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2023上半期ベストトラック33選(6選)

毎週欠かさずに新譜チェックを続けていたら、今年もあっという間に半分が終わってしまった。なので備忘録も兼ねて、今年聴いた中で気に入った33曲をピックアップし、Apple Music と Spotify でプレイリストにした。曲順はリリース順。お時間ある方はチェックしてもらえればこれ幸い。

また、その中から特に素晴らしいと感じた6曲を以下に選出して文章を添えたので、こちらもぜひご一読を。



NewJeans "OMG"

とにもかくにも NewJeans なのである。昨年は "Ditto" で幕を閉じた。今年は "OMG" で幕を開けた。この3分半の完璧なポップソングに対して自分が口を挟める余地など特にはない。曲の内容とあまりリンクしているように思えないメタ視点の MV は若干鼻につくが、"Oh my, oh my God" の愛らしい振り付けとハスキーで挑発的な "Baby" の切れ味、これだけで自分は彼女らの一切を肯定する。ところで自分の妻は結構な K-POP ファンで、最も推しているのは Kep1er 、他にも LE SSERAFIM や IVE などを愛聴しているのだが、そんな妻的に NewJeans はあまりピンと来てないらしい。そういう人って実は多かったりするのだろうか。確かに「強さ」や「可愛さ」ではない、しなやかで清冽な雰囲気をまとった彼女らの魅力は、他の K-POP グループとは一線を画す、ある種のオルタナティブな道筋を提示していると思う。


Skrillex, Fred again.. & Flowdan "Rumble"

今年の Coachella 二週目でヘッドライナーを辞退した Frank Ocean の代役を務め、Four Tet 、Fred again.. と組んで世界最大級のアフターパーティーを開催していた Skrillex 。散々じらしまくった後に投下された "RATATA" の破壊力も相当なものだったが、さしてキャッチーなメロディがあるわけでもない、このダークで武骨なダンストラックがカリフォルニアのだだっ広い会場に響き渡り、オーディエンスの隅々までテンションをカチ上げさせていた、その光景は PC のモニター越しに見てもブロステップ創始者としての威厳すら感じさせるものだった。とにかく余計なものを削ぎ落としていった果てに辿り着いた、爆発寸前の火薬庫のようなスリルが漲りっぱなしの2分半。俺はこの音を現場の音圧で体感して完膚なきまでに正気を失いたい。


Kara Jackson "dickhead blues"

今年はフォークが面白い。色々なミュージシャンの新譜を漁った中で、この米国イリノイ出身のシンガーソングライターは特にユニークさが際立っていた。ダメンズウォーカーな自分にほとほと嫌気が差しながらも、「私は一級品/私は役に立つ」と自らを鼓舞し、徐々に姿勢が前を向いていくにつれてドラムやキーボードなどの演奏が本格的に加わって、だんだん光が差し込んで音の世界観が拓けていく。多様な音色が入れ代わり立ち代わりで現れては消え、やがてひとつに溶け合ってパワフルな音像へと変貌する様はアートポップの緻密さだが、同時にブルースならではの一筆書きのシンプルな歌の強さもあり(そもそも曲名からしてひどく痛烈、痛快である)、存在感のある低い歌声が導くままにスルスルと曲の中へ吸い込まれる。彼女は2019年に全米青年桂冠詩人を受賞しているとのこと。


BUCK-TICK "太陽とイカロス"

自分にはこの曲が単なる快活なポップナンバーだとは思えない。過去の楽曲で言えば "die" なんかと近しい手法だと思う。曲調的には思いきりが良すぎるくらいに清々しいが、歌詞のメッセージを追うほどに迫り来る強烈な死の影、解放と表裏一体の恐怖にゾクリとさせられる。さらにこの楽曲では「機体」と書いて「カラダ」と読ませるのだから、戦闘機、戦争の最前線へと目線を送っているのは明白だ。国家に仕えよと強制された使命。遠い地で帰りを待つ人。「悲しいけど これで自由だ」。日本を代表するゴスバンドであり、常に現代の流れと併走するリアルな表現者であり続ける BUCK-TICK 。結成からいよいよ40年を迎えようとしている今でもアップデートを怠らない彼らの凄みが、この1曲だけでもひしひしと伝わってくる。


水曜日のカンパネラ "金剛力士像"

今年も快調に高いアベレージを保っている水カン。新作 "RABBIT STAR ★" はハウスやユーロビートなど曲調がバラエティに富んだ内容だったが、中でもレゲトン風の緩やかなグルーヴで聴かせるこの曲は、彼女らの中では絶妙にありそうでなかった路線で、MV で詩羽が自ら踊る大胆なトゥワークダンスを含め、新たな領域を攻めていこうとする野心も表れていてかなり良い。コムアイ時代の "桃太郎" から10年近く経って世代や流行も一回りしたであろう今、代表曲は "エジソン" に切り替わり、メディア露出も増やしながら更なる次の一手をあれこれ模索している。このユニットはまだまだ面白くなれる予感がある。いやはやええじゃないか。


KNOWER "Crash the Car"

ドラマー/マルチプレイヤー Louis Cole とボーカリスト Genevieve Artadi の両者は、それぞれのソロ活動でもその才能を遺憾なく発揮していたが、ふたりが KNOWER としてタッグを組んだ時には互いの魅力が何倍にも膨れ上がる、抜群の相乗効果があると今年の新譜 "KNOWER FOREVER" を聴いて確信した。"I'm the President" や "The Abyss" のような辣腕テクニックを駆使したグルーヴィーな楽曲が魅力的なのはもちろんだが、ここではアルバム最後を飾るこの名スロウナンバーを挙げたい。幻想的で華やかなメロディを大所帯ストリングス/ホーン/コーラス隊がさらに彩り、まるでディズニー映画のエンディングシーンのごときスケール感にまで発展する、あまりにも幸福な音楽体験。今年の Louis Cole フジロック出演には Genevieve Artadi も帯同するとのことで、そちらも今から楽しみでならない。


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