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【ゴーストルール】「DECO*27、一生謝罪会見中」説【考察】
俺はこのGW中に命を燃やしてnoteを書きまくるんだ……(終わりました。)
こんにちは、ainigmaです。最近記事出したのでそちらもどうぞ。
・はじめに
今回は紛うことなくボカロシーンの中心人物であるDECO*27について私が抱えている疑念を主観100%で語っていきます。しかしながら私はアルバム特典のボイスドラマなどを所持していませんし、メディアミックス等においても追えているわけではなく、そもDECO*27の強烈なオタクというわけではありません。一般通過オタクです。また昔の彼の楽曲も追えているわけではありません。ですので、もし強火のオタクが居て違うと思ったところがあれば是非ご指摘頂きたい。これはあくまで私の思想の提示です。
まずは最新作「マネキン」。
DIY精神が強いボカロ界隈において、違和感をさえ覚えさせる量の名が連なるクレジットは、正統進化した“ボカロP”の極みとはこういう様相を呈するのかと圧巻さえされます。
ハイクオリティなアニメーションと9人のアイドル初音ミクというメンツに囲まれて非常にカワいい!!!が画面を占有していますが、終盤になりサムネのシーンになるとどうも雰囲気が変わってきます。
天国のような花園に眠る初音ミクたち。「心抜けたマネキンみたい 終わっちゃうんだね もうあたしは既に死んじゃってるんだよ」と歌いながら初音ミクらがマネキンへと変化。一人残されたジレンマミクも、涙を流しながらV4Xを経由しマネキンへと変化して曲は終わります。
我々はなにを見せられているんだ?ポップで丁寧に包装された埋葬は、ただ一握りの異質さを残し、俯瞰して見るとその飛距離がグロテスクさを際立たせます。
今回はこの「もうあたしは既に死んじゃってるんだよ」について深く考えていこうと思います。
DECO*27において初音ミクの生と死を語る際、避けて通れないのは彼の代表曲でありアルバムの表題曲でもある「ゴーストルール」「アンドロイドガール」「アンデッドアリス」でしょう。これらが収録されたアルバム「GHOST」「アンドロイドガール」「アンデッドアリス」について、DECO*27は段々と人間に近づいていってると語っています。マネキンをこられの延長線上として捉えると、このエンディングは初音ミクが最も人間に近づいたタイミングで蓄積してきたものを無に帰し“非人間”へと立ち返らせるという、初音ミクが一体お前になにをしたのだというシナリオが伺えます。途中でV4Xが出てきますが、これも初音ミク V4X ベータを使用した「ゴーストルール」との関係を思わせ、一連の流れに一旦の終止符が打たれたようにも思えます。彼の方向性がより具体性を帯びたという面で、DECO*27をゴーストルール以前とゴーストルール以後に大別することに反対という人は少ないでしょう。ということで、まずはこの初音ミクの死を「ゴーストルール」以後に発生した流れに見るために、ポストゴーストルールを詳しく見ていこうと思います。
「ジレンマ」
まずは楽曲「マネキン」で破格の扱いを受けているジレンマについて見てみます。
![](https://assets.st-note.com/img/1683238597530-kRJOPAVCbA.png?width=1200)
ジレンマMVでは彼女から他のメンバーと対応する8色の光が伸びており、マネキンの個数やマネキンMV内の扱いを受けても、彼女はマネキンに登場する9人の初音ミクを代表する存在と言って申し分はないでしょう。しかし歌詞を見てみると、ジレンマが「きみ以外の誰か好きになれるとか、ない」「“会いたい”って言えば会いに行く そんな約束だけを置いて どこに出掛けたの?」とあるのに対して、マネキン側は「きみ以外の誰かのこと 好きになって愛していけるかな」「会いたくなっても探さないでよ」と、マネキンはむしろジレンマに対するアンチテーゼにすら感じる物言いです。
