ギリシャ旅行記 4日目 (海と博物館)
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4日目
エアコンが壊れる
朝5時に起きるとエアコンが壊れていた。夜中は窓を開けて寝ていたため、起床してエアコンをつけようとしたときに気づいたのだ。
部屋はじっとりと暑く、シャワーは冷水というハードコアな宿が誕生した。
いちおうairbnbのホストに連絡を取るが、タイムリーに直してもらえそうな感じはしないし、どうしたものか。
船に乗れない
今日は島に行こうと思っていた。
この「島に行く」という曖昧な物言いが何を指しているか説明しよう。まず、エーゲ海に面するギリシャはたくさんの島を持っている。
その数1200〜6000、有人島は166〜227におよぶという。英語版Wikipediaの記載によったが、なんだか幅のある数値だ。
中でもミコノス島、サントリーニ島などはリゾート地として有名で、世界中から観光客がやってくる。一週間の旅行なので、これらの島をどれでもいいからひとつ旅程に組み込もうと思ったわけである。
ネットで適当な船を予約することも考えたが、「ネット予約してもチケットを印刷して持っていかなければいけない」など、21世紀とは思えない情報が流れてくる。
そのため、「早朝にチケットカウンターに行ってその日のどれかの便を買う」という荒技に出ることにした。どうせ毎日早起きしているのだから、それを有効活用しようというわけだ。
そういったわけで朝のピレウス港に向かった。ピレウス港までは宿から地下鉄に乗って30分ほど。アテネ市街地からは少し離れたところにある。
以前の旅行記で空港が好きだという話をしたが、とうぜん港も好きだ。
空港とはまた違った、ある意味で素人を寄せ付けないようなソリッドさが魅力の気がする。海と陸という明確な境目があるから(ひいては、海に落ちたら死ぬから)だろうか。
早朝のピレウス港は薄暗く、客船の放つ光が目立った。工場の夜景と似ていて、どこか超然とした雰囲気がある。人々は忙しなく乗り降りしている。
豪華客船といっていいようなものから、小ぶりの船までいろいろだ。
しかしチケットカウンターに行ったところ、早朝便はなく、船は12時からしかないとのこと。いまいち英語が通じておらずコミュニケーションに失敗した雰囲気もただよい、若干落ち込む。
とはいえ島には行きたいので、その場で翌日の高速船をネット予約した。行き先はミコノス島。チケットの印刷については、印刷しなくてもいけたよという報告もネット上には多かったので、いったん目をつぶることにする。
大きい客船で優雅に移動するつもりだったのだが、小さめの船で移動することになりそうで、船酔いが若干心配である。
エーゲ海を見る
さて、船に乗れなかったため、今日することがなくなってしまった。
海を見たい気持ちにはなっていたので、アテネ市内の砂浜まで行ってしばし眺めることにした。
砂浜までは港から30分ほどの道のりになる。海辺にはレストランなどが立ち並んでいるが、まだ早い時間なので人気がない。例のごとく野良猫がたくさんくつろいでいた。
しばらく歩いていくと砂浜についた。ピレウス港は少し騒がしかったので、ここではじめてエーゲ海をのんびりと眺める。
年配の人々が海水浴をしている姿が目立った。おばあさんもビキニなのはかっこいい。
みんなかなり遠くまで行っているが、よほど遠浅なのだろうか。
砂浜には野良猫だけでなく、野良犬の姿もあった。なんだかダルメシアンみたいな柄である。
砂浜から帰ろうと思ったところで、駐車場で吠えまくっている狂犬(くるいぬ)と遭遇した。
縄張りに近づくものを警戒するような感じで、付かず離れずの距離でじっとこちらを見てくる。
車の影を通ったり、他の通行人を囮にしたりしてなんとか逃れた。
アテネ国立博物館へ
午後はアテネ国立博物館に行くことにした。旅程のどこかには組み込もうと思っていたのでちょうどいい。
持ち直していた体調がここにきて若干悪化してしまい、序盤は「知らんやつがむかし作った壺とか見てもねえ……」という気分になっていたが、ローマ皇帝の彫像の連打や著名オーパーツ「アンティキティラ島の機械」をみて徐々に機嫌がよくなってきた。
