買い物帰り

昼ご飯何食べようかなー、ってレストラン街を彼女さんと散策してた時、
ある店から、カップルが出てきて、女性の方が手をぷらぷらしてアピールしたのを男性が繋いであげていた。
ウチの彼女さんは外でほとんど手を繋いでくれないので、
それを見てすっごく羨ましくなった。
それが顔に出てたのか、彼女さんもそのカップルを見て思うところがあったのか、
彼女さんが、横から顔を覗いてきて、
「手繋ぐ?」
って聞いてきた。
背が高い彼女さんが、かがんで目線を合わせてくれる仕草だけで可愛い。

すぐにお店に入っちゃったので、繋いでる時間は数分だったけど、
敏感に僕の気持ちを察しての気遣い、すごく嬉しかった。
注文してからの時間、嬉しすぎてボーッとしてたら、
「繋ぎたい時は言ってね」って言われた。
「(手繋ぐの)嫌やないと?」
「うーん・・・前よりは嫌じゃないんやけど・・・」
彼女さんがちょっとだけ考えて、


「彼氏ちゃんと手を繋ぐのが嫌とかやなくて、むしろ私がそんな風に甘えるのが嫌というか。」


久しぶりに彼女さんがそういうネガティブなことを言ってきたので、
そういえばこの人も本当はネガティブだったな、と思い出した。
付き合い出してから、すごくポジティブになって、僕のことを引っ張ってくれるようになったけど、元々は僕と同じくらいネガティブで、
出会ってすぐの頃は、そういうところの気が合って仲良くなった。
彼女さんが言いたいのは、
「オタク一筋でやって来て、世の中のリア充を呪ってた人間が、
いざ彼氏が出来たら、甘えたりしてる自分が嫌。」
ということ。
付き合う前から彼女さんはこれがコンプレックス。
これまでの彼氏にも、そういう彼女っぽいことが出来なくて別れられたらしい。
僕と付き合い出してからは、家では普通に甘えてくるし、
「彼氏ちゃんには無理しないで甘えられる。」って言ってくれている。
けど、やっぱり外ではどうしてもそういうことができないまま。
手が繋げないとか、
僕が彼女さんの髪とか触ろうとすると
「外ではやめて」
って小声で言ってきたりしてくる。

「やっぱり彼氏ちゃんは繋ぎたいもんね?」
ってすごく悩んでる感じだったので、
「俺に気を使ってくれてるんなら、無理して繋がんでいいよ。彼女ちゃんが繋ぎたいかどうかやない?」
「うーん・・・」
数秒だまった後、ちょっとだけ恥ずかしそうに笑いながら、
「繋ぎたいかも。」
って言って、
「けどなぁ・・・」
すぐまた悩んでしまった。

僕達みたいな人間のネガティブってのは本当に根が深くて、
外から見てる人間の意見は全然聞こうと思えない。
彼女さん自身、内から見た時にどういう風に見えてるかの問題だと思っている。
だから、その場ですぐに彼女さんの気持ちを解決するようなことは言えなかった。

とりあえず、その場を和ませようと、
「俺は、今彼女ちゃんが手繋ぎたいって言った時の顔が可愛かったからそれで十分やけど。」
って調子乗ったら、彼女さんに肩パンされた。
そうこうしている内に料理が出てきたので、そこで話は終わってしまった。


ご飯食べ終わって店の外に出て、
ワンチャン彼女さんから、手繋いでくるかと期待してしまったけど、そんなこともなく、
レストラン街のあるビルの出口まで来た。

急に彼女さんが、トコトコと小走りし出すと、
アルコールで手を除菌して、こっちに戻って来た。
そして、手を差し出して来て、
「はい」
って一言。
「これからは繋いでくれるの?」
「うーん・・・ちょっとずつ。努力する。」

彼女ちゃんの中で何かが変わったのか分からないけれど、
ちょっとだけ手を繋ごうと努力してくれたみたいで、
でも照れながら手繋いでくれるの可愛いから、その恥じらいは無くさないで欲しい、なんてわがままも持ちつつ。

帰るまでほぼずっと繋いでたせいか、僕も気分が乗ってしまって、
家に着いてすぐに、彼女さんに「チューしよ。」って言ったら、
「調子に乗んな」
って結構な強さで叩かれた。
頭が馬鹿になって、空気も読まずそういうこと言ってしまうくらい、彼女さんが可愛かった、という惚気。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?