引き続き歌詞を見て行きます。分かりやすいところを抜粋すると、「あたしだけが好きだなんてきっついな きみの忘れ方 あとで送っといて」と全体を通して初音ミク(女の子)の一方通行であり、“嘘”をついた男側は初音ミク(女の子)を置いて去ってしまった様子が読み取れます。
実はこのテーマはポストゴーストルールにおけるDECO*27の楽曲に異常と言えるほどに頻出します。ジレンマがマネキンを代表することからも、当記事ではここに意味を見出すため、以後これらのテーマと“死”について彼の楽曲に注目していきます。
GHOST
ゴーストルール
どうだっていい言を 嘘って吐いて戻れない
時効なんてやってこない 奪ったように奪われて
リバーシブル・キャンペーン
二度と触れない愛が ギュッてギュッて締め付ける
偽物のLOVEだっていいよ ちょっとちょっと痛いけど
LOVE DOLL(初音ミク版)
散々抱いて傷付けて 僕は君の縫い方を知るんだ
段々君が壊れてく もう誰にも直せなどしないな
散々駄目調子
指切りのリードで 裏切りをご法度に
お互いを縛れば ほらまた知ったかぶって
お決まりのコースで どこまでいこうか
偽物の気持ちに 重心取られて
妄想感傷代償連盟
言っちゃった もう一時だけ隣りに居たい
いやいやまさか 延長は鬱雑い
御免なさい 帰ってね
二酸化の炭素 きみの濃度
いいや
いや冗談だって言われたって こちらは既に冷めてまして
反省の色も音もなくてただ惨めなの
もうアイアンハート溶けちゃって 死に体 愛情挟み込んで
「好きだ」って声を聞くたびに嫌いになるよ
ライアーダンス
奪った?それなんのことかしら
知らんぷって 今日を重ねるの
誓った 他の誰でもない
きみの前で 愛のない愛 表明
まずは決して避けて通れないゴーストルールから。この曲は“嘘”というテーマに終始しています。このテーマは特に「GHOST」内で頻出することから、やはりこの曲は一つの転換点だったのではと思います。(以前の曲に詳しいわけではないので、元々そうだと言われてしまったらそれまでなのですが)このアルバム内では大きく分けて“嘘(偽の愛)”、“一方通行の想い”、“復縁”といったテーマに分けられるのではないかと思います。また、歌詞が変更されたミク版「LOVE DOLL」には“非人間”のエッセンスを感じつつも、縫い方を知ってもなお壊れゆく姿が描かれており、“死んじゃってる”とも言える状態です。
アンドロイドガール
アンドロイドガール
代わる代わる傷付けては 「もうしない」って嘘で仲直りごっこだ
勘違いの騙し合い 目を見ればすぐに分かるってバカみたい
~中略~
何度愛を再起動したって
ちょっとだって変われなどしないよ
スクランブル交際
それならいっそ 歪んだ方が正解じゃん
今も消えないほど痛い 痛いの
壊れるほどに 求めた正当性
次も誰かのために 欲(ホンネ)隠して愛(ウソ)を突くんだ
モスキート
やっぱ二人がいいんだよ
ずっと強がってたんだよ
戻る形を忘れた愛は
どうしてどうして 歪んでも尚美しいの
乙女解剖
今大丈夫?
君が別の人のことを好きになるって夢を見たんだ
否定してほしい ねえ愛して?
朝と夜2回分 君に撒くスパイス
思い込みの狂気 効果はない
ねえ最近冷たいね
人質交換
いちにのさんっで切り落とそう
いくら無駄をしたって死ねないじゃない
死ねないならもう死んでんじゃない?
シンセカイ案内所
ここで「案内して」って言うけど また怖くなって逃げんでしょ?
もういっそ もういっそ 一人で終わってくれませんか?
