見出し画像

Dependence

 少女はこの世に生を受けた時から、誰にも愛されなかったのです。

無関心。上辺だけの愛ではない何か。ただ少女を利用しようとする者達。そんなものに囲まれながら生きていました。
諦めていた矢先に少しの希望を与えてくれたのは、ひたすら愛を主張する男。愛を提供する彼もまた愛に飢えていたのでしょうか。
少女が自身の親にさえ否定され続けていた容姿や生き方を受け入れた男は、彼女にとって。

求められることは幸せでした。自分が生きていることを許されるような時間が確かにそこにあったのです。

やがてそれが全て虚構だと気づくのに、長い時間を要しました。
依存し続けた少女は、もう戻れない。男は彼女を言葉の鎖で拘束し、夜の間だけ召喚し、自身に使役させる人形にしてしまいました。檻に閉じ込められた人形は、喚ばれた時のみ人間として扱われます。
偽物の愛だと分かっているのに、薄れゆく自我の中ではその鎖から逃れることができません。束縛さえ愛だと思えば耐えられる。そう考え、永遠の夜の中、醒めない悪夢を見続けていました。

真実の愛は光の下にある。人形には決して届かない、柔らかな日差しの下に。人形は気づいてしまいました。たくさんの人形が同じ運命の中にいることに。偽物の愛が真実の愛に換わることはあり得ないことに。

鎖された世界で踊る人形は、最後の最後、本当に最期に、少しだけ力を振り絞ってその鎖を解きます。

彼女を縛るものはもうありません。解放されて自由になったその体は宙を舞い、暗闇へと落ちていきました。

 少女はこの世に生を受けた時から、終に至るまで、誰にも愛されなかったのです。


つれづれなるままに、ねこねこなるままに。