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姫様不在の腐海で考えた

 仕事で半年、大阪に行っていた。例のウイルスが大蔓延している最中である。9月に帰ってきて、やばい事が色々あった。まず、風呂の湯が出ない。9月の頭は水シャワーでも良かったが、中盤からイカれる程寒くなった。わめいてないとシャワー浴びられない。朝から迷惑である。こんなんじゃ入れないと思って初めて、管理会社に電話した。駆けつけた東京ガスの兄さんは秒で修理してくれたから、流石である。

次にやばかったのは、備蓄していたカップ麺にことごとくお迎えが来ていたことだ。カップ麺だぜ?あんなん日持ちすると思うじゃん普通。3月に買っても、あいつら実は半年くらいで駄目になるらしい。一つ食ったら、担々麺は沼の味がした。あったかい沼だ。食べ物を無駄にするのが嫌いだから、とても悲しい。

だが、一番やばかったのは、一番想定すべきだったが、止められ無かったことだ。一見緑色で、遠目には自然派素材の山ガール感があるが、近寄ってみるとくしゃみは出るし不快だし、どうしようもないあれだ。つまり、カビである。

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 靴が好きだから、家に100足くらいある。一年間毎日靴を替えても、一足3日くらいしか履けない。ちゃんと考えれば阿呆らしいが、止められないのだからしょうがない。そんな私の大事なコレクションを、まずカビは食い散らかした。まあ分かっていた事である。

次に、鞄が好きだ。革鞄は、持っていて楽しくなる。仕事に就いてから気づいたら溜まってしまった。これらもカビは、遠慮せず生え倒した。許せと言われればまあ許せるが、許せとは決して言わない。腹が立つ。

許せなかったのは、バカアホボケナスカビ共が、私のスーツまで食い尽くした事である。スーツなんてさあ、生えると思わないじゃん?でもさ、普通に着てたら袖周りとか、脇とか、まあしこたま汚れるよね。でも生えると思わないじゃん!?一片のすきも無いイナゴの様な感じで、奴らはたしかによく考えれば生えるところ全部に生え尽くした。ポケットの口周りとか、生えなきゃ汚れていると認識しない。一つ賢くなった。腹立つ。

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 9月、姫様不在の腐海で、悪態を吐きながら、カビ掃除に励んだ。テトも巨神兵も王蟲もいない。ただただムシゴヤシとか名前の知らないカビだらけ。奴らは醜悪だ。スーツはさすがにどうしようも無いから、全部クリーニングに出した。9着出して、二万円ぶっ飛んだ。割り算すると一着2000円強なのでまあ理解出来るが、夜道で後ろから、棍棒で殴られた気分である。クリーニング屋の眠そうな店員に、じっとりした目で、環境が悪いとまた生えますよ、と言われた。やかましいよ。

人間って、色々だ。多分、ちゃあんとメンテナンスや管理にマメに時間を割いて、大事なものを長く使う人もいれば、使い捨てでバンバン回す非エコロジカルタイプもいる。私は、バンバン使い倒すのに、いつまでも捨てず、しかも碌なメンテもしない、モノ泣かせタイプだ。所有物に命が宿ったら、必ず寝首をかきに来るだろう。

今回の一件は、つまんない気付きをいくつか与えた。まず、家には人間がいないとまずい。風通し、大切。次に、カビはタワシで洗い倒して、天日干しするのがいい。あと、本物の革は、まあ洗えばなんとかなるが、安物や合皮はそこで終わり。最後に、日頃のメンテナンス。大事。ほんとに大事。

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 好きなものは、気づいたら集まってしまう。そりゃそうだ、嫌いなもので自然と集まっちゃうのは仕事の名刺と小銭入れのレシートくらいだ。でも意外と、集める時は夢中なのに、集めた後ほっぱらかしていることってよくある。別に深い事言いたいつもりもないけど、恋愛とかもそうかもしれない。よくわかんない。結局、ちゃんとメンテせずにこうやってカビ生やして、生えた後ギャンギャン言いながら手入れしたり捨てたりするんだから、世話ないよな。

出来れば、カビなんか生える前に、駄目になっちゃう前に、気をつけておきたいよね。気にかけられる人間になりてーな。いやほんとに。

#メンテナンス

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