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【前編】ポストコロナ時代のインパクト投資 ~世界のインパクト投資家は動き出している ~

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SIIF 常務理事 工藤 七子

新型コロナウイルスの感染拡大が続き、世界は大きく変りつつあります。
「コロナショック」のような非常事態への対応には、 3R(Response・Recovery・Renewal)といわれる3つのフェーズがあると言われています。

第一段階はResponse(緊急対応)、次いでRecovery(復旧)、最後はRenewal(再生) ですが、これはBBB=Build Back Betterとも言われ、「再建はよりよい状態に」「新しい物をつくる」という段階です。

今はまさにResponseの真っ只中。ESG投資家やインパクト投資家の間でも、投資先をどうサポートするかが喫緊の課題となっています。新型コロナウイルスの影響を受けて継続が危ぶまれる事業も多く、とりあえずの「輸血」が必要です。

世界のインパクト投資コミュニティでも様々な緊急支援の動きが起きています。オピニオンリーダーやプレーヤーは活発な議論を交わし、GSG議長のロナルド・コーエン卿は「コロナ危機を乗り越えるためのインパクト投資がもっと必要である。成果連動型投資の推進を引き続き行うべき」と声明を発表しています。

Big Society Capitalは 1億ポンドのローンプログラムを立ち上げ、世界最大の資金運用会社ブラックロックは新型コロナウイルスとSDGsに重点を置いた5000万ドルのインパクトファンドを開始するなど、大きな被害を受けた社会的に弱い立場にある人々や地域の支援に積極的に乗り出しています。

フィランソロピーの動きも迅速です。中でもロックフェラー財団は、新型コロナウイルスの脅威に立ち向かう新たな追跡システムや必要となるツールの開発に、2年間で少なくとも5,000万ドルを投入すると発表しました。単なる緊急対応の「輸血」ではなく、緊急時だからこそ、既存の発想を超えた新しいイノベーションを生み出そうという姿勢に改めて同財団の戦略的フィランソロピーへのコミットメントを感じました。
 
そして、今感じているのは、その次の段階「リカバリー」の難しさです。この時点ですでに今まで通りの状態に戻ることが難しくなっている事業もあります。
3つのフェーズの移行が滑らかにはいかない。つまり、リカバリーとリニューアルを同時に行わなくてはいけないということです。「ニューノーマル」がどのような世界になるのか誰にも分からない中で、事業モデルを革新するという、困難な舵取りが全世界のビジネスに求められています。

インパクト投資家として、この事業を行うことでどういうインパクトがあるのかというセオリーそのものを見直し、新たなセオリーオブチェンジを描きなおす必要があるかもしれません。その見直しに私たちはどう伴走できるのか。願わくはただの輸血ではなく、リカバリーからリニューアルに向けて踏み切る事業を積極的にサポートしていきたいと考えています。

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