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オルタナティブ事業2年間の集大成「ハルキゲニアフェス2022」開催! 合計6時間に及ぶセッションの内容を順次レポートします。

2022年3月29日、SIIFが2020年度に開始した「オルタナティブ事業」2年間の集大成となるイベント「ハルキゲニアフェス2022」を開催しました。合計6時間に及ぶセッションとプレゼンテーションには、オルタナティブな道を切り開く先駆者、総勢14名が登壇。会場となった東京・下北沢の「BONUS TRACK」の屋外スペースにパネルを展示し、一般の来場者にも事業を紹介しました。さらに、全24ページの小冊子『Hallucinate オルタナティブの始め方』もお配りしています。ここでは、イベントの概要をご紹介しつつ、SIIFが考える「オルタナティブ」とは何か、同事業のプロジェクトリーダーを務める古市奏文が論じます。

SIIFインパクト・オフィサー 古市奏文

「ハルキフェス2022」の目的は、最先端をゆくオルタナティブ事業を広く紹介し、その魅力や重要性を、一般の人や潜在的な支援者に伝えることです。登壇者には、SIIFが実施したアクセラレータープログラム「ハルキゲニアラボ」の参加者をはじめ、これまでの調査・研究を通じて出会ったオルタナティブな事業者をお招きしました。オープニングトークでは、インパクト投資とオルタナティブ事業について、改めて整理しました。

冊子『Hallucinate オルタナティブの始め方』

インパクト投資における「オルタナティブ」の位置付け

インパクト投資は、従来の投資における判断軸「リスク」と「リターン」に、社会的・環境的な「インパクト」を加えるものです。最近ようやく日本国内でも広く知られるようになり、多くの金融機関が取り組みを始めました。インパクト投資の量的拡大を歓迎しつつ、SIIFとしては、その質的向上に向けて、さらに深い価値、新しい価値の創造を目指していきたいと考えています。

インパクト投資でも、メインストリームの投資家は、どうしてもリターン重視になりがちです。対して、よりインパクトを志向し、金銭的リターンが見込めない、あるいは予測できないけれども、社会的に重要と思われる新しい事業領域に資金を振り向けていく。これが、インパクト投資における我々が考える「オルタナティブ」です。

これは別の観点から言えば、オルタナティブなインパクト投資とは、自助・共助・公助のうちの、主に共助の仕組みを変えていくことに当たります。自分のお金を自分のために使うのが自助で、国や自治体が集めた税金を社会のために使うのが公助とすれば、共助は民間の団体や企業がお金を出し合って社会を変えていく方法と言えるでしょう。ここには多くの可能性があります。

既存の社会の仕組みに対する「オルタナティブ」

では、「オルタナティブな事業」とは、どんな事業なのか。私たちが特に重視しているのは、資本主義や市場経済の論理では実現できない、環境・社会課題の解決やそれによって創出した社会的インパクトです。経済合理性や最適化・効率化を追求している限りは扱えない領域の課題、あるいは、まったく新しい社会のあり方の創造(システミックチェンジ)。既存のルールや仕組みそのものの改革を「オルタナティブ」と呼んでいます。

SIIFのオルタナティブ事業は、こうした事業に出資して伴走していくこと、一緒に事業をつくっていくことで、オルタナティブなビジネスモデルを具体化することを目指しています。

「ハルキゲニアラボ」では、これまで4つの事業者に、資金提供と半年間の事業開発支援を行ってきました。フェスではラボ参加者のうち「ニホン継業バンク」を運営する「ココホレジャパン」、地域社会における新しい共助の仕組みを構築する「Next Commons Lab」、遊休物件をクリエイターに提供し関係人口を創出する「巻組」にご登壇いただきました。こうした事業者を世に送り出すことで、オルタナティブな考え方やビジネスモデルが徐々に社会に浸透していくことを狙っています。将来的には、経済的価値よりも、自然や文化、社会関係的・人的価値を重視するビジネスが当たり前の社会にしていきたい。今回のフェス開催やコミュニティ運営もそのための活動の一環です。

ただ、必ずしも「オルタナティブ=儲からない」とは限りません。近年は、オルタナティブでありつつ、ユニコーンのような成長を遂げる企業が現れ始めています。例えば、「キャンプ場版Airbnb」と呼ばれるアメリカの「HIPCAMP」は、個人が所有する遊休地をキャンプ地として貸し、それを環境改善につなげる仕組みで、すでに4000万ドルもの資金調達に成功しています。

同じくアメリカの「sweetgreen」は「Farm to Table」で生産者から消費者に直接野菜を届けるサラダ販売会社です。食育を通じてより健康的なコミュニティを築くことをミッションに掲げ、ニューヨークをはじめとした都市部で絶大な人気を誇っています。

日本国内でも、建築系ベンチャーのVUILD、習慣化プラットフォームのNesto、畜産ベンチャーのGOODGOODは、いずれも累計で億円単位の資金調達を行っています。3者ともセッションにご登壇いただきましたので、詳しくは稿を改めてご紹介したいと思います。

「オルタナティブ」な概念や新たな金融手法が登場

資本主義の限界が顕在化しつつある今、様々な局面で「オルタナティブ」に向かう変化が起きています。例えば、最適化・効率化を追求してきた結果、高度に専門化し、ブラックボックス化してしまった産業を、一人一人の手に取り戻す「民主化」の動き。前述のVUILDをはじめとして、家や衣服のデザイン・製造工程を改革する企業があります。

また、製品・サービス提供者と顧客・消費者という一方通行の関係ではなく、さまざまなステークホルダーがともに関わり、分かち合う共同体、「Oneness」という概念も密かに拡がっているのではないかと考えています。前述のNext Commons Labは「組合型」の株式会社を設立し、新たな組織のあり方を提案したり、また別のとある企業はプロダクトを販売して終わりではなく、収益を分け合いながら伴走するなど、新しいスタイルのビジネスモデルも現れています。

そして、こうしたオルタナティブな動きを支えるための、新しいファイナンスの手法やツールも登場しています。2021年12月に設立された「FUNDINNO MARKET」は個人がネットで未上場株に投資できるプラットフォームです。また、フェスの登壇者「プラスソーシャルインベストメント」と「Zebras&Campany」も、それぞれ地域型クラウドファンディング「エントライ」の運営、オルタナティブ企業への投資スキーム「Life」の開発を行っています。

セッションでは、ここで取り上げた企業のほかにも、多彩なオルタナティブ先駆者にご参加いただいています。次回は、その具体的な事業の内容と、盛り上がりを見せたセッションの様子をお伝えします。

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