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2021年度 インパクト投資における消費者調査

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2019年以来、SIIFではインパクト投資に対する消費者意識の把握を目的に、定量調査を実施しています。このほど2021年度の調査を8月に行い、結果がまとまりましたので、報告、解説いたします。

< 調査の概要 >
調査期間: 2021年8月8日~9日
調査形態: インターネット調査
対象: 20歳から79歳までの全国の一般消費者
サンプル数: 4,127人(回答者数)*前年は3,098人
実査委託先: 株式会社マクロミル
分析実施: SIIF
2021年度 インパクト投資に関する消費者意識調査 全編はこちら


日本人の 投資経験者は47.6%、ほぼ半数

当調査ではインパクト投資への認知度や関心度についての設問の前に、投資経験の有無(「そもそも(株式など)投資をしたことがあるのか?」)をたずねています。社会貢献意欲があっても、もともと投資をしたことがない人はインパクト投資への心理的な距離が長く顧客開拓上あまり有望ではないだろうという予想に基づいています。

投資経験者 の割合は47.6%と半分を下回っています。昨今「年金2,000万円不足問題」が騒がれ、個人による資産運用の必要が性がうたわれながらも、実際に投資を行う人はまだ少数派です。日本人の投資に対する心理的距離はそれだけ強いことが分かります。

図表1 消費者の投資経験

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アセットクラス別の経験率を見ると株式と投資信託が高いですが、FX、仮想通貨も一定割合います。


インパクト投資の認知度は6.6%、昨年6.1%からほぼ横ばい、投資経験あり+20代男性は30%が認知

「言葉を聞いたことがあり意味もよく知っている」と、 「言葉を聞いたことがあり、意味も少し知っている」を合わせた数値をSIIFでは「インパクト投資認知度」と定義しています。2021年の認知度は6.6%であり、前年の2020年(6.1%)、2019年(6.8%)と比較するとほぼ横ばいです。行政、金融の世界ではインパクト投資という言葉はバズワードとなりつつありますが、一般消費者の間では認知度向上はこれからです。

図表2 「インパクト投資」という言葉の認知度

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ただ、平均値では6.6%ですが投資経験の有無や年齢帯別にみると大きな違いが浮き彫りになります。
具体的には投資経験ある20代、30代のいわゆるZ世代、ミレニアル世代の認知度が高くなっています。特に男性20代では3割近くに達します。一方、投資経験があっても40代になると男女とも認知度は激減しています。

図表3 インパクト投資の認知度 -- 投資経験、性別、年齢帯別クロス

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インパクト投資実施への関心度はいずれも17.2%、19.1%から微減。コロナの影響か?

インパクト投資の実施に「大いに関心がある」と「やや関心がある」を合わせた回答者をSIIFでは「関心ある層」と定義しており2021人は17.2%でした。前年の2020年19.1%、2019年20.7%、より漸減していますが、これはコロナで投資意欲が委縮しているからではないかと推測されます。
この関心度17.2%はインパクト投資認知度(6.6%)よりは高く、「社会・環境課題解決を目的とした投資の機会 があれば活用してみたい」という層が一定規模いることが分かります。

図表4 インパクト投資実施への関心度

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関心層に「インパクト投資にいくら割いてもよいですか」を尋ねたところ「100万円以上割いてもよい」が10.6%、「50万円以上100万円未満割いてもよい」が17.8%となり、50万円以上で約3割を占めています。消費者向けのインパクト投資商品がまだ少ない状態で且つ認知度もまだ6%台の段階としては高い数値といえます。

「インパクト投資実施への関心度」と、「インパクト投資に割いてもよい金額」を統合して、今後の分析のベースとなる新たな回答分布のグラフを作りました(図表5のいちばん下のグラフ)。

図表5 インパクト投資関心度と投資意向金額を統合した回答分布

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インパクト投資実施への関心度 -- 世代を超えて50万円以上のインパクト投資はあり

サンプル全体の平均値では関心層は17.2%でしたが、認知度と同様、投資経験がある20代、30代の関心度が高くなっています。ですが、「インパクト投資に割いてもよい金額」を見ると興味深い事実が浮かび上がります。グラフの帯の左から2つの選択肢は50万円以上割いてもよい層になりますが、この値は40代以降になってもそれほど落ちていません。つまり、50万円以上を割いてもよいという有効需要層は年齢帯をまたがって一定規模存在することが分かります。                                                                                                                                                                        図表6 インパクト投資実施への関心度 ー 投資経験・年齢帯別クロス

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潜在顧客層の関心分野は再生可能エネルギー、環境、医療、介護

インパクト投資の潜在顧客層に、社会課題解決のためどのような企業への投資に関心があるかを尋ねたところ、上位3位以内には再生可能エネルギー、環境、医療、介護を推進する企業が入りました。また4位以降でも気候変動対応、安全な水資源、仕事をつづけながら育児や介護を行いやすい職場環境など、SDGs実現に努める企業への投資意欲が高くなっています。

図表7 潜在顧客層が社会課題解決のため投資したい企業のタイプ

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7割強が機関投資家がインパクト投資を行うことに肯定的

7割強の潜在顧客層は、自分自身の資産を運用する機関投資家がインパクト投資を行うことに肯定的です。また、インパクト投資に割いてもよい金額が高い層ほど、機関投資家によるインパクト投資への肯定度が高くなっています。

図表8 機関投資家がインパクト投資を行うことへの潜在顧客層の肯定度

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最後に – ファクトの振り返りと今後の市場拡大への示唆

今回の調査でわかった主なことは、
・株式、投資信託、債券など、投資経験者 は47.6%とほぼ半数
・インパクト投資の意味を多少なりとも知る認知度は6.6%
 -投資経験のある20代、30代の認知度が高い
・インパクト投資を実際に行ってみることに約2割 (17.2%) の消費者が関心を持つ
 -認知度と同様、投資経験のある20代、30代の関心度が高い
 -投資経験ある人の中では、50万円以上を割いてもよい人は世代にかかわらず一定割合いる
・インパクト投資を行ってみたいと考える分野の上位は、再生可能エネルギー、環境、医療、介護

いかがでしたでしょうか。
本ブログではレポートの主要部分のご紹介ですので、レポート全体にご関心ある方はSIIFのサイトからご参照いただけると幸いです。今後ともSIIFではインパクト投資の消費者意識の知見を蓄積し、リテール市場拡充に寄与したいと考えています。


2021年度:インパクト投資における一般消費者向け調査

2020年度:インパクト投資における一般消費者向け調査

2019年度:インパクト投資における一般消費者向け調査


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