帯島ユカリの涙、弓場隊が上位残留出来なかった理由
◯はじめに
前回の考察で那須隊と弓場隊の関係について触れましたが、B級ランク戦編全体を通して
が描写されていたことに気付いたので、それをまとめていきたいと思います。
◯「気持ちの強さは関係ない」
まず前提としてはっきりしているのは、弓場隊と那須隊の「気持ちの強さは関係ない」ということです。
それは第99話の太刀川の台詞で明らかになっています。
弓場隊と那須隊の「勝ちたい」という「気持ちの強さ」に優劣がないとするならば、両部隊の明暗を分けた要因は他にあると言えます。
◯エース以外の隊員の能力差
弓場隊と那須隊はどちらも「隊長がエース」の部隊です。
そして第115話で風間さんはこのように言っています。
B級ランク戦では単に強いエースがいるだけで勝てる訳ではなく、「エース以外の隊員の能力差」が勝敗を決める要因としてあります。
例えば弓場隊の帯島と那須隊の熊谷を比較してみると、第182話の遊真の評価では両者にそれほどの能力差はないような印象を受けます。
しかし、実は両者には明確な違いがあることを示唆する描写があることに気付きました。
◯「悔しい」という気持ち
注目したのは、第146話の染井の台詞です。
このように、ワールドトリガーにおいて「悔しい」という気持ちは強くなるために必要な要素として描写されています。
それは主人公の修も例外ではなく、ROUND3で自分で点が取れなかった悔しさから試行錯誤をし、ROUND4では敗北するものの最終的には新しい戦い方(ワイヤー戦術)を手に入れて部隊の戦力として貢献しています。
そして熊谷もROUND3で村上に落とされた直後に「悔し涙」を流している描写があり、明らかに「悔しい」という気持ちがあることが読み取れます。
つまり、熊谷も修と同様に、「悔しい」という気持ちで強くなりながらB級ランク戦を戦い抜いたと言えます。
対して、帯島が「悔し涙」を流したのは、B級ランク戦が終わった後の第199話です。
さらに注目すべきは、その時の台詞です。
私はこの台詞を「やっとROUND8で負けて悔しいと思った」と最初は解釈していましたが、実は「やっと今期全体を通して初めて負けて悔しいと思った」なのではないかと考えました。
つまり、帯島は今期では負けても熊谷のような「悔しい」という気持ちにはなっていなかった、ということです。
弓場隊の本来の戦闘スタイルは、第180話で里見が言っているように
というものでした。
しかし、神田が抜けた後の新生弓場隊では、弓場ちゃんは1対1ではなく帯島と一緒に行動することが増えていることが第182話の遊真の台詞から読み取れます。
確かにROUND8でも最初は弓場ちゃんと帯島は一緒に行動してヒュースに攻撃を仕掛けていました。
つまり、神田がいない今期では基本的に弓場ちゃんは1対1が出来ない(帯島を単独に出来ない)という制限があったと言えます。
そのことで帯島が自分自身の「力不足」を感じ、やや自己肯定感の低い性格も相まって第179話の千佳のように
という心理状態に陥っていた可能性があります。
しかし、その心理状態を脱するきっかけを与えたのが、遊真の言葉でした。
遊真の言葉で自分に自信を持つことが出来た帯島はそこで初めて「負けて悔しい」という気持ちになることが出来たのかもしれません。
千佳が近界民であるヒュースの言葉で変わったように、帯島も近界民である遊真の言葉で変わっているのは意図的な対比関係かもしれませんね。
もし、帯島がもっと早く遊真と出会っていたら弓場隊が上位残留出来ていたかもしれませんが、それは太刀川が言うところの「あとは運」ということなのでしょう。
◯終わりに
本当は弓場隊と那須隊の「地形戦」に対するスタンスの違いにも触れる予定でしたが、文字数がいい感じになったのでここで終わりたいと思います。
ありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?