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ファーストアルバム満2歳5ヶ月

10月8日。ついにこの日がやってきた。ファーストアルバム初の運動会である。コロナの感染状況によっては家族に公開しないかもしれなかったのでハラハラしたが、無事に公開の形で開催されて一安心。本番に向けて園児たちはかけっこやダンスの練習を積み重ねてきたのだという。否が応でも期待が高まる。園庭には万国旗が張られ、園児たちの似顔絵が柵にたくさん貼り付けられている。何だかノスタルジーと新鮮味が入り混じった不思議な気持ちになる。天気はうす曇り。カンカン照りよりは過ごしやすいし、写真写りも良いのでバッチリだ。妻は写真、自分は動画担当。これから30分間、我々はファーストアルバムを iPhone に収めるのに全神経を集中させる。

午前9時30分。となりのトトロの「さんぽ」が鳴り響き、ドアが開くと黄色い帽子をかぶったたくさんの2歳児がわらわらと入場してくる。この時点で微笑ましさが溢れ返っている。我がファーストアルバムは何だかクネクネしてペシャンと座り込んだり、保育士さんの手を引っ張ったりして一人でちゃんと歩こうとしない。おいおい大丈夫か…?全員が集まると園長先生による開会の挨拶。「みなさんがんばりますよ~!えいえいお~!」と呼び掛けても全員思いのままにあちこちを向いてぼんやりしている。自由そのものだ。あるいは普段だといない家族が集まっている様子にやや困惑しているのかもしれない。

プログラム1番。カエルのたいそう。保育士さんはみんなカエルのかぶりものをして、体操スタート。2歳児は個人差がすごい。割とできている子もいれば、全く興味を示さずにボケーっとしてる子もいる。本当にまちまちで観察するのが面白い。それでファーストアルバムはと言うと、なぜかシャツの裾を口にくわえ、はにかみながらリズムに合わせて縦にヘドバンするという家では一回も見たことのない挙動を見せてくれた。どういうこと?でも楽しそうなのでまあいいか。この辺で園児たちは状況に慣れてきたようで、自分の親に手を振ったりタタタっと近寄ったりするようになる。

プログラム2番。かけっこ~GO! GO! タンバリン~。3人ずつ横に並び、ゴールに吊ってあるタンバリンをタッチしに走っていく。走る順番はやる気のある子から。なのでどうぞ!と声をかけると我が我がという感じでわちゃわちゃと列に並びだす。ファーストアルバムはとりあえず控え場所で様子を見ている。最初の3人がスタート位置につき、先生がひとりずつ〇〇ちゃん!と名前を呼ぶ。するとみんなきちんと手を上げ、保護者席からは拍手とともに感嘆の声が漏れる。これもきっと練習の賜物だろう。先生が名前を呼び終わり、いよいよ3、2、1、ゴー!で一斉にスタート…と思ったら、突然控えの場所からすっくと立ちあがり、3人と一緒にタンバリンに向かって猛然と走り出すファーストアルバム。いやまだ君の番ちゃうて!すぐさま先生に連れ戻される。完全にコントである。そして次の番でも同じことをやる。ファーストアルバムによる天丼。保護者席にはだいぶウケていた。

そうこうしていたら、いよいよ正式にファーストアルバムの番。先生に名前を呼ばれる…ちゃんと手を上げるだろうか…大丈夫か…上げたー!!!自分の名前わかってる!いまだに全然発語しないけど!感激の一瞬。そしてカウントダウン…スタート!勢い良く走り出すファーストアルバム。しかしタンバリンではなく、保護者席にいる我々目がけて満面の笑みでやってきた。いやいやタンバリン叩かんと!先生に促され、しぶしぶという感じでタンバリンを叩きに行く。しかし叩いた後も園児の控え場所ではなくこちらの保護者席に戻ってきてしまう。そうかパパとママ大好きか~。普段ならいいのだが運動会はまだ続いている。もうちょっと頑張っておいで~と追い出すと、すでに甘えたモードに切り替わってしまったのか、グズグズして泣き出してしまった。

プログラム3番。サーキット。園庭にマットや鉄棒、平均台などを置き、それらをグルグルと回ってこなしていくというもの。なのだが…ファーストアルバムはさっきのかけっこ終了からグズグズが止まらず、ついに号泣してその場にへたりこんでしまう。鼻水と涙で顔がくしゃくしゃになり、グロウルさながらに絶叫しっぱなし。当然サーキットは何もしようとしない。どうにか先生がなぐさめるも機嫌は直らず、プログラムをこなした園児がひとりずつ金メダルをもらっていく中、取り残されていくファーストアルバムはどうなるのか…あっ平均台できた!できたよ!正確には先生に抱えられて平均台できた風に見せてくれただけだけど!なんとか金メダルをいただいた。一番最後になってしまったが、ずっと泣き続けていたのを他の保護者の方々も気にかけてくれたのか、みんなで暖かい拍手を送ってくれた。記録には残らないけど記憶には残るみたいな。

そしてファーストアルバムを迎えに行くと物の見事にピタッと泣き止み、およそ30分程度の運動会は終了。金メダルにご満悦の様子で、3人で手を繋いでニコニコと帰宅したのだった。できたかできてないかで言えばできてない寄りだけど、頑張ったし可愛かったからよし!色んな意味で最後まで見どころ満載の運動会であった。


10月31日。保育園でハロウィンパーティーが開催された。各自で衣装を持ってきてくださいとのことだったので、妻がカボチャおばけの衣装を自作してくれた。最初は衣装が怖くて(あと元々なにかを頭にかぶるのが嫌いで)全力拒否していたファーストアルバムだが、徐々に落ち着かせつつ、周りも変わった衣装を着ているのを見せながら、なんとか着てもらった。送り迎えに行った妻によると、シンデレラさながらにドレスやティアラで着飾るという気合いの入った子もいたらしく、こうなるともはや子供のパーティーと言いつつ、実質的に大人の天下一武道会みたいな様相になっているなと妙に感心する。もちろん二歳児たちはそんなことお構いなしに、お絵描きした絵を貼り付けて工作したミニポーチにお菓子を詰めてもらい、キャッキャと嬉しそうにはしゃいでいた。街中の凄まじい行列をワイドショーで眺めるくらいだった親の自分にとっても、確実にこれまでの人生の中で最も自発的に楽しんだハロウィンだった。

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