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地方に新しい循環型事業モデルを生み出す「ハルキゲニア」たち

■ シリーズ: ESGの一歩先へ インパクト投資の現場から ■
地方に新しい循環型事業モデルを生み出す「ハルキゲニア」たち

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SIIFインパクト・オフィサー、ハルキゲニアラボプロジェクト・リーダー

 古市奏文

「地域に新しい資源循環の仕組みづくりをする」

この目標を掲げてSIIFでは今年4月、新しいアクセラレータープログラム 「ハルキゲニアラボ」を開始しました。本プログラムでは、将来的にその資源循環を担い、エコシステムとなりうる事業アイデアをもった4団体に対して、資金提供および6カ月間の事業支援を行っていきます。

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            ハルキゲニアラボロゴ


プログラムの折り返し期間を迎えた 7月1日、4団体が集まって中間報告会「OnlinePitch+Circle by HALLUCIGENIALAB.」を行いました。ここで簡単に各団体について紹介します。

1つ目の団体は「新しいコミュニティ経済圏を創出する」ことを掲げた「株式会社Next Commons Lab」。これまでは一般社団法人として、起業家やコーディネーターを集団移住させて地域資源を掘り起こすローカルベンチャー事業を展開してきました。今回は新しく株式会社を作り、現在ある国内・台湾13カ所拠点のうち、最初の拠点である岩手県遠野市で新しいCO-OP事業を試みています。そのツールとして、個人のできることを可視化して地域の相互扶助を促す「マイクロワーク」のパイロット版を製作中。ほかにも講師・学生がともに学び合う「つくる大学」など、新しいコミュニティ経済圏づくりを目指しています。

2つ目、「雲南コミュニティハイスクールコンソーシアム」は島根県雲南市でNPO、教育委員会、企業連携の担当者などが一体となって活動しています。こちらではアプリを使って中高生と地元の大人の世代を超えた関係性 構築を目指しています。中心にあるのは雲南スペシャルチャレンジという 仕組みで、その活動を広げるために地域で消費できる「雲南チャレンジマイル(仮)」を使ったアプリを開発しています。マイルを媒介にして、あらゆる世代が相互に応援し合い、地域の課題を自分たちで解決できる社会をつくることが目標です。

3つ目は宮城県石巻市で活動する「合同会社巻組」。巻組は「タダでもいいからもらってほしい」と言われるような「絶望的条件の空き家」を借り上げ、または買い上げて、リノベーションしています。目指すのは「生活資 材の寄付を集め、自立を支援するギフトエコノミープラットフォームの形成」。こうした住宅には起業家やアーティスト、外国人など既存の不動産 市場では物件を借りにくい「住宅マイノリティ」たちが集うことで化学変化が起こり、クリエイティブなサービスを提供する「場所」そして、「人材プラットフォーム」となっています。

4つ目はココホレジャパン株式会社が運営する「ニホン継業バンク」。後継者のいない地方の事業承継を促進するプラットフォームです。すでに、岡山県瀬戸内市、石川県七尾市などで実績を積む注目の新サービスで、市町村や地域金融機関と連携して、地域の生業を永続させるエコシステムを構築しています。仲介手数料が低くM&Aでは承継されないような地域の伝統事業や個人事業者たちを、市町村などの地域団体がサブスクリプションで継業バンクを開設することで、全国から後継希望者を募集。インターンシップなどを通じて事業に興味を持つ人を受け入れるシステムです。

現在、ハルキゲニアラボでは、エコシステムづくりに関わる様々なノウハウ・知見を研修スタイルで学ぶ「共通プログラム」の提供と、各団体に担当者が付き、日々の事業の進捗管理やお困りごとへのサポートを行う「個別プログラム」の提供を通じて事業開発支援を行っています。共通プログラムでは、「社会的インパクトマネジメント」の研修を通じて事業のインパクトの可視化を行うことを中心にしながらも、「社会システム理論」「スペキュラティブデザイン」「コミュニティマーケティング」等の先進的なテーマも盛り込みながら、各団体のエコシステムづくりの知見のレベルアップを図っています。また、個別プログラムでは担当者がそれぞれのプロジェクトに深く関わることで、各団体の初期サービス開発を後押しし、事業の成果を生み出すところまで丁寧に支援します。これらの事業開発支援を通じて、今年秋のデモデイ(成果発表会)では各団体が提案する新しい社会のあり方や仕組みを皆さんに提示できればと考えています。

最後に

OnlinePitch+Circle by HALLUCIGENIALAB.にメンターとして参加した当財団専務理事の青柳光昌から一言。
「ハルキゲニアラボに、とても個性豊かな同志たちが集ってくれました。 普段、私たちは「インパクト投資」の推進のために様々な活動を行っています。しかし、このラボでは、投資に必要なお金という世界共通の価値ではなく、何か別のものやことで地域の共通価値、資本としてつくることができないか、という挑戦をしています。この挑戦に集まってくれたのが、今回の4つの団体です。皆さん、貨幣経済を否定するのではなく共存をしつつ、かつ真に豊かな社会、生活には何が地域の資本となり、流通するとよいか、この壮大な社会実験をオリジナリティあふれる発想で、本気で取り組まれています。この後どのような成果がでてくるのか、今からとても楽しみです。」



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