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沖縄の未来をインパクト投資から考える

 9月7日(木)、沖縄県立博物館・美術館講堂において、SIIFの2021年度休眠預金事業の採択団体である「株式会社うむさんラボ」(沖縄県うるま市)主催のトークイベントが開催されました。タイトルは「沖縄の未来を豊かにする投資のあり方『インパクト投資とゼブラ企業』~社会性と経済性の両立~」。社会課題を解決しながら経済性も実現するインパクト投資・経営について、さまざまな意見が交わされました。


インパクト投資がもたらす新しい未来

 このイベントは、今年7月、うむさんラボが設立した「カリーインパクト&イノベーションファンド」の設立記念イベントとして開催。沖縄の未来を豊かにする投資のあり方について、ひいては貧困や差別、環境、教育、福祉等々の社会課題をビジネスで解決しようとする企業への新しい投資のあり方「インパクト投資」について、日本のインパクト投資に携わるさまざまなゲストを迎えて行われました。
参加者はゼブラ企業として事業を進めるゼブラアンドカンパニーの代表取締役のほか、SIIFの専務理事である青柳光昌、インパクト・オフィサーである小笠原由佳も参加。主な内容と出席者は下記の通りです。
 
【基調講演Ⅰ】
一般財団法人社会変革推進財団 専務理事 青柳光昌
【基調講演Ⅱ】
株式会社ゼブラアンドカンパニー 共同創業者/代表取締役 田淵 良敬
【パネルディスカッション】
一般財団法人社会変革推進財団 インパクト・オフィサー 小笠原 由佳
株式会社ゼブラアンドカンパニー 共同創業者/代表取締役 田淵 良敬
株式会社ミオアンドカンパニー 代表取締役/株式会社うむさんラボ パートナー 三尾 徹
株式会社うむさんラボ 代表取締役 比屋根 隆
株式会社さびら 事業推進統括 石垣 綾音

  開会に先立ち、うむさんラボ代表取締役の比屋根氏は、沖縄で初めてとなる地域課題解決型のインパクトファンド設立までの道のりを紹介するとともに、人の特性や個性を大切に育み支える島。豊かさを分かち合える、逞しくて優しい経済社会が生まれる島。補助金に頼らずに資金が循環していく島。このような沖縄を目指して、「インパクト投資・経営、ゼブラ企業、エコシステムなどをキーワードにみんなで情報を共有し、学び合い、沖縄の未来へつなげていきたい。沖縄の未来がわくわくするような機会としていきたい」と語りました。

新しいお金の流れを創るインパクト投資への期待

 続いて、SIIFの青柳が登壇し「インパクト投資とは何か」をテーマに講演。インパクト投資の定義、インパクト投資が増えてきた背景、EGS投資・サステナブル投資との違い、インパクト投資をめぐる国内の動き、個別事例などを紹介しました。青柳は、7年前からインパクト投資の推進を図るためSIIFを立ち上げ取り組んできたこと、実際に沖縄でインパクトファンドが設立されるところにまで進んだこと、その評価と期待を述べまとめとしました。
また質疑応答では、経済的リターンを期待する一般投資家にインパクトファンドがどう受け止められるか、また経済的リターンが一つの評価基準となる一般のファンドと比べ、インパクトファンドの定量的な評価・判断はどのように行うのか、といった実務的なものまで関心がおよび、会場は大いに盛り上がりました。 

パネルディスカッションの様子

沖縄特有の社会課題をどう理解するのか

パネルディスカッションでは、インパクト・オフィサーの小笠原が登壇し、メインテーマである沖縄の未来を豊かにする投資のあり方、社会性と経済性の統一について意見を交換しました。
 その中で小笠原は、この3年間でインパクト投資の世界は大きく動いた。インパクト投資やゼブラ企業とは何かと考えた時に、これは簡単にいえばお金の流れを変えること。お金を出す人が何を求めているのか。それが経済的リターンの最大化なのか。それともお金を受け取る人も、受け取りながら事業をする人も、投資や支援を通じて自分たちのやりたいミッションを実現していくことなのか。また、投資・支援する側と受ける側を、どうマッチングしていくのか。そこが重要であると思うと述べ、それこそがこれからのインパクト投資やインパクトマネジメントの核となる論点ではないかとしました。
 また、教育旅行や平和学習事業のプロジェクトを手がける株式会社さびらの石垣氏から出された、沖縄特有の社会課題を「どう理解するのか」という問いについて、ロジックモデルを作成して目指すスーパーゴールを設定し、それに向けて何が必要なのか、そしてそれがどんな変化をもたらすのかを整理することの意味が改めて注目されました。
さらに小笠原からは、例えば地域活性化や人口減少の問題を考える時に、単純に人口を増加させればよいのではなくて、人口が減っていることで何がマイナスなのかというところを考えていかないと、間違った問題設定、間違った処方箋を出してしまうことがある。人口が減っているのは課題ではなく現象。ではその現象がなぜ起こっているのか、歴史や文化的背景まで掘り下げて分析し、理解していく必要があるとし、ロジックモデルを作る上では、何が起こっていて、その根本問題は何か。それはどうやったら解決できるかを常に意識していく必要があると結びました。

「カリーインパクト&イノベーション一号」ファンドについて紹介する大西氏

インパクト投資を通じた新しい経済活動への期待と予感

 イベントの最後には、うむさんラボのインパクトキャピタリスト大西氏より、休眠預金事業を活用して立ち上げた「カリーインパクト&イノベーション一号」ファンドについての紹介がありました。「持続可能な開発目標(SDGs)」達成に向け、投資を通じ、継続可能なビジネスを構築していくこと、課題先進県と言われる沖縄県を課題解決先進県へと導き、世界のリーダーとなるべき社会起業家を輩出すること、そして沖縄県全てがステークホルダーとなり、共生社会の実現に向けた取り組みを行う将来の基盤を作ることなど、ファンドを立ち上げた目的や想い、ファンドの特徴、ロジックモデルなどが紹介がされました。
インパクト投資によって、沖縄の社会課題にアプローチする起業家は増え、その事業成長に貢献できる一つの手法になるのか。今回のトークイベントは、インパクト投資がこれからの経済活動のあるべき姿となるような、期待と予感を感じさせる会となりました。

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