冬月副司令に学ぶ雑談の切り出し方

 今日は芯を食ってないエヴァンゲリオンの話をします。TVアニメ版です。好きなエヴァンゲリオンは2号機です。よろしくお願いします。
 エヴァ、本当にいいアニメですよね。現代の制作環境では考えられないぐらい一話一話が濃くて、こんなに食べていいのか!? みたいな、最高です。

 さてTV版17話のことですが、翳りゆく陽をうける第3新東京市を眺めながら、冬月コウゾウと碇ゲンドウが電車の中で雑談をかわすシーンがあります。

冬月: 
街 人の造り出したパラダイスだな
碇: 
かつて楽園を追い出され 
死と隣り合わせの地上という世界に逃げるしかなかった人類 
その最も弱い生物が 
弱さゆえ手に入れた知恵で造り出した 自分たちの楽園だよ
冬月:
自分を死の恐怖から守るため 自分の快楽を満足させるために 
自分たちで造ったパラダイスか
この街がまさにそうだな 自分たちを守る武装された街だ
碇:
敵だらけの外界から逃げ込んでる 臆病者の街さ
冬月:
臆病者のほうが長生きできる それもよかろう
第3新東京市 ネルフの偽装迎撃要塞都市
遅れに遅れていた第7次建設も終わる いよいよ完成だな
4号機の事故 委員会にどう報告するつもりだ
碇:
事実の通り 原因不明さ
冬月:
しかし ここに来て大きな損失だなぁ
碇:
4号機と第2支部はいい 
S2機関も サンプルは失ってもドイツにデータが残っている
ここと初号機が残っていれば十分だ
冬月:
しかし 委員会は血相を変えていたぞ
碇:
予定外の事故だからな
冬月:
ゼーレも慌てて行動表を修正しているだろ
碇:
死海文書にない事件も起こる 老人にはいい薬だよ
(Netflixの字幕に準拠)

 ここで注目したいのは冬月副司令のあまりにも鮮やかな雑談の切り出し方です。冬月とゲンドウは、かつては師弟のような間柄でありながら現在はネルフの副司令と司令である、というねじれた関係をもっています。しかもゲンドウはゼーレの意向を半ば無視して独自の計画をすすめていることから、行きがかり上、冬月はゲンドウの最大の理解者といっても過言ではない状態に追い込まれています。このふたりの関係はたいへん微妙なものです。
 そして、電車の中におじさんふたり。べつにお互い無言でTwitterやっててもいいぐらいの状況だと思うんですが、ここで冬月は動きます。

「街 人の造り出したパラダイスだな」

 いや、こんなにおしゃれな雑談の切り出し方ありますか? 冬月副司令はいい人だなと前々から思っていたんですが、これを聞いて尊敬の念に変わりました。しかも後に続く会話を見てみると、どうやら本題は「4号機の事故 委員会にどう報告するつもりだ」のようです。べつにこのセリフから会話をはじめても何も問題はなかったと思うんですが、軽くジャブを打って場の雰囲気を和ませようとする冬月さんはえらい。

 そして、この切り出しに「かつて楽園を追い出され……」から返す碇ゲンドウもやはりさすが。もっと緊迫した場面ではこれぐらいのことを言っていても不思議ではないんだけども、電車の中の雑談でこのレベルのトークができるんだ、という。やはりゼーレを向こうに回して戦うにはこれぐらいのコミュ力は必要だということでしょうか。その割には息子との人間関係がギスギスしとるな。

そろそろお別れとなります。この次も、サービスサービスぅ!

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