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「能力の欠略」とキャラクターの魅力の因果関係について

◯はじめに

ワールドトリガーの能力には

●トリガー
●サイドエフェクト

があります。

そのうち「サイドエフェクト」は基本的に失うことはありませんが、「トリガー」は外すことができるという特徴があります。

つまりワールドトリガーでは自然に「能力の欠略」が可能であるということになります。

この「能力の欠略」とキャラクターの魅力に因果関係があると考え、考察しようと思いました。

◯迅悠一

まず物語上で「能力の欠略」が印象的なキャラクターと言えば、迅悠一です。

迅は黒トリガー(能力)である「風刃」に加え、サイドエフェクト(能力)の「未来視」も強力であり、その組み合わせの強さは本人も認めています。

『「風刃」とおれのサイドエフェクトは相性が良すぎるんだ、悪いな』

第28話

このように強力な能力を複数持ち、その相乗効果で爆発的な戦闘力を発揮するタイプを「能力相乗型」と呼ぶことにします。

「能力相乗型」のキャラクターの場合、読者はその能力には注目しますが、それ以外の要素(技術など)にはあまり注目しなくなる可能性があります。

しかし物語の中で、迅は黒トリガーの「風刃」を本部に献上します。

『かわりにこっちは「風刃」を出す』
「……!?」
「な!!?」
『うちの後輩の入隊と引き換えに、「風刃」を本部に渡すよ』

第31話

これにより迅は通常トリガーを装備することになり、S級からA級になります。

「おれ、黒トリガーじゃなくなったからランク戦復帰するよ。とりあえず個人でアタッカー1位目指すからよろしく」
「……!?」
「……そうか! もうS級じゃないのか! そういやそうだ!」

第32話

この迅の「能力の欠略」により、大規模侵攻編では通常トリガーを駆使してアフトクラトルの精鋭であるヒュースと戦う姿を見ることができます。

『ふーむ……「磁力」に「反射」……凝ったトリガーだな。いろいろ便利だし使い手のウデも
いい』
「……!?」
「大事な戦力だろうになんで……なんでお前はここで見捨てられるんだ?」
「……? 何を…………………………き……貴様!! ふざけたことを……」
「はい、予測確定」
「!!? これは……(さっきの壁トリガー……!?)」
「ふざけてなんかないよ。おれには、おまえの未来が見えるんだ」

第65話

「未来視」のサイドエフェクトがあるとは言え、単純なトリガー性能では不利なはずの迅がヒュースと互角に戦うことで、迅の「技術」の高さを読者は認識することになります。

そして迅と戦ったヒュースにも、「能力の欠略」が発生します。

◯ヒュース

ヒュースは強力なトリガーである「蝶の楯」の使い手ですが、ボーダーのランク戦では使うことができないので通常トリガーを装備することになります。

「メインは弧月?」
「一応そうだが弾丸のトリガーも欲しい。あとは……(中略)トリマルが使っていた地面から盾がせり出すトリガーが欲しい」
『「エスクード」だな』
(中略)
「あと弾丸のトリガーも、トリマルが使っていた曲がる弾がいい。B級だと那須が使っていたやつだ」
「変化弾ね、OK」

第161話

このヒュースの「能力の欠略」により、「蝶の楯」を使っていた時には見られなかったヒュースの新たな一面を読者は認識することになります。

「2対1なら勝てると思ったか?」
「いいや」
「……!? …………」
「影浦隊長被弾! これは……!?」
『これは言うならば「一人時間差射撃」ですね。弾丸の半分を遅らせて発射することで、擬似的に3対1になるタイミングを作った。「手札を知られていない」という有利があるヒュース隊員が初弾で確実にダメージをとるための工夫ですね』

第170話

「村上隊員にエスクードを生やした!?」

第172話

「ヒュース隊員、道を塞いで東隊の逃げ道を狭めていく!」
「エスクードの射程は標準で25mくらいだけど、ヒュースくんのトリオン量ならもっと遠くまで封鎖できるね―」

第174話

B級ランク戦の中でヒュースというキャラクターの魅力を引き出す上で、「能力の欠略」は有効であると言えます。

◯閉鎖環境試験編

ここまで迅やヒュースで「能力の欠略」について考察してきましたが、実はもっと広範囲で「能力の欠略」が使われています。

それが閉鎖環境試験編です。

閉鎖環境試験では戦闘用のトリガー(能力)が使えません。

つまり閉鎖環境試験の受験者全員が「能力の欠略」の影響を受けていると言えます。

特に戦闘能力が高いキャラクターほど「能力の欠略」により新たな一面を見せています。

「アカー―――ン!」
「生駒さん! 漆間に気をつけてって言ったじゃないですか!」
『待て待て待ってくれ、なんかむこうの太刀川さん、剣が伸びて来よんねん。「センクウ……コゲツ」……!?』
「生駒さんが知らないはずないでしょ!」

第218話

「できねェことを放っぽったまんま、気持ちよく寝るわけにゃいかねェーんだよ」

第222話

「ウチはもう、戦闘だけで食っていくわけにゃいかねーんだよ……」

第235話

閉鎖環境試験編が基本的にデスクワーク中心であまり動きがないのに面白い理由は、「能力の欠略」によってキャラクターの新たな魅力が引き出されているからかもしれませんね。

◯おわりに

バトル漫画はキャラクターに能力を「足していく」のが基本ですが、逆に「引いていく」ことで面白くなる場合もあることに気付けて良かったです。






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