今更知るなんて

仕事終わりで、彼女さんと時間が合ったので買い物へ。
帰り道で、某牛丼屋に久々に行きたいと彼女さんが言い出した。
店に入ってすぐ彼女さんに言われて気づいたけど、
2年近く一緒にいて、意外と二人で牛丼屋に来たことなかった。
「普通の若いカップルは牛丼屋とか行かんのかなー。」
と彼女さんがポツリ。

恋愛経験の乏しい僕と、これまでの恋愛に良い思い出がない彼女さんのコンプレックス。
普通のカップルらしいことができない。
有名なデートスポットに行ってはみるものの、周りで楽しそうにしてるカップルを見て、ソワソワしたり。
共通の友人達と一緒にご飯に行ったら、「あんたら、熟年夫婦みたいやね。」って言われたり。

二人とも、それが嬉しかったりもする。
二人で歩いてて、前から手繋いでイチャイチャしてるカップルとすれ違った時。
彼女さんと顔を見合わせて、吹き出してしまった。
「ウチらは“アレ”じゃないね。」って。
無理してカップルらしいことをやってみる度に、
自分達には自分達らしさがあるって思えて、
それはそれで楽しい。

普通のカップルは牛丼屋に行かないのかもしれないけど、
別に僕達は僕達だし。
それに、
「どうせ家族になったら、そんなの気にせず来ることになるんやし。」
思ったことをそのまま口にしたら、
彼女さんが「それなー。」って笑ってくれた。
家族やもんね。
ってニコニコしてくれて、すごく嬉しかった。
こういうところなんだかんだバカップルだと思う。
悲しいかな牛丼屋のいいところはすぐに料理が出来てしまうところ。
そういう嬉しい時間を断ち切るくらいの感じで、注文が届いてしまった。

こういうご時勢になってから付き合い出したので、
黙食の時間も苦じゃない。
ただ今日の食事中は、
「家族やもんね。」
って言葉が、ずっとリフレインしていた。



っていう綺麗な話で終わればいいんだけれど。
今日書きたかったところは実はここではない。



牛丼が来て、すぐに僕が紅しょうがを山盛り入れたら、
彼女さんが吹き出した。
牛肉が隠れるくらい紅しょうがを入れた僕を見た彼女さん。
もしかして(笑わせようとして)わざとやってる?
「えっ、紅しょうが好きなの言ったことなかったっけ。」
「いや、初耳やし。普段そんな食べんやん。」
彼女さん、食べ始めようとマスク外してたのに、
笑いが止まらなくて再びマスク着用。
突如として、紅しょうが丼を大量摂取し始めた彼氏がツボだったらしい。
「牛丼と焼きそばって、紅しょうが食うもんだって思ってるんよね。」
彼女さん笑いが止まらなくて、いつまで経っても食べ始められなかった。

彼女さんは、僕の細かい好き嫌い完璧に覚えてくれてる。
味噌汁にはわかめと油揚げ以外入れないで欲しい、とか。
だからと言って豆腐が嫌いなわけじゃない、とか。
けど紅しょうがは初耳だったらしくて、すごい笑ってた。

店を出てから、
「今更、新しい好き嫌い知ることになるとは思わんかった。」
って再び笑い出した。
「じゃあ今度カレー屋行こうか。」
「え、カレーも紅しょうが食べるん?」
「さぁ、どうやろね。」

お家カレーでは添え物を嫌うのに、
カレー屋では福神漬けを大量に入れる僕を見たら、
彼女さんはまた爆笑してくれるだろうか。

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