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神隠し? その1 名古屋市(自身の体験)

あれはまだ息子が産まれる前の、よく晴れた休みの日の昼日中。配偶者とわたしは散歩がてら隣町のレストランで昼食を摂るためにそちらへ向かっていた。具体的な日にちは覚えていないが、わたしの配偶者はカレンダー通りの休みなので、日中にふたりで散歩ということはこの日は土日か祝祭日のはずだがいつかは覚えていない。時期は春か、夏のそれほどまだ暑くない頃で、半そでだったか薄着で、記憶の風景はとにかく明るかった。昼だからと言うこともあるだろうけど思い出はとにかく白く光に包まれた景色の中である。

散歩を兼ねていたので、「あまり通ったことのない道を通ってみよう」と、大通りから一本、二本と中に入ると住宅街だ。新しい戸建てや、古いアパート、マンションなどが雑多に並んでいて、所々は駐車場や空き地である。

誰もいない。大通りからはなれて気がつくとさっきから人に全く会わない。休日の昼間なんてもんなもの?今でも覚えているほどあたりがシーンとしていて、鳥の鳴き声も何もなかったので「人いないね」「静かすぎない?」などの会話をしたのを覚えている。

ふと歩いていくと空地をこえて左手に意識がいった。そこには古い長屋のような建物があった。長屋のように各戸がつながった作りで二階建て、窓の数から一階が三戸、二階も三戸の建物に見える。しかし外からでは二階にいく階段がどこにあるのか?見当たらない。建物の中だとしたら誰かの家の中を通るのか?それともメゾネットタイプのように三戸の家庭がそれぞれ二階建てなのか・・・といった、長方形で凹凸のないトタン壁の建物が現れた。トタンは深い赤茶色で、玄関の引き戸はサッシ、建物の周りにはあちこちたくさんの植物の鉢が置いてありにぎやかで、目を引いたのは金色の招き猫。

「こんな建物あったっけ」配偶者が呟いた。

あまり通らない道といっても、この辺りは生活圏でもあれば、散歩のコースから近くということもあって、過去に全く通ったことのない道ではない。が、この建物があったのかどうか、招き猫があったのかどうかなど全く記憶がない。ここ数年で建てたような新しい建物にはどうやっても見えなく年季のはいったかなり古い建物のように見える。

建物の前で私たちは立ち止まって、その建物を見上げたりして眺めた。すると、全部の窓から黄色(金色?)の光が溢れてきて、わたしは「ああ、この建物は見かけこそ三戸か六戸の部屋があるようだが、中は一つの空間なんだな」とわかった。わかったという表現をするのは、なにか確信したという意外にどうやって説明したらよいのかわからないがとにかくそう思った。すると建物の中が見えた。見えたという表現も、透けて見えたわけでもなく窓や引き戸が開いたわけでもない。しかし見えたとしか言いようがなく、これをうまく正しく読者のあなたに伝わるのか自信は全くない。

光の中に、木のようなものでできている船に乗った七福神がいて、その神様たち自身も発光している。みんな笑っている。どこからかシャンシャンと何か鳴る音がしている。そう。あれだ、よく、絵などに描かれているものを私たちが目にする、船に七人乗ってるやつ。

「(扉を、開けてみたい・・・)(でも、、ひとの家の玄関を勝手に開けてはいけないよね・・・)」

と思ったとき配偶者が「行こう」と言った。この時わたしの配偶者がなにか見たのか、それともなにもなかったのか確認していない。理由は、あまりこういった話をすると相手が不機嫌になったり怒ることがあるので言いにくいなあと思ったように記憶している。

わたしは「うん」と言って、そのまままた広い通りに出て、予定のお店に食事に行ったのだが・・・・


「帰りにまたあの招き猫の建物寄ってみようよ」と誘ったのだが・・・

あるあるですみません。配偶者と二人で探したけれど、見つかりませんでした。気になったままで、怪談作家の川奈まり子さんにもTwitterで呼びかけてもらったり、自分でもそれから何度か付近を探しに歩き回りましたが、とうとう見つからないまま今に至ります。

配偶者には七福神の話はせずに、「招き猫の家もういちど見たい」と言って探したのだが、見つからないことにたいしては「そういうこともあるよね」と、この不思議な体験を否定も肯定もしない感じだった。わたしの配偶者は、「不思議なことなある」と思っているが、あまりそういうことばかりにのめりこむことを嫌っており、そのためわたしも不思議な話はあまりしないようにしているのでこのような雰囲気になることが多々あります。

タイトルを「神隠し?」にしたのには、これから数年経ったある日(割と最近です)わたしはまた不思議な空間に迷い込みます。(そしてその間行方不明になりました。今度は実家の家族を巻き込みました。)その時の空気感というか明るくて決して汚くはないですがなんだか埃っぽい感じと言いますか・・・が、似ているのです。

その話は、次の投稿「神隠し・東三河」にて。。


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