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2021年プロ雑用が読んだ書籍BEST12+

こんにちわ!プロ雑用です。
2021年も年の瀬、毎年恒例の今年読んだ本をまとめてみます!
今年はどんな年でしたか?私は人生史上最も出張が多い年でした。ちゃんと数えてないけど、2ヶ月分は超えてると思います。いろんなところにいって、様々な刺激を受けた一年でした。
そんな中「今年はあんまり本読まなかったなぁ」と思っていたのですが、20数冊は読了しておりました。意外と読んでいた。
では、早速ふりかってみましょう。

★2021年 BEST12

※BEST12ですが順序はありません。

功利主義入門
─はじめての倫理学 (ちくま新書)
児玉聡 (著)

倫理って、学生時代の授業でもあったと思うんですが、いまいち何かよくわかってなかったんですよね。今年ドラマにもなった(私見てないんですが)、コミック「ここは今から倫理です。」を昨年読みまして、そこから改めて倫理について興味を持ち、この本を手に取りました。
本書は入門とある通り、功利主義というものから、倫理を学ぶための方法や、一般的な倫理に対する誤解、倫理学に至るまでの功利主義が発展してきた歴史が解説されています。
家族との関係、公共政策、幸福とはなにか、という倫理学のテーマについてさらりとわかりやすく解説されており、まさに入門書としては最適です。
一方で著者は「本書は哲学的思想や倫理学の基本概念を網羅的に解説したものではない」と記しており、本書はあくまで入門書として、倫理学に興味が出たならば、本書を参考にさらに勉強してほしい、と結んでいます。

コンサルは会社の害毒である (角川新書)
中村 和己 (著)

実際にコンサル業務に長年携わってきた著者が、日本におけるコンサルティングが如何に企業の活動を阻害しているかをデータに基づいて語る書籍。
本書では、日本のコンサル市場が、世界から見て異質でありそれ故に欧米式のコンサルが通用しない特殊な市場であるという実態と、彼らの使う問題解決のための様々なワークフレームの不確実性によって組織が如何にふりまわされ害を及ぼしているかを明らかにしています。
ロジカルシンキングやMECEなど、今日では「ビジネスマン必須!」となっているスキルにも疑問を呈しています。これは私も昔から常々感じていたことであって非常に共感する内容でした。
ちょうど自分もMOVEDで「コンサルティング的なサービス」の立ち上げを行ったフェーズで読んだところ、見事にもやもやが晴れて自分たちのサービスの方向性が見えてきました。

環境を知るとはどういうことか 流域思考のすすめ (PHPサイエンス・ワールド新書)
養老孟司、岸由二

敬愛する慶應義塾大学名誉教授の岸先生と、養老先生の対談!という刺さる人にはぶっささる一冊。
岸先生は、三浦半島の小網代と呼ばれる場所の保全活動や、鶴見川流域の環境保全活動で実績を挙げられてきた先生で、彼の主張する「流域思考」は、失敗学とともに私に大きな影響を与えた考え方です。
その岸先生の流域思考を、養老先生が、小網代の地を実際に訪れてあるきながらの会話などを通して、より広い視点で流域思考の意味や価値を再定義しようと試みる…そういう内容です。
流域思考とは簡単に言うと、河川を中心に周囲の環境を捉えること。河川とは雨水であり、すなわち水の循環を通して生物が生きる環境を捉える考え方です。業務改善において、水の代わりにデータの循環と定義し、自らの仕事に流域思考を当てはめて考えると、さまざまな問題が見えてきます。
自然科学とビジネスを結合できる私のようなタイプは少ないでしょうが、もしそういう人がいれば、ぜひ一読されてみることをおすすめします。

叛骨 最後の極道・竹中武 (徳間文庫)
山平重樹 (著)

現代の日本を深く知る上で、ヤクザ・暴力団の存在を無視することはできません。またかつては多くの任侠映画が誕生し、人々に愛されてきました。
彼らの存在をわたしは肯定しませんが、また同時に否定もしません。それらは確かに「在る」もので、それをありのまま「観る」ことが肝要です。なので、こういうノンフィクションは大好物。
こういうある意味でファンタジー世界の住人のような存在が、自分の生きている時代のすぐ近くに存在していて、彼らが何を思いどう生きたのかを知ることは、哲学として非常に有用だと私は考えています。自分とは異質だからこそ、異質な視点から捉えた世界は、私の見ている世界とどう違うのか。
彼らのいう「筋」を守って生きたからこそ、彼は「最後の極道」と呼ばれるようになったのだと、本書を読んで理解できました。

フォン・ノイマンの哲学
人間のフリをした悪魔 (講談社現代新書)
高橋昌一郎 (著)

