだような料理で、白飯がすすむ。黒胡麻風味のデザートもおいしかった。
機内では「ジョン・ウィック2」をみたり寝たりしながら過ごした。
当然? 日本語字幕はないので英語字幕での鑑賞を試みたが、字幕が映像に対して5秒ぐらい遅れて表示される。情報がある分ありがたいかとも思ったのだけど、じっさいには過去の情報が現在の映像と並走することで脳が破壊される。
けっきょく諦めて字幕なしで見たのでストーリーがよくわからなかった。犬はかわいかった。
アブダビ到着前に機内食がもう一度出てきた。成田発が16時、アブダビ到着が23時(どちらも現地時間)なのでいらないような気もするものの、食わせてもらえる分には文句はない。
今度はえびピラフを食べた。抹茶味のプリンのようなものもおいしい。飯はうまいが仕事は遅い、謎の航空会社である。
アブダビ空港到着
深夜のアブダビ空港に到着した。店を眺めて物価の高さに驚く。
バドワイザーが一瓶40AEDぐらい。1AED=40円で換算すると、1600円もする。
カフェに入り、やむなく900円のカフェラテを啜る。
アラビア語で「こんにちは」と「ありがとう」は言えるので店員に挨拶でもしておこうかと思ったが、話してみるとネパール人らしかった。
日本にはネパール人がたくさんいるでしょう、という話をされた。確かにたくさんいる。
アラビア半島くんだりまでやってきてアジア人同士で会話をしているというのも不思議な気分である。
なんとなくUAEについて調べていたら、この国では公共の場で踊ることは違法らしい。逆に「そこまで踊りの力を認めているのか? 」と思わんでもない。
空港に軍人が歩いていることが多いのは見慣れない光景だった。どこか落ち着かない気分になる。
もし展望台でもあればアラビア半島の空気を嗅いでみたいものだと思ったけど、どうもないらしい。
2日目
ラウンジ
空港で日付が変わり2日目。このあたりでラウンジで休むことにする。
用意されている食事もおいしかった。豆やきゅうり、ヨーグルトが目立つメニューに中東を感じる。
ドリンクに7UPがあったので久しぶりに飲む。日本だとあまり見かけなくなったよなと思って調べたところ、2021年にひっそりと販売が終了していたらしい。
まったくの余談だが、ブコウスキーの「パルプ」にウォッカ7というカクテルが出てきて、主人公が
と注文するのがちょっとカッコいい。他にもウォッカをミネラルウォーターで割ってタバスコを足すとか、無骨なんだけどやけに旨そうなカクテルがたくさん出てくる。
閑話休題。せっかくラウンジに入ったのでシャワーを浴びていく。このときはまだ知る由もないのだけど、ギリシャではしばらく水シャワーしか浴びれないはめに陥るので、この熱いシャワーは貴重だった。
びちょびちょのウォシュレット
制限時間があるため、なんともいえない時間にラウンジを出る。
飛行機の中でもそんなに寝ていないので、今の状態は徹夜に当たるのかもしれない。時差とかもあって経過時間がよくわからなくなってきているので、あまり疲労感はなかった。
アラブ風のウォシュレットに挑戦する。画像の左側にあるように、シャワーのような・ホースのようなものが備えつけてあって、これでお尻を洗う仕組みだ。水量・水圧ともにすごくて、床が水びたしになっていることも多い。
これはつまり、うんこを希釈した水が床に撒かれているということを意味してはいないか?
