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Day13,「Dune」Inktober2020

 ほんとの旅好きからすればまだまだ少ないのだろうけれど、普通の人から見れば、割とたくさんの国を回った方だと思う。アジア、ヨーロッパは、ボロボロのトランクや薄汚い頭陀袋を担いで、学生時代だらだら回った。インドで騙され、ヨーロッパで感動し、なんなら典型的なバックパッカーをやってきたつもりだ。
今はなんとなく、アラブ系の国に行ってみたいと思っている。
旅の動機は人によって様々だ。そこでしか見られない景色や体験が目当ての人も、物や文化に興味がある人もいる。セックスとクスリだけが目当てな不謹慎な奴も、なんとなくハクを付けたかった、って奴にも出会った。不謹慎とは書いたが、まあ人それぞれの自由だ。誰にも邪魔立てされないが、痛い目見たときは一人で泣くだけだ。

 私はおおかた、その時々の衝動に従って動物的に出立していただけだが、根底には、経験への欲望があった。見たこともないまま、経験もしないまま、知った風な口を利く事のどうしようもない格好悪さが嫌いで、自分が経験した以上のことはなるべく、語るべきではないと思うから、裏付けとなる経験が欲しかったのだ。
意識的にではないけれど、教会やモスクには目につくたびに入ってしまうし、スーパーの安物やいかにも腹を壊しそうな屋台で飯を済ますのも、金がないのもあるが、見たことがないもの、を減らしたかったからだと思う。時間がある旅なら、必ず1日はだらだらただ歩くだけの時間を作るのも、結局は当てどない経験欲の一環だ。日本人は信じないものを信じ、食べないものを食べ、行かないところに行く人々を、余さず見たかった。
結局今も、知らないことを語るべきではないと思うが、どれだけ見たかよりも何をやってるかが大事なんだよなぁ、と思ってもいる。

 いろいろな国は回ったが、語るほどの体験があったかと言われると悩んでしまう。回れば回るほど、つまるところたかが人で、そんなに変わらんのかもしれんなぁ、と思うようになった。基本的な嬉しい、悲しい、楽しい、腹立たしい、の感情が違わない限り、取り立てて言うほど人間に違いはない。
それよりも、ふいに広がる大海原や、空を真っ赤に染めながら沈む夕日や、澄んだ湖に映り込み、地の底に向かってどこまでも落ちていく様に見える青い山々に、ぎょっとさせられたり、感動したり、泣きそうになったりしているかもしれない。

DUNE

[名]C(海浜・砂漠の)砂丘

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