ジョン・フォン・ノイマン、 1903年12月28日ハンガリー出身の数学者。
数学者という説明は、正直的外れかもしれません。今日の科学技術、コンピュータ、AI、経済学、気象学に至るまで彼の存在なくしては全く語れない。天才という言葉では足りず、同時代の天才たちをして「悪魔が人間のフリをしている」と言わしめるほどの天才中の天才が、彼です。
世界大戦中のアメリカにおいて「原子爆弾」に関わった科学者の一人で、マンハッタン計画の中心人物の一人だったといえばわかりやすいかもしれません。また現在のコンピューターはノイマン型コンピュータの延長線上にあり「ノイマン型」とつく通り、彼が設計したものです。
53年という比較的短い生涯の中で生み出した発明は現在にも強くその影響が残っており、「20世紀科学史における最重要人物の一人」とも言われます。
私が思う彼の重要なエピソードは、その家庭環境で、天才は勝手に生まれるのではなく、やはり作られるものなのだ、と感じました。

ヒトラーとナチ・ドイツ (講談社現代新書)
石田勇治 (著)

ナチスやヒトラーに関しては、近代史を学ぶ上では絶対に避けて通れないものなので、様々な書籍や映像を視聴してきましたが、今年読んだのはこれ。
ヒトラーというポッと出の青年がなぜ独裁政権を作ったのか。そこには歴史の妙とも言える「タイミング」が関係していました。
著者は日本の歴史学者であり、東京大学大学院総合文化研究科・教養学部教授、ドイツ近現代史、ジェノサイド研究を専門とされています。
1990年、冷戦終結後、一気に開放されたヒトラーとナチズムに関する歴史資料から、最新の研究を踏まえながら、一体ヒトラーがどのようにして独裁者になったか、ヒトラーの支配するドイツで何が起こっていたのかを具に記しています。一般的に、ヒトラーは単なる狂人としてしか認識されていないかもしれませんが、本書を読むとその偶然性というか必然性に歴史というものの恐ろしさを感じます。

オードリー・タン 自由への手紙
クーリエ・ジャポン編集チーム (編集)

クーリエ・ジャポン編集部が行った、オードリー・タン氏への2回のインタビューを、17通の手紙として記した書籍。
この書籍はすべて日本語なので、氏自身の言葉ではないのだが、その翻訳でも彼の人となりの一端が垣間見える。誰にでもわかるような平素な単語を使い、相手に合わせていることがよくわかる。
氏の技術や先進性が取り上げられがちだが、氏の本質は他者への共感や思いやりの深さ。氏のような人物を大臣に据えられる台湾という国の懐の深さに驚嘆するばかりだ。

自己肯定感低すぎて嫉妬してるときの自分マジで化け物みたい (〈@〉night) シイナ ナルミ (著)

自分と違う考え方はとても刺激になる。ここまで紹介してきた人物伝・ノンフィクションはその一例だが、本書はそういう意味でまた毛色の違う刺激。
今年はポッドキャストで世代の違う、特に女性たちの配信をよく聞いた。その延長線上で、本書を手に取る。
本書を皮切りに似たタイプの書籍をもう2冊ほど読んだが(読んだというより見るが近いレイアウト的だがw)、感想は「みんな一生懸命生きてるなぁ」。恋愛感情というものが根本的に理解できない自分としては、パターン認識の学習として学びが多かった。
また、彼女たちのバックグラウンドがどういうものか大体見えてきた。さまざまな主義主張ができる良い時代であると同時に、他者からの承認と幸福がセットになってしまうことの不幸も感じる。諸行無常。

デジタルアイデンティティー
経営者が知らないサイバービジネスの核心
崎村 夏彦 (著)

近々現代におけるインターネットの普及とともにセキュリティの重要性は高まっている。デジタル社会における自分自身の存在証明(レゾンデートル)として、アイデンティティーの重要性は人類史上最も高まっているといってよく、今後ますます重要となっていくだろう。
IDを制するものがインターネットを制する、といったのは誰か。
本書は技術ワードはたくさん出てくるが、技術書ではない。ビジネス知識としてのデジタルアイデンティティーを理解するための指南書。
日本ではセキュリティは個人情報保護の観点でしか語れないことが多いが、それはIDの一面に過ぎず、本質からは遠い議論になりがち。GAFAと他のアプリケーション企業との絶対的な違い。彼がなぜ覇権を取れたのかを通して、その重要性を説いている本書は、サイバービジネスに携わる現代人は必読と言える一冊だ。

問いのデザイン: 創造的対話のファシリテーション
安斎 勇樹、塩瀬 隆之 (著)

ビジネスは学業と違い、万人共通の正解というものが存在しない。ビジネスで求められるのは正解を探し当てることではなく「問い」を立てること。それも「良い問い」を立てることが何より重要。
著者の一人、安斎 勇樹氏は東京大学特任教授、株式会社MIMIGURIの共同代表を勤め、企業経営と研究活動を往復しながら、人と組織の創造性を高めるファシリテーションの方法論について探究されている第一人者。数多くのワークショップを行った経験から導き出された方法論は、いまいち「ファシリテーション」ができないビジネスパーソンに大きな学びをもたらす一冊。
かくいう私も、ファシリテーションをしなくてはいけない機会が近年多くなっており、また過去のいくつかの失敗経験もあってこの書籍を手に取ったところ、たちまちに頭のモヤが晴れていった。