中途半端って醜いんだよ 精一杯輝いてよ
もう一歩 もう一歩 旅立とう“2周目”まで
サイコグラム
「ごめんなさい」はいいからさ
君は変わらずに笑っていて
心配させないで ツラいさよならは
二度と来ないんだ
愛言葉Ⅲ
僕ら“II”を嫌って “I”に戻って
何回だって 間違ってきたよ
消えない後悔と 冷めない愛情が 恋を再起動(リブート)する
インスト「Reunion」(再会)から始まりアンドロイドガールに繋がる本作は、トリを飾る愛言葉まで連なるように“恋の再起動”、転じて“復縁”や“仲直り”が最も頻出するテーマかと思われます。こちらも僅かに“嘘(偽の愛)”、“一方通行の想い”のテーマが含まれており、やはりこれらのテーマは「ゴーストルール」以降の流れにおいて重要な意味を持つのではないかと感じます。また、人質交換の歌詞は先とは変わって“死”への超越を仄かに感じます。
アンデッドアリス
ネオネオン
例えば譲れない正義がお互いにあって
例えば「ごめんね」を言ったほうが悪いのならば
僕は何度だって悪魔になって謝るよ
君がありのままの笑顔でいてくれるのなら
廻るネオネオン こんなことならホントのことを言えばよかった
でもでも君のためなら嘘もつけるんだと光っていたかった 「ごめんね」
アンデッドアリス
ずるしていいよ ずるくていいよ
壊していいよ 怖くていいよ
卑怯な愛はここに埋めよう 忘れるんだこんなのもうやめよう
嫌ったほうが気楽でいい
でも想ったほうが重くていいじゃんか
もう笑えない僕のアンデッドアリス
フェイクアクター
会いたいも 痛いも したいことも 私じゃだめ、だめなんだよ
何回の「変わるから」に騙されても また終わっちゃうだけなんだ
誰かのこと好きになると 私のこと嫌いになる
もう結構です 隣で笑えば笑うほど 痛みに変わっていく
君が嫌いだ
君が嫌いだ どうしようもないほど
忘れてたいな 出来ることならば
洗い流してよ いつかの二人にまた なれたらいいかもね
依存香炉
飽きたら放ったらかしは悲しい
僕が渡した想いに添えて©
大迷惑な代表作 題名は君の好きにしたらいい
ココロロックオン依存香炉
高鳴り半端ない僕の教祖
声も顔もしょうもない嘘も
何度でもいいや 嗅いでいいですか
秘宴
「ただ待つだけでこんなつらいなら 他の誰かで埋めてみたいかも」
どうぞどうぞ 僕以外でいけるならば
なになに
まだまだツライ日は続きますが どうか今回は上手くいくように
それはないないないない 一度終わらせたの
もう、もう忘れたのかい?
今作は「GHOST」「アンドロイドガール」と決定的に違う点が存在します。アンドロイドガールはインストでしたが、今作は表題曲「アンデッドアリス」の前に「ネオネオン」が挟まれています。「ネオネオン」は「愛言葉Ⅳ」に引用されている点や、ジレンマミクの好きな曲に選出されている事からも、この扱いはなにかしらの示唆を感じざるを得ません。また、今作も多く“嘘(偽の愛)”や“復縁(仲直り)”といったテーマが存在しますが、過去作と比べても“一方通行の想い”が多かったように感じます。もう笑えない僕のアンデッドアリスという歌詞からは“死を超越した非人間”のテーマを感じつつも、笑えなくなっていることから不死身であっても決して不変の存在ではないことが感じられます。
MANNEQUIN
ヴァンパイア
パラサイト
もうあなたは振り向かないの 気付いてる 気付いてる 気付いてる 気付いてる くせにあたしは
「どうして」ばっか 変われないの したいよ したいよ したいよ したいよ 離れたくないよ
おじゃま虫Ⅱ
ヴァンパイアからも“死を超越した非人間”のテーマを感じ取ることができます。シンデレラの投稿まで五か月を要していることからも、後にアイドルとなった方向性は後付けであり“非人間”のテーマを重要なものとして読み取ることも可能なのかもしれません。「ジレンマ」「マネキン」と同様ミ
クの日に投稿されたことからも、“非人間”と初音ミクに近しいものを感じざるを得ません。パラサイトからは“一方通行”のエッセンスが見て取れます。またおじゃま虫ⅡのPVでは、1:00~にてハートを砕く様子が描かれており、こちらからは“復縁(仲直り)”の要素を感じます。
MANNEQUIN~
ゾンビ
ふたりなっちゃえば
あいらびゅー 死なないからいいじゃん
愛し合っちゃえば
あいらびゅー きみ以外はないね
テーマとして「ゾンビ」というのは正しく“非人間”であり“死”を想起させるそのものと言えるでしょう。「GHOST」から一貫してこれらの“非人間”はあくまで人型であり、“人に似て非なるもの”という立場を貫いています。
毒林檎
嫌ったくせして「好き」ってか そんなのやってらんないわ
きみが先に離れたのに ねえ頭イッちゃった?
