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ROUND3に見る実況解説が戦闘シーンにもたらす効果

◯はじめに

B級ランク戦編の特徴的な要素として「実況解説の存在」があります。

実況解説の有用性についてはこれまでにいろんな方が考察していると思うので真新しさはないのですが、自分自身でこのテーマについて考察したことがなかったので考察してみました。

またB級ランク戦は「ROUND1〜8/中位最終戦」とありますが、今回は「ROUND3」に限定して考察しました。

【今回考察する効果】

①「自分語り」を防ぐ
②読者の「仮定」や「疑問」に先回りする
③負けたキャラクターのフォロー

①「自分語り」を防ぐ

まずは私の考察では一般常識になりつつある(?)ジャンプSQの漫画道場に書かれている

キャラクターの設定(過去話など)を描くときは、できるだけ本人の口からはしゃべらせない。

ジャンプSQ/漫画道場

は押さえておきたいところです。

この狙いは

キャラクターの「今の行動」の描写を優先

ジャンプSQ/漫画道場

にあります。

戦闘中のキャラクターは戦闘(今の行動)に集中する必要があるにもかかわらず、そのキャラクターが「自分語り」を始めてしまっては読者も戦闘シーンに集中できません。

そのため、代わりに実況解説が説明をすることで「自分語り」を防ぐとともに、読者が内容を理解しやすくする効果があると言えます。

「変化弾は弾を撃つ前にイメージで弾道を設定できるけど、ふつうは使いやすい弾道を何パターンか予め決めててそれを使う。でも那須は違うんだな、毎回しっかり弾道を引いてる」

第97話

「あ、やばいな。くまの基本スタイルは弧月両手持ち+シールド。片手持ちになったら村上の剣速には追いつけない」

第99話

「あれは引っかかるかもな―。炸裂弾単品ならともかく、那須が合成弾使うのは初めてだ」
「弾丸の合成には時間がかかり、隙が生まれるため乱発はできませんがその分威力は強力です!」

第101話

「障害物を盾にして機動力で獲物を追いつめる、いつもの那須の戦い方だ」

第102話

「変化炸裂弾……!?」
「来馬隊長に撃ったやつですね。メガネ隊員の動きを先読みして、外れたやつが戻ってくるよう設定してあった」

第102話

②読者の「仮定」や「疑問」に先回りする

バトル漫画を読んでいると

「ここでこうすればいいのに」
「何でここでこうしちゃったんだろう?」

と思ってしまい、戦闘シーンに集中できなくなることがあります。

特にワールドトリガーの場合は集団戦が中心になるため、各キャラクターが取れる選択肢の組み合わせは膨大な量になります。

読者が思いつく可能性の高い「仮定」や「疑問」について実況解説で触れておくことで、読者が戦闘シーンに集中できる効果があると考えられます。

「斬り結ぶ西岸の攻撃手3人! 那須隊熊谷隊員がやや劣勢か!」
「エース二人が相手だ、三つ巴とはいえさすがにきついな。ぶっちゃけ、逃げ切って緊急脱出を狙う手もアリなくらいだ」

第98話

「日浦隊員まだ撃たない!」
「相手が待ち構えてちゃ撃てないだろ。村上と空閑からしてみれば早く撃って来て欲しいくらいだ。こっち岸を最速で片付けたいだろうからな」
「狙撃手は居所が割れれば不利になる。好機を待って初弾を確実に当てたいところでしょう」

第98話

「緊急脱出しない方を選んだか……」
『たしかに緊急脱出を選んでもいい場面です。自発的に緊急脱出すれば敵に点を与えずに撤退が可能……ただしランク戦のルールでは「周囲半径60m以内に敵の隊員がいない場合に限る」という緊急脱出の条件があります』

第98話

「というか今の空閑の状況なら……むしろ村上とくまを放っといて、自分だけ東っ側に渡る可能性すらある。日浦が落ちて東っ側の連中がにらみ合ってる今なら、壊れた橋を足場にすればグラスホッパーで割と安全に渡れる」 
「西岸ではこれ以上戦う必要はないと……?」
「部隊を優先するならそういうのもアリって話だ」

第99話

「この状況で鈴鳴第一の方を狙うんですね。一見三雲隊長の方が倒しやすいように思えますが……」
「那須が三雲を狙わない理由はいろいろあるんだろうが、一番は玉狛の狙撃手を警戒してんだろ。雨取が姿をくらましてるうえに玉狛第二は釣りの戦法をよく使う。そろそろ那須には三雲の素人くさい動きが自分を釣って狙撃を狙ってるように見えてくる頃だ」

第100話

③負けたキャラクターのフォロー

ワールドトリガーはキャラクターの「格」が落ちにくい作品として知られていますが、その要因として勝負に負けたキャラクターのフォローを実況解説が行っていることが考えられます。

これを勝ったキャラクターがやってしまうと一種の「格付け」になってしまい、力の上下関係が生まれやすくなる可能性が高くなります。

第三者の立場である実況解説が行うことで、パワーバランスを保ちながらのフォローができる効果があるのではないでしょうか?

「個人的に西岸のポイントは那須隊の二人が逃げなかったことですね。熊谷・日浦両隊員は点を獲れずに退場しましたが、それぞれちゃんと時間を稼いでいるんですよね。二人が即逃げで緊急脱出していたら、その分西岸の勝者が川を渡る時間が早まるわけで、そうなると那須隊長が東岸で3点獲るのは難しかったでしょう。上位陣に追いつくには失点より得点が大事。玉狛と鈴鳴に1点ずつ獲られましたが、トータルでは悪くない判断だったと思います」

第103話

『エースに「任せた」玉狛とエースを「待った」鈴鳴、隊長のとった作戦の差が最終的な勝敗に結びついたということでしょうか?』
『それは結果論すぎるだろ。村上が勝って合流してりゃ鈴鳴がふつうに勝っただろうし、傍から見てもその可能性は高かった。どっちかと言えば今回は勝てる相手に負けたエースの村上が悪い。来馬はちゃんと勝算が高いから村上を待ってたんだ。負けたら即「作戦が悪かった」ってことにはなんない』

第103話

『那須にとって三雲は1対1ならいつでも倒せる相手で、実際その通りになったけど、三雲は「倒す・倒される」とは別のところで戦ってたわけだ。最初の接触で那須とまともに撃ち合うのはきついと見て、すぐさま「トリオン切れ狙い」に変更した。戦力差をよくわかってる感じがいいな』

第103話

◯おわりに

今回は考察の対象をROUND3に限定しましたが、他のROUNDでも

①「自分語り」を防ぐ
②読者の「仮定」や「疑問」に先回りする
③負けたキャラクターのフォロー

はあると思うので、そこに着目して読み直してみるのも面白いかもしれませんね。

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