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ビジネスパーソンのための交渉術⑩ WEB会議の威力と情報収集の正しい手順

こんにちは、ビジネスエッセイを発信している松永隆です。
本記事は、拙著『ビジネスパーソンのための超実践的交渉術 日本人の交渉のやり方』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、編集したものです。
前回⑨に続いて、交渉におけるコミュニケーションツールとして新たに台頭したWEB会議の威力について触れます。次に、交渉前の情報集の具体的な手順という領域に入っていきたいと思います。

■WEB会議について

コロナ禍がもたらした数少ない恩恵の中にWEB会議の爆発的な普及があります。それ以前は、設定が面倒くさいとか、相手にそういうネット環境がないとか、もし接続がうまく行かなかったら心配だからとかの理由で私も活用する機会は多くありませんでした。

ところが皆が使わざるを得ない世の中になったおかげで、これは素晴らしいコミュニケーションツールだ、と実感している人が世界中に溢れているのではないかと思います。表に示したように臨場感、利便性においては対面でのコミュニケーションに迫ってきています。

込み入った交渉や会議でも、PCとネット環境さえあれば、いつ、どこからも設定、参加できてしまうことが証明されたのです。

先進国だけでなく、新興国でも問題なくつながることが多いということも認識できました。ひとつだけ課題があるとすればやはり音声がよくなくて、特にお互いが母国語でない英語でのコミュニケーションの場合に聞き取りづらいことぐらいでしょうか? ただ、それも近々テクノロジーが解決してくれるはずです。

また、音声さえしっかりしていれば、複数人の会議で通訳役の人がいれば双方で英語が話せない方が参加しても議論が成り立つことも実体験できました。

仕事のやり方自体に変革をもたらすという意味で、このWEB会議は90年代にEメールが登場した時ぐらいのインパクトがあるゲームチェンジャーだと私は思います。少なくとも今まで海外出張をして対面で行わなければできなかった交渉や会議ができてしまっていることから、アフターコロナになっても国内、海外への出張は一定数減ることはもう確実だと思います。

ビジネス需要が元に戻らない輸送関係の業界の皆さんはお気の毒ですが、その現実を受け入れざるを得ないのではないでしょうか?

以上をまとめますと、交渉の場は最適なコミュニケーションツールを厳選して設定しなくてはならないということです。最適性はその交渉の性質、重要度、参加人数、ネット環境に応じて判断されるべきです。

その選択を誤ると時間と労力が余計にかかってしまったり、交渉そのものがうまく行かなくなることもあり得ます。従って十分な注意と判断力が、個人として組織として求められていると言っても過言ではありません。

■情報収集の手順

交渉前準備の大部分は収集した情報がベースとなります。また収集した情報の厚みと精度が勝敗の分かれ目になることも前述した通りです。そこで具体的にどのように情報を収集したらいいかですが、おおよその手順があるものです。意識しなくてもできている人も沢山いると思いますが、簡単におさらいの意味で触れておきたいと思います。

(1)ネットで情報収集

(2)過去事例を振り返り検証

(3)情報、経験を持っていそうな人にヒアリング。なるべく複数人に聞く。

※(3)でヒアリングすべき人の選定、質問すべき事項も同時に考える。

(1)→(2)→(3)と進むに従い情報の厚みと精度が増していきますが、(1)(2)は基礎データの収集みたいなもので、本当の生きた役に立つ情報は(3)の人に聞くことによって得られるものです。

(1)(2)は(3)を効果的に行うための準備として行うといえばわかりやすいのではないでしょうか。つまり基礎データを収集して理解に努め、もう一歩進んで(3)でヒアリングする人を思い浮かべて選ぶ作業もすることになります。さらに一歩進めて(3)でどのような質問をぶつけるのがいいか考えなくてはなりません。

(3)においてはヒアリングした人に多くのことを話してもらわなくてはいけないので徹底的に聞き上手になる必要があります。的確な質問を繰り出し、相槌をうち、時には感嘆し、気持ちよく話してもらうよう心掛けましょう。

さて一人目のヒアリングを終えた時点であなたはその件に関してはそれなりの知識を持った人になっているはずです。ただそこで満足してはいけません。次のターゲットへのヒアリングにかからなくてはなりませんが、今度は一人目で得た知識により、より深く聞いた方がいいポイントが浮かび上がってくるはずです。それを集中的に聞いてみましょう。

恐らく二人目のターゲットの方はあなたの話しぶり、質問ぶりから、これはかなりのレベルの知識のある人が聞いてきているなと感じるはずです。すると、よりきちんとした返事をしようとするはずです。ここまで来れば十分かもしれません。ただ、まだ時間が許すのであればもう一人別の角度から話してくれそうな人にヒアリングしてみましょう。

直属上司への報連相を兼ねてやってみるのも手です。上司の場合は、「私は当該案件についてこう対処すべきだと思うのですが、〇〇さんのご意見をお聞かせ下さい」という聞き方をするのがいいでしょう。

情報の厚みと精度の上昇曲線

情報の厚みと精度が増していく曲線を想像してみましょう。私のイメージでは[図表1]のような感じになります。

[図表1]

(1)(2)よりも(3)以降の上昇が急こう配になるのです。

ただいくら時間がないからといって、(1)(2)を全くやらないというのは考えものです。(3)においていい聞き出し方ができなくなるからです。最低限の情報を収集して聞き出したい事項、聞き出し方については一通り考えてみるべきです。

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