まあ、海外だとそもそもウォシュレットがないところのほうが多いので、あるだけありがたいとも言える。
ギリシャのトイレ事情はあまりよくないという話を聞いていたので、特大の便をかましておいた。
早朝
あとは出発まで時間をつぶす。
アブダビにも朝日が昇ってきた。朝焼けに煙る三日月型の管制塔がうつくしい。
ところで、わたしは空港が好きだ。
なぜかといわれると難しい。ポイントを列挙していくと、
他の建造物には見られない、平たく広い空間
ラウンジや免税店に代表されるような高級感と、バックパッカーがそこらへんで寝ているような雑な空間であることの対比
どこにでも行ける場所なのに、空港の敷地内から出るには出国審査などの高いハードルが設けられているという対比
そもそも、飛行機そのものをはじめとする機材がカッコいい
あたりだろうか。
豊かで自閉的な、自己完結した施設なんだけど、同時に旅というか外向きの要素を濃く持っているところが素敵なのかもしれない。
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早朝の空港には独特の気だるさがあって、自分が何をしにきているのかよくわからなくなる。
人気のないところを探して、売店で買ったポテトチップスとコーラを摂取したり寝たりして時間をつぶす。旅行記に書くようなことでもない部分だが、海外旅行にはこういう「無」の時間がつきものである。そしてわたしはこの時間がけっこう好きでもある。
ギリシャに着いたあとの予定をあまり決めていなかったので、このあたりで「地球の歩き方」をめくりながらすこし考えた。どこかの島とメテオラには行くつもりだけども、一泊するか否か。日帰りだとあわただしくなってしまいそうで悩ましい。
搭乗
タラップでアテネ行きの便に乗りこむ。
ここで懸案だったアラビア半島の空気を嗅ぐことができた。砂漠だから乾燥しているのかと思ったが、意外と蒸し暑い。海が近いからだろうか。
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機内では、隣の席がペロポネソス半島出身のおばあさん二人組だった。英語でいろいろ話しかけてくれたものの、あまり聞き取れないので申し訳なく思う。
通路を挟んで隣側のおじいさんにも話しかけられた。ギリシャからオーストラリアに移住した人で、何やら大変な人生を送ったらしい。
こちらの英語はわかるので安心する。おばあさん軍団の英語は訛りが強かったのかもしれない。
おじいさんと旅について話をする。
というようなことを言われた。うつくしい言葉だと思う。文字に起こしてみると素朴なのだけど、シチュエーションによって深みをもつ言葉というのはある。
ついでにギリシャ語の「ありがとう」を教えてもらった。"Ευχαριστώ (エフハリスト)" というらしい。
しかしどちらかといえば「どういたしまして」を覚えたい。隣のおばあさんがトイレに行きまくり、その度に「ありがとう」と言われる側だからである。
着陸
飛行機の着陸前後に尿意がMAXになる。順番待ちをしているらしく、なかなか降機できない。
席を立てず、おしっこを我慢しながら見るギリシャの景色は必要以上にうつくしい。明らかにカラッとした陽光がふりそそいでいる。刑務所に連行される車中から窓の外を見たらこんな気持ちかもしれない。ギリシャに着いた瞬間漏らすのか?
入国審査
漏らしませんでした。
入国審査では何の質問もされず、機械的にハンコが捺された。人をこんなに無防備にシェンゲン協定内に入れていいんだろうか?
ともかく、無事入国できてホッとする。
夏のギリシャは、今まで行ったことのある土地の中ではアメリカ西海岸に似ていた。さすがに暑いが、空は晴れ、空気は乾燥していて気分がいい。
体調が悪い
天気はいいのだが、自分の体調はというと、これがかなり悪い。久しぶりに長時間飛行機に乗ったせいだろうか。風邪をひいたように頭が重い。
とりあえず駅でミネラルウォーターを購入し、飲む。アブダビ空港の異常な物価からするとかなり安く感じてうれしい。
アテネ市内へ
空港からアテネ市内へは地下鉄に乗る。地下鉄といっても、空港近くは地上区間になっている。
ホームには煙草を吸っている人がいたり、(日本の鉄道を基準にすると)なんだか寂れた感じである。みんなバスとかで移動してるのだろうか?
20分ほど待つと電車が来た。ここから40分ほどかけてアテネ市内にある宿の最寄駅まで向かう。
車窓から外を眺めると、線路脇の壁にとにかく落書きが多い。この後の旅程でも感じることになるが、アテネは意外なほどに落書き都市である。
ギリシャの山の雰囲気は日本と違っている。全体的に木の丈が低く、かわいらしい。日本の山がいかに鬱蒼としていることか。
ハズレの宿を引く
宿の最寄駅に着くと、外国に来たぞ! という感じがして少し元気になる。
宿まではあまり日陰がなく、遠くの丘まで道がまっすぐ伸びている。
車の運転は日本に比べると荒いような気がした。
駅から10分ほど歩くと宿についた。今回はairbnbを利用したのだが、結論から言うとこの物件はまあまあのハズレだった。