御社にそのシステムは不要です。
中小企業のための“失敗しない”IT戦略
四宮靖隆 (著)

「失敗しないIT戦略」がわざわざサブタイトルに掲げられている通り、世の中「失敗したIT戦略」がうなるほどあるわけです。なぜIT導入は失敗するのか。DXコンサルに騙される企業があとを絶たないのか。
この国の従来のITビジネスと、昨今のITビジネスは全く違うわけだが、それは何が違うのか。どうやったらDXは成功するのか…。本書を読めば全部わかります。もうこれ一冊あれば、中小企業のDXはいいんじゃないかな、とそう思います。だって私がやってる仕事、ほとんどこの本に書いてあるものw

弱者の戦術 会社存亡の危機を乗り越えるために組織のリーダーは何をしたか 山野 智久 (著)

いまもアソビューで働く自分にとって読まなくてはいけない義務感に駆られる一冊w。こういう言い方は陳腐ですが、これは事実です。
自分が率いる組織の危機において、トップが何を考えてどう行動するのか。その全てが正解を引き当てるとは思わないけれど、それまでの行いというものがやはり危機的状況に出てくるのだなと本書を読んで感じた。
「運が良かった」と人は言うかもしれないが、私が考えるに「運とは人」である。それまでどのように人と関わってきたのかが、運として現れるのだ。山野さんは不器用かもしれないが、その人との接し方は誠実で素直だ。それがときに衝突の原因になることもあるが、誠実さと素直さは、他人から愛される要素として重要だ。だからこそ、危機には多くの人が手を差し伸べてくださり、点が線となってやがて面の力となる。
わたしはアソビューの末席を汚す程度のものだが、それでもアソビューで働いて幸せだと感じている。

★番外編

護られなかった者たちへ 中山 七里 (著)

最近はあまり昔ほど小説を読まなくなった。実務的な本を読む時間が増えたからだ。それでも時折、読みたくなる。この本はそんな気分のときに手にとったものだ。
映画になっていたのでタイトルを覚えていたということもあるが、なにより内容が貧困問題を取り上げたものだったからというのが大きい。国家や組織の倫理は、ときに救うべきものを見捨ててしまう。バブルが弾けて30年。その間に起こった様々な災害や事件は、資本主義の負の側面を明らかにしてきた。資本主義の本質は「富めるものはより富む」。そのセーフティーとしての様々な制度は「国家の貧困」によって崩れかけている。
もはやこの国は先進国ではない。この現実を直視する時、本書の内容はけしてフィクションだからと笑い飛ばせないと感じた。

最後に、2021年の読書を振り返って。

みなさんは、今年どんな本を読みましたか?
このnoteにはテキストベースの本ばかりですが、本当は一番読んでるのはコミックです。最近はWEBコミックも気軽に読めるようになってきたしますますコミックを見る機会は多いのですが、それでも全然時間が足りないですね。できたら無限に本を読んでいたいw

とはいうものの、今回紹介した書籍やビジネス書は、コミックと違って空想の産物ではありません。自分が普段直面している現実との補完や、自分の思考の客観視をするためにも、こういう書籍は私にとってはとても重要なアイテムです。

そして今年感じたのは、知識ある人々との対話の重要性。Twitterほどではないにしろ、読む本の傾向もエコーチャンバーのもとになります。特におすすめで出てくるものばかり読んでいるとね。
そうならないためには、自分と違う考え方やバックグラウンドを持っている人と対話したりすることがとても重要だと思います。対話までできなくとも、例えばポッドキャストであえてジャンルの違う人たちの配信を聞いてみたりとかして、そこでの会話を起点に、違うジャンルの本に興味をもってみたすることができます。

歳を重ねると新しい知識への抵抗が生まれます。多かれ少なかれ自分も齢40を超えるとそういう傾向は出てくるものです。それを打破するための一つの手段として、本は私にとって重要なのです。

ある程度自分の中に経験や知識が溜まってくると、書籍の内容と自分の経験と合致するところ、あるいは合致しないところが見えてきます。そういうことを繰り返していくと、自分の視野は爆発的に広がってくるし、なによろ各論と総論(具体と抽象)の素早い移動が可能になるんですね。

一方で人間が言語化できる部分は、実際のところ世界の本当に一部分だけ。自分の経験や知識、本に書かれていることが全てだ、という考えは傲慢にすぎるとも思うのです。

今年も本を通してたくさんの発見がありました。発見とは新しい認識の獲得。来年も殻を閉じずに貪欲にいろんな本を読んでいきたいと思いました。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

それじゃ、また。

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