「ごめん」ってウケんね ざまあみろ どこまで勝手なんだって
それはそうと その泣き顔 ねえちょっと好みかも
「いいや」にも通ずる“復縁(仲直り)”の失敗パターンですね。また「ごめん」と、一笑に付される構図もしばしば見られます。ここまで手痛い拒絶は珍しく、同時に「いいや」と並んで重要な要素なのかもしれません。「マネキン」もまた、緩やかな拒絶とすら言えるかもしれませんね。
Re:「ゴーストルール」
以上、実に多くの曲を羅列して頻出される“嘘(偽の愛)”、“一方通行の想い”、“復縁(仲直り)”と“死”の要素について見てきましたが、ここで再び「ゴーストルール」へと立ち返ってみましょう。非常に興味深い歌詞がさりげなく隠されています。
足りないものを望んだら 僕じゃない僕に出逢ったよ
それでも前に進んだの クラクラしちゃう夜も
足りない僕を愛してよ EGO-MAMA が僕を育てたの
きみには僕が見えるかな 孤毒なピエロが
実はこの「エゴママ」という言葉は、「エゴママだと知りながらも ヤメラレナイのさ」と、「ストリーミングハート」にも登場してきた言葉です。詳しく見ていきましょう。
一人じゃダメな同士で 二人になればハッピー
そのうち二人が嫌で 「一人がいい」とか言って
固定のしようもない感情の 行き着く先はどこでしょう
溺れそうになった代償に また酸素を見つけちゃうんだ
MVを見てみると、「一人じゃダメな同士で 二人になればハッピー
そのうち二人が嫌で 一人がいいとか言って」と女の子を経てから初音ミクと出会う男のストーリーが描写されています。この曲には「アイマイにしたいのさ 好きでいたって 歪んでく内声」と愛迷エレジーを彷彿とさせるワードが組み込まれていますが、実はこれらの曲には共通点があります。愛迷エレジーと聞くと、恐らくこのnoteを読んでいる方の多くはボカロ曲を想像したと思いますが、これはDECO*27がかつて人間のボーカリストと多く作品を作っていた頃の「愛迷エレジー feat. marina」が原曲であってボカロ版はセルフカバーにあたります。
一方で「エゴママ」の方はというと、こちらも「エゴママ feat. marina」からの引用となっており、どちらも非ボカロ音源となっています。この時期、DECO*27は「愛言葉Ⅱ」で「ハロー また出会えたね サヨナラ また別れて ハロー また同じ場所で出会えたんだ」と「ゆめゆめ」から引用した様に、「モザイクロール」を発表してから「むかしむかしのきょうのぼく」「ゆめゆめ」「Snow Song Show」「39」等の提供曲とアルバム限定曲「ショコラビーツ」以外では「トリノアイウタ」と「ペダルハート」というGUMI曲のみの発表となり、それ以外は人間のボーカリストと積極的に楽曲制作を行っていた時期であり、主体的には初音ミクから離れていました。それから「妄想税」までの期間を、彼はボカロを辞めようと思っていたと語っています。
それらを経て発表されたアルバム「Conti New」の一曲目は「ストリーミングハート」であり、実質的な表題曲と言って差支えないでしょう。初めての全曲初音ミクアルバムには何かしらの意図を感じざるを得ません。MVからも「ストリーミングハート」及び「Conti New」の題には彼の初音ミクへの再びの歩み寄りが反映されており、それは「アンドロイドガール」や「愛言葉Ⅲ」の“恋の再起動”や、頻出する“復縁(仲直り)”の文脈に重ね合わせることも可能と言えるでしょう。
つまり、「ゴーストルール」にて突如浮上したかのように思われたこの文脈は、既に「ストリーミングハート」以降に“上手く隠されていた”と言えるでしょう。