アウグストゥスはいかにも神経質そうで、あまり上司にしたくない感じである。ハドリアヌスは髭面でカッコいい。
「アンティキティラ島の機械」については、国立天文台webサイトの記事を引用しておこう。世界最古のアナログ計算機みたいなものらしい。
回収されたパーツごとにばらばらに展示されているのだけども、金属片にしか見えないようなものも多く、研究者たちの苦労が偲ばれた。
このあとは博物館から出て近くのカフェで昼ごはんを食べた。
テラス席でサンドイッチを食べていたところ、奥の路地で何やら浮浪者的な雰囲気の人たちがたむろしている。この場合「浮浪者」ではなく「たむろしている」にアクセントがある。徒党を組んでいる雰囲気というか。
後から知ったが、国立博物館の周辺(エクサルヒア地区)のあたりは治安がかなりよくないらしい。特に話しかけられたりすることはなかったので運がよかった。
漫画屋、ボードゲーム屋へ
念のためというか、ギリシャのオタクショップをのぞいておくことにした。国立博物館の近くの地域に漫画屋やボードゲーム屋が何軒かあるようだった。
特にメモを取らなかったので?具体的な作品名は覚えていないが、漫画の品揃えは割と充実していたように思う。やはり日本の作品が大半だった。フィギュアやTシャツ(許可を取っていなさそうな)も並んでいた。
何店舗か巡るが、特に買いたくなるようなものはなく退散。
途中現地のオタクカップルらしき人たちを見かけた。まとっているオーラが万国共通で感動する。
フォーを食べる(一敗)
このあたりでアジアの味が欲しくなってきたため、現地のベトナム料理屋に入る。まだギリシャ料理といえるものをほとんど食べていないのに、早くも敗北である。
日本のベトナム料理屋で食べる味と変わらなくてありがたい。一緒にコーラも頼み、体調が回復する。万能薬だ。
薬局にGo
船酔いが怖くなってきたので、薬局で酔い止め薬を探すことにする。
というのも、朝に予約した高速船のレビューを旅の合間に読んでいたところ「乗客が全員吐いていた」みたいなえげつないレビューがまあまあ見つかったのである。
わたしは車では酔わないのだけども、船はあまり自信がない。念のため備えておくことにする。
"motion sickness"という単語を舌になじませてからおもむろに薬局に入る。
ギリシャの薬局はグイグイ接客なので、物欲しげな様子のわたしをみて店員の方から話しかけてきた。
motion sicknessの薬が欲しいと伝えるとすぐに出てきて一安心する。値段も安い。なぜ安かったのかはこのあと明かされます。
ウェットけつ拭き
宿に戻る前にスーパーに行って物資を調達する。主にティッシュやウェットタイプのおしり拭きを買った。なんか紙ばかり買っているな。
ウェットケツ拭きの発見により、この旅におけるおしり事情がすこし改善された。ギリシャ人は自国のトイレ事情に慣れきっているのかと思いきや、改善の意思はあるようである。
鳩と生姜とわたし
買い出しを済ませて宿に戻ってきた。
自分の部屋だけドアの開閉音が異常にうるさく、お化け屋敷みたいな音がする。夜遅くに出入りするときなんか、他の部屋の住人のヘイトをためていないか心配になるぐらいうるさい。
まあ、この宿の雰囲気を見た感じ、自分以外の宿泊者は1~2日で入れ替わるのだろう。
しまいには部屋の窓際で鳩が騒ぎはじめた。
クーラーが壊れているため窓を閉めることもできず、おしまいの宿と化す。
プラセボ
昼に買った乗り物酔いの成分を確認したところ、主成分が「生姜の根の粉」でずっこける。カウンター奥の木箱からものものしく出てきたので当然サイエンスなやつだろうと思い込んでいた。
箱を見なければプラセボとして使えたかもしれないな、とよくわからない後悔をする。
生姜は古来から制吐剤として使われていたらしいので、明日船に乗るときもいちおう飲んでみることにする。海外旅行、エビデンスばかりに頼ってもいられない。
5日目に続く……
ください(お金を)