2.3 作家「河野先生」について

サクラダリセット3

 つい先日、サクラダリセット3を読み終えたのですが、3は非常に良い作品でした。
 主に中学時代の話で、3人自体に焦点を当てています。3人それぞれがお互いを見て、どのような人なのかというのを優しく残酷な書き方をしています。なぜ、彼らはこのような行動・言動を行っているのか、という根っこの部分が書かれています。簡単に言えば、自己紹介・他人評価パートです。それに加え、この「サクラダリセット」での伏線という意味での重要なパートでもあります。「彼女の存在とは」というところに焦点を当てると今後も楽しめるかもしれませんね。

投稿が遅れました

 話は変わりますが,ここまで1か月半前書きましたが,大学4年である身「卒業論文」をサボりにサボってきたつけが回り,忙殺されていました故,noteを書く暇がなかったため,全巻読み切りましたが,時間が経ってしまったり,引っ越しの為に本を実家に送ってしまったため,各巻感想は終わろうかなと思います.でも,これだけで終わるのはちょっと申し訳ないし,自分でも嫌なので,雑然としちゃうかもしれないけど全体としての感想をとりあえず,ぶつけようかなって思います.

心理的な潔癖

 まずサクラダリセットのキャラクターは非常に透明が高く,善意に満ち溢れています.そのように描けるのは河野先生自信が潔癖であったからとインタビュー記事に書いてあったような気がします.インタビュー記事のURLはとってあるので後でまとめておきます.

 今はそうでもないが,思春期を終えるくらいまでは心に潔癖症のようなものを持っていて,花を切り取り花瓶に飾るという事が気持ち悪い

 心の潔癖みたいな感じとも仰っていました.その記事を読んで,嘘をつくのが好きではない俺はちょっと共感を覚え,ますます好きになりました.
 それに加えて,あとあと本屋大賞を受賞した「流浪の月」を読んだとき,似たようなことが書いてあって,少し驚きました.

河野先生インタビューURL

http://www.groupsne.co.jp/user/interview/2009/05/01.html
http://www.groupsne.co.jp/user/interview/2017/04/01.html
https://kadobun.jp/reviews/139.html
https://kadobun.jp/feature/interview/7xt0yklzkt0c.html


タイトルセンス

 あと,各巻・話のタイトルのセンスは河野先生がピカイチだと思っています.
 サクラダリセットで一番のお気に入りは「片手の楽園」です.スイートレモンとも言っていましたね.夢の中でなんでもできる能力だが,社会とは完全に断絶しており,自分しかいない.自分が片桐だとも忘れミチルと言い張り,仮想の神様チルチルを作ることで,楽園だと言い張る.それでも,自分のうちのどこかは片桐であることを覚えている.あまりに寂しいが,残酷である.
 この巻のテーマとしての願うだけで叶ってしまう「片手間」の楽園,うん,めちゃしっくりきますね.さらに,仮の名前として「チルチル」と「ミチル」を使ったのも非常に面白かったです.
 「青い鳥」の主人公兄妹ですね.大学の小さな本屋で立ち読みしたのを覚えてます.幸せ青い鳥を探すために冒険する物語でした.最初は重松清の「青い鳥」しか知らなかったので元ネタがあったのは驚きました.

物語として

 サクラダリセットは多角的に見ることができますね.前にも書いた気がしてきたけど,いい意味でメンドクサイ恋愛ストーリとも,推理能力ものとも,善や正義を考える哲学ものとも取れます.それらが絡み合うことで複雑さを増すが,そこが面白いと思えるストーリになった.
 恋愛模様では,相麻の持つ能力と持つ願いのギャップでややこしくなりました.彼女はただ,ケイを愛していたのです.好きという恋愛以上に恋愛をしているとも言えるかもしれません.だから,簡単にアイデンティティを捨て去れるのでしょう.到底考え付きませんね.純粋すぎて尊敬すべきだが,怖いって思ってしまい複雑です.
 推理能力ものとしては,浦地さんとの戦いがやはり驚きました.浦地さんと戦ているのだから浦地をターゲットすると勝手に思い込んでいました.叙述トリックでしたね.浦地さんの父さんの性格,浦地さんの最も信頼する加賀谷さんが行った事実と心情,シナリオの下りをもっと重要視するべきでした.
 哲学としては,ケイと浦地さんは善と正義の象徴だったのではないでしょうか.ケイは苦を与えず幸せを願うが,浦地さんは正しさを全肯定し,悪を何一つ許容できない.
 どっちかが間違っていて,どっちかが正しいなんてことはないのだと思います.ケイも最後にカルネアデスの板に例えて言っていましたね.結局は善も正義も個人の主義や好き好みの話である.でも,どちらかを選ばざる負えないとき,互いに説得する必要がある.説得に必要なより幸せな結末を描くストーリが必要だったわけです.誰も不幸にならない結果より,だれしも幸せな結果が良いとケイは考え,その差が決定打になったのではないかと勝手に考えました.長くなり過ぎました.

紹介していなかった好きな場面

 能力が消えてしまう下りです.この下りは消される決定をされた時の嘆きと,ケイだけが取り残される絶望感とそれに反してなんて事のないとても幸せな能力のない日常のギャップがたまりませんでした.
 宇川さんの能力によって雨雲が消されてしまう場面で,津島さんとの会話で,「離れてしまった会いたい人と携帯電話でしゃべること」や「車でドライブすること」のような持ちうるものを自由に使う事と,咲良田の能力を自由に使う事の差はなんだと津島さんに問い,「なんとなくずるい気がするから」と答え,去っていくところが印象的でした.
 そこから,能力のないシアワセな咲良田の日常があり,そこには春埼がいなくて,相麻がいた.相麻とお昼を階段の踊り場で食べる場面で「マフラーを編むよりずっと時間をかけてプレゼントをもらた」とケイが相麻に振るような宣言をしました.初めて見たとき,春埼に行っているのかな?とか勝手に考えました,何を言っているのか正直分かりませんでした.でも,2~3度目にこれは「元居た世界の相麻」に対していってるとわかり「おお!」てなりました.
 そこから,咲良田に来て以来初めて,ケイの住んでいた町へ戻る場面がありました.偶然,母と生まれてくる予定であった娘?と出会いました.そこで,謝る練習と題して,両親へ「ごめんなさい」と.ここで,許すことも許さないこともせず「はい」って答えたとき,こっちも泣きそうになりました. 

最後に

 久しぶりだったので,何を書けばいいか分からなくなったけど,書き始めてみたら,普通でした.あ,言い忘れてましたけど,あけましておめでとうございました.
 ちなみに,読書に関しては,今,安部公房の「砂の女」を読んでいます.
 あと,去年の読書量は42冊でした.月平均3.5冊らしいです.面白かったランキングとかも書きやすいかな.まあ,今回はこれくらいで.

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