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「先入観コントロール⑤」(迅悠一/黒トリガー争奪戦編)

◯はじめに

私が明確にワールドトリガーに「ハマった」瞬間は、第27話で迅が風刃を起動して菊地原の首を飛ばした場面です。

「え……」
「!?」
「戦闘体活動限界、緊急脱出」
「出たな『風刃』」
「仕方ない、プランBだな」

第27話

この場面の衝撃は今でも鮮明に覚えていますが、振り返ってみるとなぜこの場面に自分がそこまで衝撃を受けたのか、気になるようになりました。

そこで「先入観コントロール」が使われていると仮定し、考察してみました。

◯「縛り」のある戦闘

黒トリガー争奪戦より前の戦闘を並べてみると、次のようになります。

●バムスター戦(第1話)
●モールモッド戦(第4〜5話)
●イルガー戦(第8〜9話)
●バンダー戦(第12話)
●三輪隊戦(第14〜15話)

この中で第1話の「バムスター戦」を除いた戦闘は、いずれも遊真に何らかの「縛り」がある戦闘になっています。

●モールモッド戦

「まさかおまえ……それで戦う気か!?」
「おう、これならおれがやったってバレないだろ」
「ば……よせ! そのトリガーは……おまえのとはちがう! 死ぬぞ!」
「おれもさっきそう言ったけど、オサム聞かなかったじゃん」
「そ、それは……」

(黒トリガーを使わず、訓練用トリガーで戦う)

第5話)

●イルガー戦

「トリガーで何かを破壊すればそのトリガー固有のトリオン反応が発生する。繰り返すほどボーダーに感知されやすくなるぞ」
「……それってつまり、敵を殴ったらボーダーに見つかるってことか? じゃあばれずにやるのはムリじゃん」
「そうでもない。キトラがイルガーを自爆状態まで追い込んでくれた。今なら攻撃しなくてもイルガーは倒せる」
「あ、そっかじゃあ人がいない所に落とせばいいのか」

(イルガーを攻撃せずに処理する)

第9話

●バンダー戦

「レプリカ、トリガー使って大丈夫か?」
「……待て、付近でボーダーが戦闘を開始している。トリガーを使うのはまずい。今オサムがこちらに向かっている」
「おっ、じゃあオサムに任せるか」

(自分は戦闘に参加しない)

第12話


●三輪隊戦

『オサムがせっかくB級に上がったのに、自分を匿っていたせいでそれが無になるかもしれない。そう思って平和的に交渉しようと試みたが、相手は聞く耳を持たなかった。オサムの立場を悪くしたくはないが、かといっておとなしく殺されるわけにはいかない。いまユーマは「いかに穏便に相手を無力化するか」を考えているだろう』

(「撃破」ではなく「無力化」を狙う)

第15話

この「縛り」のある戦闘の流れを読者は認識しているため、黒トリガー争奪戦も同様に「縛り」のある戦闘であるという「先入観コントロール」を受けることになります。

実際、黒トリガー争奪戦でも「縛り」を示唆する描写があります。

「こいつの狙いは俺たちをトリオン切れで撤退させることだ」
「……!?」
「あらら……」
『……なるほど、あくまで俺たちを帰らせる気か。「撃破」より「撤退」させたほうが本部との摩擦が小さくて済む』

(「撃破」ではなく「撤退」を狙う)

第27話

このように読者の意識を「縛り」に向けさせたところから「縛り」のない本気の戦闘に切り替えることで、読者に印象付ける効果があるように思います。

◯迅の性格

もう一つの「先入観コントロール」としては、迅が「あまり好戦的な性格ではない」ことを読者に認識させていることも考えられます。

「いやいや待て待て。そういうあれじゃない。おまえを捕まえるつもりはない。おれはむこうに何回か行ったことがあるし、近界民にいいやつがいることも知ってるよ」

第11話

「迅さん! 助けてください! A級の部隊が空閑を……」
「うん知ってる、三輪隊だろ?」
「……え!?」
「知ってるっていうか見えてる」
「え!?」
「今、ちょうどバトりだしたところだな」

第14話

「迅さんは、たぶん相当強い。勝てるかどうかはやってみなきゃわかんないな」
「じゃああの人が追っ手になったら……!」
「……いいや、そうはならないよ」

「会議は終わりだ。速やかに任務を遂行しろ」
「それはできません」

第17話

黒トリガー争奪戦までは基本的に迅が戦闘している描写はなく(戦闘を終えてトリオン兵の上にいる描写はありますが)、読者は迅が好戦的な性格ではないと認識することになります。

迅が風刃を起動する直前に迅が実は好戦的な性格であることが判明しますが、今までの描写とのズレがあるのでそれを読者が認識するには少し時間がかかります。

「起動できる人が当時の隊員で20人以上もいて、候補者全員で争奪戦をやったんだけど、迅さんがあっという間に全員倒して圧勝しちゃったんだよね」

第27話

結果的にこのエピソードが「前振り」となり、迅の風刃起動、菊地原の首を飛ばす場面に繋がることになります。

ちなみにこの場面、首を飛ばされた菊地原以外に「風刃の攻撃に全く反応できずに棒立ちしている歌川」「しっかり反応してブレードで防御する太刀川と風間さん」と対応の違いから力量を読み取ることができるのも面白いですね。

◯おわりに

自分がワールドトリガーに「ハマった」きっかけになった場面を考察してみましたが、みなさんはどの場面でワールドトリガーにハマりましたか?

その場面を自分なりに考察してみると、ワールドトリガーの新たな魅力を見つけることができるかもしれませんね。






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