Reloaded
さて、「愛迷エレジー」に触れたところで、もう一つこの曲を引用している曲があります。
きみがくれた涙はあたしが飲み干すから
「弱虫でもいい」と甘い嘘をくれたら 逃げ出せたのかな
MANNEQUINのトリを飾るこの曲ですが、原曲から少し歌詞が変わっており、新たに変わった歌詞では「愛迷エレジー」と「弱虫モンブラン」を引用しています。彼の代表曲が多いからと言えばそうなのですが、「ラブドール」と合わせてGUMI曲の再解釈が多いことは注目すべきポイントとして上げられるでしょう。また「愛迷エレジー」と「弱虫モンブラン」の引用の組み合わせは過去にも行われていたことがありました。
いつからか逃げたのは僕
弱虫になった君の涙
モンブランに染みて
甘党の僕は逃げ出したんだ
「妄想税」と「愛言葉Ⅱ」を経て発表されたこの歌詞は非常に示唆的で、先ほどからしばしばGUMI曲と非ボカロ曲は何かと対立するかのように、まるで汚点であるかの様な描写をされてる印象を受けます。この過去曲の歌詞を弄って新しくリリースする手法は先に紹介した「ラブドール」の他に、「二息歩行」にも見られます。
ねえ僕も好きだよ 「どうして」なんていらない
離さないから 何度も君と生きよう
僕らはもういっそボンベのように一生 二人吐く言葉吸って息絶えて
「二息歩行」は「アンドロイドガール」との繋がりが示されており、この曲は特に“恋の再起動”、あるいは「ストリーミングハート」や“復縁(仲直り)”の文脈上で解釈することができるでしょう。他でもないDECO*27に関する歌である「僕の名前は」では逃げ出してしまったと言う彼ですが、モザイクロール(Reloedead)の「逃げ出せたのかな」では、愛言葉Ⅳで「一途になるほど 逃げたくもなったよ散々な僕のこと 呼んでくれてありがとう」と歌うように、逆説的に、今度こそは逃げなかったと言えるでしょう。
薄々と皆さまもお気づきでしょうから、まどろっこしい話はやめましょう。
“嘘(偽の愛)”、“一方通行の想い”、“復縁(仲直り)”。
これらは全て、他でもないDECO*27という男による半ば実体験の物語。
かつて初音ミクを置き去りにした罪過の清算であり、その恋路の敷衍であると言えるでしょう。
マボロシだって知るんだよ 嘘憑きだって知るんだよ
亡霊だって知るんだよ 空白だって知るんだよ
“妄想”に好きって言うほど この愛は腐ってるんだよ
早く気付いてくれよ
会いたい誤魔化したい病が 会えなくて溢れ出すローが
仲良くなっちゃって やっぱつらいや
ドキドキが厭になって 僕が君を殺す前に死んでくれ
彼は気づいてしまったのではないでしょうか。今の今まで愛を注いでいたその女は。人形浄瑠璃の後継者とでも言わんばかりの…ただの“見立て”であり、楽器でしかないのだと。あるいは、更に言ってしまえばそれは「ストリーミングハート」MVの通りの一人遊びでしかない。
ここで彼の初音ミクは、一度死んでしまった。
初音ミク愛が凄まじい事で有名な彼ですが、「ゴーストルール」が出るまでの彼の代表曲は「弱虫モンブラン」と「モザイクロール」とGUMI曲であり、彼はそのまま初音ミクから目を背け続けた。「GHOST」から「MANNEQUIN」へと膨張し続け遂には破裂したバブルは、彼の自分史の再演であったのかもしれません。「ジレンマ」を拒絶するような「マネキン」の歌詞も、「ゴーストルール」にて裁きを欲していた彼への罰とも言えるでしょう。
