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なぜB級ランク戦編は「人を選ぶ」のか?

◯はじめに

ワールドトリガーを布教していると

「最初(大規模侵攻編)は面白かったけど途中(B級ランク戦編)からちょっと……」

と言われることがあります。

B級ランク戦編は大規模侵攻編に比べて「人を選ぶ」エピソードであることは否定できない事実としてあるように思えます。

今回はその理由について考察してみました。

◯B級ランク戦編の「唐突感」

まず1つ目の理由として考えられるのが、大規模侵攻編までを読んだ読者がB級ランク戦編に対して一種の「唐突感」を覚えてしまうためです。

大規模侵攻編では対近界民の戦闘が40話近く描かれているので、読者は「対近界民の戦闘がワールドトリガーの戦闘である」というイメージを持つことになります。

その状態で対ボーダー隊員の戦闘であるB級ランク戦編が始まると、読者としては「唐突感」を覚えてしまうのです。

もちろん、B級ランク戦編は唐突に始まっている訳ではなく「前振り」自体はちゃんとあります。

『上の級に上がるには防衛任務の手柄だけじゃなく「ボーダー隊員同士の模擬戦」でも勝ってかなきゃダメなの。それが通称「ランク戦」。同じ級の中で競い合って強い人間が上に行くってわけ』

第22話

「おれたちがB級に上がったら3人で隊を組んでA級を目指す」
「A級になったら遠征部隊の選抜試験を受けて……」
「近界民の世界にさらわれた兄さんと友達を探しに行く!」

第33話

むしろ物語の流れとしては大規模侵攻編がイレギュラーでありB級ランク戦編が本筋ではあるのですが、大規模侵攻編の完成度が高いこともあってか読者の中でB級ランク戦編の評価が低くなってしまうのかもしれません。

◯B級ランク戦編の「長さ」

2つ目の理由として考えられるのが、B級ランク戦編の「長さ」、つまりB級ランク戦が長いためです。

B級ランク戦編は途中のガロプラ侵攻編を抜いたとしても100話弱あるエピソードです。

唐突に始まったと感じている読者にとって100話はかなり長く感じると思います。

ただ、本当にこれは長いのでしょうか?

B級ランク戦編は部活スポーツ漫画の「県大会予選編」に性質が似ていると考え、バレー漫画の「ハイキュー!!」の「春の高校バレー宮城県代表決定戦」と比較してみました。

ハイキュー!!
(春の高校バレー宮城県代表決定戦編)

第99話〜第101話 (3話) vs扇南高校
第102話〜第104話(3話) vs角川学園
第109話〜第114話(6話) vs条善寺高校
第116話〜第125話(10話)vs和久谷南高校
第129話〜第147話(19話)vs青葉城西高校
第151話〜第188話(38話)vs白鳥沢学園

ワールドトリガー
(B級ランク戦編)

第86話        (1話)  ROUND1
第88話〜第91話    (4話)  ROUND2
第95話〜第102話  (8話)  ROUND3
第111話〜第115話(5話)  ROUND4
第137話〜第146話(10話)ROUND5
第152話〜第158話(7話)  ROUND6
第166話〜第175話(10話)ROUND7
第185話〜第195話(11話)ROUND8

単純な試合話数で見ると、

ハイキュー!!
3+3+6+10+19+38=79話

ワールドトリガー
1+4+8+5+10+7+10+11=56話

となり、ハイキュー!!に比べて20話近く少ないことが分かります。

長さの感じ方は個人差があるのでこの比較にそれほど意味はありませんが、少なくとも部活スポーツ漫画の視点で見るとB級ランク戦編は特別に長い訳ではないのかもしれません。

◯B級ランク戦編の「特殊性」

最後の理由はB級ランク戦編の「特殊性」に読者が戸惑ってしまうためです。

B級ランク戦編は部活スポーツ漫画の「県大会予選編」と性質が似ていると述べましたが、実は決定的に違う部分があります。

それは「主人公が対戦した相手がまた別の試合で対戦相手になる可能性がある」ということです。

ワールドトリガーの場合だと

ROUND3で鈴鳴第一と対戦→ROUND7で再戦
ROUND4で影浦隊・東隊と対戦→ROUND7で再戦
ROUND4で二宮隊と対戦→ROUND8で再戦
ROUND6で生駒隊と対戦→ROUND8で再戦

となります。

この問題点として、読者は「試合が終わった後もその対戦相手のことを覚えておく負荷がかかる」ということが挙げられます。

加えて、一試合あたりの話数が短めで試合途中でベイルアウトによる退場もあるので、キャラクターが記憶に残りにくいことも負荷を大きくしています。

ただでさえ登場人物が多いことに加えて、試合が終わっても忘れることができない(忘れると話が理解しにくくなる)となれば、B級ランク戦編そのものに苦手意識を持つのも無理はないかもしれませんね。

◯終わりに

B級ランク戦編から明らかに読者に求めるハードルは上がっている気がしますが、そのハードルが「面白い」に繋がっている面もあり、漫画の難しいところだと思いました。









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