見出し画像

2022年 年始のご挨拶

スクリーンショット 2022-01-01 14.48.11

社会変革推進財団理事長 大野修一

皆様、明けましておめでとうございます。2022年の年頭に当たり一言ご挨拶を申し上げます。

昨年を振り返りますと、コロナ禍という大変厳しい条件下ではありましたが、我々、社会変革推進財団(SIIF)のテーマであるインパクト投資や社会的企業の分野では大きな進展が得られた一年であったと言えるのではないでしょうか。

思い返してみますと、日本で初めてインパクト投資推進のための組織だった動きがG8社会的インパクト投資タスクフォース(現 Global Steering Group for Impact Investment: GSG)の日本委員会として始まったのは2014年、ロックフェラー財団など欧米での動きに遅れること7年余りのことでした。しかし、それから7年目の昨年11月末、ついに21の国内金融機関が「インパクト志向金融宣言」に署名するところとなりました。
それに先立つ9月には我々SIIFの主催によるインパクト投資フォーラムがオンラインながら360人もの参加者がエントリーして開かれ、そこに登壇した大手金融機関のトップからは日本でも「今まさにインパクト投資がメインストリーム化する兆しがある」との発言が飛び出しました。

また、昨年は改めて社会起業家に期待が集まった年でもあったと言えるのではないでしょうか。コロナ危機は様々な問題を炙り出すとともに、多くの新しい技術やシステムの活用、取組みの必要性が明らかになりました。この過程で一層はっきりして来たことは政治や公共セクターの限界と、「人に」任せるのではなく、個人や民間セクターの主体的な役割の重要性であり、それは即ち、税金を元にした公的資源とダイナミックな民間のノウハウや資金の協業の必要性と可能性ではなかったでしょうか。これこそ、コロナ禍にも拘らず、というよりコロナ禍だからこそ、社会課題を意識した企業家とそれを支えようとする投資家に期待が集まった背景であったように思います。

こうした中で、SIIFは自己資金や休眠預金を用いた投資活動や伴走支援活動を通じて、社会起業家をサポートして参りました。手前味噌かも知れませんが、SIIFはこれらの活動により急速に存在感を高め、インパクト投資や社会起業家支援の分野での中心的な組織として広く認知されるようになったと言ってよいのではないでしょうか。その結果、複数の金融機関や富裕層の個人から有償でインパクト投資やフィランソロピー活動についての助言を求められています。

しかし、我々はこれらの成果に満足している訳ではありません。欧米諸国と比べると日本のインパクト投資残高はまだまだ大きく見劣りがする状況にあります。世界経済(GDP)に占める割合5%を占める経済大国でありながら日本におけるインパクト投資の残高は世界の約1%に過ぎませんし、SIIFが行った国内での意識調査の結果によりますと、一般の人々におけるインパクト投資の認知度は6%に過ぎません。インパクト投資がようやくメインストリーム化したとは言っても、それはごく一部の金融機関・機関投資家等の段階に留まっている訳です。

社会起業家支援などの分野でも、まだまだ、我々がやり残したこと、やり通せなかったことがあります。また、自分達の欠点や力不足も自覚しています。
それらを乗り越えるのは一朝一夕に出来ることばかりではありません。そのためには、より長期的な視点に立った取り組みが必要だと言えましょう。そこでSIIFでは、来年度に向けて、関係者全員で共有出来る中長期戦略を策定すべく準備を進めているところです。

思えば、コロナ禍に明けコロナ禍に暮れた過去二年という時期は、失われた多くの命は勿論のこと、幸い生きながらえた大部分の人々にとっても、機会や時間など犠牲になったり失ったりしたものの大きかった期間であったと言えましょう。しかし、見方を変えるとコロナ禍もマイナス面ばかりではなかったように思います。私は一年前のnote新年号で、「人間の歴史に於いて大きな災禍は大きな変革を生み出して来た。これから多くの創造的な変化を見られると思うと楽しみ」と指摘しました。既に、そのような方向への新しい動きが見られるのは前述の通りです。

コロナ禍によって、それまでの当たり前が当たり前ではなくなるなかで、人間や社会のシステムの弱点が明らかになるとともに、人と人の温もりの価値も改めてクローズアップされるなど、未来をより良くするための沢山のヒントが示されました。災禍から変革が自動的に生まれるものではなく、そのためには、今をより深く理解し、本質を見ぬくための力、洞察力と未来に向けて新しいものを作るための力である想像力と行動が必要です。さあ、知性と感性のアンテナを張り巡らせ、想像力をフル稼働させて全てのヒントを吸収し、より良い社会に向かって進もうではありませんか。

新年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?