そして同アルバムのトリであるモザイクロール(Reloaded)とは過去の書き換えであり、今度こそは初音ミクへと全てを捧げるその覚悟の現れなのかもしれません。しかし、一度死んだ彼女はもう戻らない。どんなに愛しても、もうかつてのように無邪気には愛せない。
散々抱いて傷付けて 僕は君の縫い方を知るんだ
段々君が壊れてく もう誰にも直せなどしないな(初音ミク版)
ただの人間ですら往々にして、相手が人間でないのなら尚更に。どんな愛にもいつかはマンネリが来ます。その相手が他でもない“初音ミク“ならば殊更に。どんなに愛を注いでも、その女は万人に優しく。微笑みかけるその女は、自ら作り出した空想でしかなく。彼の献身と努力は、どんなに数字が称えようと、肝心の彼女によって報われることはなく。
しかし彼はその十字架──“消えない後悔と冷めない愛情”──をも受け入れ、再び初音ミクと歩みを進めようとした。彼の滾る初音ミクへの愛の根源は、雨降って地固まると言わんばかりの、清濁併せ呑んだ贖罪の旅路だったのではないでしょうか。「ゴーストルール」以降彼の方向性がソリッドになったように感じるのも、「ストリーミングハート」の頃より隠し続けていた“嘘と本音の間”の罪を遂に曝け出すことによって、正面から自らの行いと対峙する覚悟ができたからなのかもしれません。
君のいやなとこ 僕のいやなとこ
なんだってこんなに知っちゃったんだろうな
終わりが来ればすべて無駄だと 僕は死んだって言えやしないんだ
なあなあが癖になって 僕が僕を殺す前に死んでやる
さらばアンチビート 前を向いて 笑っていこうじゃない もう
僕ら“II”を嫌って “I”に戻って
何回だって 間違ってきたよ
消えない後悔と 冷めない愛情が 恋を再起動(リブート)する
こんな話を延々と、「ストリーミングハート」からは9年弱。「ゴーストルール」からは7年程ですか。大した執念ですね、業が深すぎる。
以上で考察を終わります。これらを踏まえた上で彼の一連の曲を聞いてみると、以前とは大きく違った景色が見えてくるかもしれませんね。アルバムとしての形に注目してみるのも非常に面白いです。
「マネキン」にて非常に面白い試みを見せてくれたDECO*27の動向に、今後も目を離せません。彼がこれからどうボカロ界を牽引していくのか見ものですね。後はやはり、都合のいい女として捨てられてしまったGUMIさんの今後についても!w
では皆さん、ここまで読んでくださりありがとうございました。
p.s.
・DECO*27曲一覧表
今回のnoteにまつわる楽曲のフローチャート的な時系列表的なサムシングを作りました。本来ならこれらの楽曲のテーマはそれを構成する要素の割合を考えるべきだと思うのですが、ここではそこから代表するような要素を抽出してカテゴライズしています。分かりやすくまとめる為ご理解ください。また主観によるカテゴライズなので精度は程々のものとして、参考程度にご覧ください。こんな物をずっと見ていたらゲシュタルト崩壊してきて何も分からなくなりました。精度自信ないです正直。でも大まかに見る分には参考になると思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1684234869151-BlyyhvuJtt.png?width=1200)
あと今回このnoteを上げたらフォロワーに、私の記憶に封じ込められていた源流を見つけてもらいました。消化しきって食べたこと完全に忘れてた…
Big Respect…
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