タベルナの二階を貸しているところで、一回が飲食店なら営業時間中は人もいるのだろうし安心だと思ったのだけども、どうやら閉業中らしい。建物全体の雰囲気が薄暗い。
この日は自分の他に、屈強な坊主の男がひとり宿泊しているらしかった。自室のドアが爆音で軋むのでなんだか生活に気をつかう。
以降も旅行中を通して、シャワーが水しか出ない、エアコンが壊れた、ゴキブリが二匹出た、などさまざまな方向から苦しめられることになる。まあ、安かったのでいいとしよう。
街へ繰り出す
荷物を下ろすとさらに元気になってきたのでさっそく街へ繰り出す。
宿からアテネ中心部へは若干距離があり、30分ぐらい歩く。わたしは散歩が大好きなので徒歩で向かってみた。
アテネ国立公園を抜ける。あたりには政府関係の施設などが多く、警察官も行き交っていて落ち着いた雰囲気である。
おみやげを物色
しばらく歩くとプラカ地区についた。アテネの中心部といっていいあたりで、遺跡が点在し、土産物屋やレストランがあって賑わいを見せている。
土産物屋には、キーホルダーやポストカードといった万国定番の品から、オリーブ製品や古代風の像などギリシャらしいものまで色々ならんでいる。旅行初日にしてさっそくお土産を物色する。
さっそく海綿を購入した。
海綿、といってあまりなじみがない人もいるかもしれない。これは元は海の動物で、ふつうの動物でいう骨格の部分が柔らかいスポンジとして使えるのだ。写真を撮っていなかったのでここは各自想像などで補ってほしい。
値札をよく見ていなかったので、高級品の部類の海綿を買ってしまった。
一口に海綿といっても、パッケージのビニール袋が埃をかぶってすすけているものから、見るからに大きくて立派なものまで、店によって色々ある。
海綿以外にも、帰国前に買いたいものを考える。レザーサンダル、民族楽器(おみやげ用の100〜200ユーロぐらいのもの)あたりが気になるところである。
猫、そして犬
アテネのこのあたりは丘になっていて道も細く入り組んでおり、歩いているだけで楽しい。
階段をむしろ生かすようにレストランのテーブルが並んでおり、流しのミュージシャンの姿も見られた。
わたしはテラス席が好きだ。
ヨーロッパ人のテラス席に対する執念めいたものはすばらしいと思うし、日本にもテラス席が増えてほしいと思う。
日本にテラス席が少ない理由は明らか、「気候」の二文字なので仕方なくはあるのだけども。
そして、このあたりには野良猫がたくさんくつろいでいる。
人が近づいても逃げることもしない。日本と何の条件が違うのだろうか?
大型犬もくつろいでいた。こちらはさすがに誰かの飼い犬らしかった。
それにしてもノーリードでごろごろしており、我が国ではまず見られない光景である。かわいい。
狂犬病が嫌すぎる
じゃっかん唐突だが、今後の旅行をつらぬくトピックでもあるので今のうちに述べておくと、ギリシャは狂犬病非清浄国である。ギリシャは、というか、世界のほとんどの国は非清浄国である。
狂犬病がないのは日本とオーストラリア、ニュージーランドなど限られた島国ぐらいらしい。
ということは、猫や犬に関しては飼育・野良問わず狂犬病の可能性が否定できないため、基本的には触ってはいけないのである。フレンドリーな犬猫がたくさんいるのに触ってはいけないというのはちょっとつらい。
まあ、アテネぐらいの都市部なら狂犬病の動物がウロウロしてるってことはないのでは? (危険なのは田舎部では? )と思わないでもないのだけども、「死」のリスクは犯せない。
旅行中によく調べたので、狂犬病について詳しくなってしまった。致死率ほぼ100%というのはすごい。
ハドリアヌスの図書館へ
海外に来てまでずっと狂犬病の話をしている人になってしまったが、このあたりでギリシャ旅行初の観光地らしい観光地へと向かう。ハドリアヌスの図書館だ。
これはその名の通り、ローマ皇帝ハドリアヌスの手になる図書館の遺跡である。ハドリアヌスは五賢帝の三人目で、当時最盛期であったローマ帝国の安全保障について業績があり、世界遺産のハドリアヌスの長城にもその名が残っている。
その一方で彼は文化人、特にギリシャ文化好き(hellenophile)としても有名で、ギリシャ各地に彼の足跡がのこっている。
日本でいう西洋かぶれみたいな感じで、ローマ帝国におけるギリシャ好きというのはひとつのジャンルとしてあったようである。
生活と遺跡が密着している感じ、遺跡の真裏に店があるような感じは京都や奈良といった都市を彷彿とさせる。雰囲気は似ていないのだけど、思想として、というか。
ハドリアヌスの図書館からはパルテノン神殿があるアクロポリスの丘も拝める。旅の目標になるような大建築が遠くに見えて、心がおどる。
古代においても同様かそれ以上の偉容をほこっていたことだろう。
このあとは、モナスティラキ広場で演奏するストリートミュージシャンを眺めたりして宿に戻った。
だいぶ長くなってしまったが、これで日本出国〜観光初日が終了した。
三日目以降につづく……
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