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理念でつながる世界

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「もしも理念と理念でつながるパートナーシップが当たり前の世界だったら?」そんな問いから生まれたサインコサイン初の短編SF小説シリーズ
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理念でつながる世界 (vol.4 / shop)

洋な雪と和な雪 「アメは夜更け過ぎにユキへと変わるかもしれません。」 伸びをしながら窓の外に目をやると、ぼくの視線を追ってジョンソンが言った。夕方から雨になるとは思えない青空だったがジョンソンがそう言うならそうなんだろう。 じゃあ今夜はクリームシチューかみぞれ鍋だな。 目が覚めたばかりで夕食のことを考えられるのは休日の贅沢だ。 まもなく届くはずの野菜次第できめよう。 ジョンソンが淹れ始めたコーヒーの香りに誘われて布団から脱出した。 食料品のデリバリーサービスなんて、

理念でつながる世界 (vol.2 / residence)

ドーパミンと幸福度 Take it easy. トレーニングを終えてキッチンの冷蔵庫を開けたら、ジョンソンからスムージーが届いていた。その日の体調やトレーニング内容に合わせていつもオリジナルでつくってくれる。昨日若干飲みすぎたと伝えたからか、今日はオレンジとレモンの酸味を強めにしてくれて、タンパク質源であるお気に入りのチアシードも忘れずに入れてくれている。 ドーパミンと糖質で満たされてリビングのソファに横たわる。ジョンソンに感想を送ろうとアプリを開くと、新しい入居希望の

理念でつながる世界 (vol.3 / friend)

友達だったかもしれない 「友達ではありませんか?」 しばらく開いていなかったSNSにアクセスしてみたら見覚えのある名前が表示された。小学校が一緒だったそいつとは、友達かと言われれば友達かもしれないが、もう何年も会っていないし、特別に仲が良かったわけでもない。「友達だったかもしれません」という答えが適切だろうか。 代表取締役という肩書が気になってプロフィールを開いてみる。出身校の欄には自分が第一志望だった大学名が、以前の勤務先には起業家を輩出する企業として有名な会社名が書か