2.2 作家「河野先生」について

前回のつづき「サクラダリセット」

 前回,サクラダリセットについて綴ったけど,原作を読みすすめているうちに,やはりまだ足らないなっと思ったので,少し続けます.

作中の優しい会話について

 特に,彼らの雑談というのは非常に読んでいて,聞いていて心地の良い物です.もし,人と雑談をするなら彼らと同じように話したいなと思います

 野ノ尾との雑談では「世界で一番優しい言葉」についてや,「生まれ変わったら」の話では,野ノ尾は「大きな木になって猫によい風景を見せてあげたい」といい,浅井は「人に試練を与えない,人間不信ではない神様になりたい」と言っていました.

 村瀬と対戦後の会話では「傘を忘れた人がいたら傘に入れてあげましょう」「腹を空かせている猫がいればミルクをあげたい」と.

 小春日和のお昼過ぎに差し込む柔らかく暖かな光に,仔猫が温まっているような,とても奇麗で悪なんて存在しないような会話に,「好き」という感性が暴れまわります.

 また,この作品自体にも正直「悪」という「悪」は存在しません.そこには,「各々が持つ正しさ」があり,そこでぶつかり合うのです.正しさとは何かという点において純粋に向き合います.

登場人物について

 まずは主人公の「浅井ケイ」から。浅井ケイはよく、自分の事を「我儘」といいます。普通、我儘というのは自己中心的な考え方と言い換えられ、悪いイメージがありますが、彼の思考・性格は世界平和的なものであって、自分が願う「幸せな世界」への我儘という意味になります。そして、その究極が「神様になりたい」だと思います。彼のようになりたいなと夢見ています。

 次は1ヒロインの「春埼美空」です。彼女は、浅井と出会うまでは感情がほぼなく、自分のルールに従うだけでした。しかしその実、彼女には主観がないとうより、すべてが主観だった過去があります。有名な人が戦争や事故、災害などで「1000万人の死」という事象ではなく「一人の死が1000万人」に起こっていると表現していました。彼女もおそらくそのような考え方をしているのでしょう。この世の悲しい出来事に彼女はあまりに純粋に向き合っているため、「リセット」という能力を手に入れたのでしょう。相麻菫曰く「どんな善よりも純粋な善」。自分がそれを知らないほどに。

 書いていませんでしたが、設定上「能力」というのは本人の性質から生まれるそうです。そこを考察するのも面白いかもしれませんね。

 「相麻菫」について。彼女こそ、普通の高校生に近いけど遠い。そして、普通の高校生になって欲しいなと思うのが彼女です。彼女について書こうかどうか迷ったんですが、触れすぎても物語の根幹にかかわるのであまり触れずにいようと思います。ただ幸せになってほしいですマル

「階段島シリーズ」概要

 いきなりですが,大学読書人大賞というものをご存知でしょうか.大学にある文芸部などが,大学生に合う本を決めるものとなっています.もし,大学生がいたら是非,大学生でなくても興味があればぜひ.

 そうだ,本の大賞についても今度書こうかな.

 河野先生の作品もその中に,選ばれていました.それが「いなくなれ群青」です.階段島シリーズの1冊目にあたります.河野先生の2つ目の代表作といってもいいかもしれません.とりあえず概要以下

 「心を穿つ青春ミステリ」と銘打たれた本シリーズは、「捨てられた」人間が行き着く謎の孤島「階段島」で主人公の男子高校生・七草が幼馴染の真辺由宇と有り得ない再会を果たしたことで始まる青春ミステリ小説である.
https://ja.wikipedia.org/wiki/「階段島」シリーズ

 この作品についても小説だけではなく,舞台化や映画化,漫画化などしています.映画は去年の今頃くらいやっていました.七草役が横浜流星,真辺訳が飯豊まりえでした.飯豊さんが真辺役ピッタリでした.

「階段島シリーズ」

 この作品の面白いところは、まず登場人物の七草の悲観的と自称する一癖ある性格と、真辺の求める正しい理想的と壁にぶち当たる所と、彼と彼女の関係性です。
 七草は「ピストルスター」という比喩を用いて、彼女への純真ほどの直進性に憧れを持っていました。それなのに、その彼女がこの「捨てられた島」にいることへの葛藤が見ていて辛く苦しくなります。
 彼女は彼女で、あまり彼を見ていないが大切なパートナーとなっているのは本人も自分で気が付いているようです。それでいて、互いにすれ違ったり、
 この物語の舞台「階段島」の特質が物語をより複雑化します。彼と彼女“たち”の思いと思考、関係を複雑心の青春を思い出しながら読んでもらえると楽しめると思います。
 また、この物語ではあまり恋愛についての言葉が出てこないのも僕がいいなって思ったところです。傍目から見れば恋愛じゃんって言いたくなるような話でも、それをあえて出さず、彼らのルールに則って話が紆余曲折していくのが難しいですが、面白いです。ちょっとそこだけ俺ガイル(やはり俺の青春ラブコメは間違っている)に似ていますね。

 俺ガイルの話も今度しようと思います。アニメ・ラノベ続きになってしまうので、間は空けると思いますが。

 この階段島シリーズは基本、問題や課題ができてその解決に向けて動くというのが大体です。その行動に付随する考え方や心についてが物語の大切になっているかなと思います。ミステリとしての面を持つ複雑青春物語です。興味があればぜひ。

最後に

 来週も少し河野裕回が続くと思います。「昨日星を探した言い訳」について書こうかな。それと、noteってshift+enterで普通に改行できたんだね。

 ちなみに、今読んでいるのは「サクラダリセット3 機械仕掛けの選択」です。先日、4~7を注文しました。楽しみです。


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