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【WBC 2023】準決勝 日本vsメキシコを振り返る

野球って、こんなに凄い!こんなに感動できるんだ!
普段野球を見ない人にも、その魅力が十二分に伝わった一日。

WBC(World Bassball Classic)2023。
準々決勝でイタリアを下し、次なる舞台はマイアミ、ローンデポ・パーク。
相手はプールCを首位で勝ち上がり、プエルトリコを下して準決勝まで上り詰めたメキシコ。

いよいよ、スタメンがすべてメジャーリーガーのチームと対戦します。
日本からの長旅、慣れないグラウンドやマウンドで相手にするのは世界最高峰の選手たち。
日本代表はどのような闘いを見せてくれるのか?

それにしても、会場がすごい!
ローンデポ・パークはマイアミ・マーリンズの本拠地で、全天候型の野球専用スタジアム。
屋根が開閉式でオープンエアーな状態でも試合が可能。
外野席後方がガラス張りになっていて、まだ明るいうちはそこから光が差し込む。

今年オープンする「エスコンフィールド北海道」と同じような形のスタジアムですが、ローンデポ・パークがオープンしたのは2012年だとか。
エスコンフィールドの完成予想図を見た時、「こんなスタジアム見たことない!本当にできるのかな?」と思っていましたが、いざ形になってみると想像以上にすごい!
是非一度は訪れたいスタジアムですが、それより10年も前からこんなコンセプトの野球場があるという事に驚きました。さすがはエンターテインメントの国、アメリカですね。

メキシコの先発はエンジェルスで大谷のチームメイトであるサンドバル。
普段はキャッチボールなどをする仲のようですが、今日は敵同士。
お互い真剣勝負を楽しみにしていると思いますが、メジャー屈指のピッチャーに日本打線がどれぐらい通用するのか?
対する日本の先発は佐々木朗希。
160キロを超える速球の持ち主が、メジャー打線相手にどこまで抑えられるかが注目です。

0(ゼロ)行進が続く投手戦が予想されるこのゲーム。勝つのはどちらか?
プレイボールは日本時間で午前8時からですが、幸い祝日なので多くの人が朝からテレビに釘付けになったことでしょう。
私も同じです。朝食を作る手が何度も止まったほど。

さあ、多くの野球ファンに感動を与えてくれた、スペクタクルな試合を振り返っていきましょう。

サンドバルvs佐々木。世界レベルの膠着した投手戦

先行はメキシコ。ローンデポ・パークのマウンドに佐々木朗希が上がる。
メジャーも注目する若きピッチャーは、アメリカのマウンドでも物怖じせず、いつも通りのピッチング。
早々に160キロ台の球を連発。メキシコ打線を沈黙させる。
相手ピッチャーはストレートには手が出ず、鋭く落ちるフォークにバットが空を切る。
あっという間に三者凡退。

対するサンドバル。
画面から見るとそこまで大柄な選手ではないが、こちらも鋭い球を投げてくる。
150キロ台の速球を投げたと思ったら、130キロ台の変化球で揺さぶりをかける。
まるで、日本のピッチャーを見ているような、緩急織り交ぜながらのピッチング。
今まで対戦してきたピッチャーとは一味違う。
侍打線もすっかり翻弄され、塁に出る事も難しい。

素晴らしいピッチングの両者。
予想通り、3回まではスコアボードに0が並ぶ。
ヒリヒリするような投手戦。この緊張感を打ち破るのはどちらか?

4回表。捕まったのは佐々木朗希の方だった。
4番テレスにヒットを打たれると、5番パレデスの打球がサード方向に中途半端に飛んでしまい、村上が手を伸ばすも捕れない。
ランナー1、2塁で6番ウリアス。
少し浮いてしまったストレートを見逃さず、あっという間にセンタースタンドへ持っていかれた!
先制の3ランホームラン。やはりメジャーのバッターはパワーが違う…。
これで崩れてしまうか、と思いきや、その後をしっかり抑えて3失点でこの回を終えた。

「試合の流れ」を奪い合うハイレベルな攻防

その後も侍打線はサンドバルを攻略できずにいた。
5回裏、岡本のセンター方向への特大打が飛び出す!
ホームランか!?と誰もが思ったが、レフトのアロサレーナがフェンス越しにジャンプ!見事にホームラン級の球を捕ってみせた!
なんというファインプレー!
アロサレーナはその場でドヤ顔!これがメジャーのプレーか!?

しかし、このプレーで流れがメキシコに傾く。
相手ピッチャーが交代し、日本も牧を代打に送ってチャンスを作り、ヌートバーがしっかりフォアボールを選んで満塁にするも、近藤健介がレフトフライに倒れ、反撃の糸口がつかめない。

日本のピッチャーは5回表から山本由伸がマウンドへ。
佐々木朗希並ぶ注目のピッチャーが同じ日に登場。どうしてもこれ以上点を与えるわけにはいかない。

山本も佐々木同様、アメリカのマウンドで貫禄のピッチング。
球のキレもいつも通り。試合の流れを早く自分たちの方へ持っていきたいメキシコ打線を翻弄。

6回表。先発マスクの中村悠平に代打が出たため、甲斐に交代。
7番トレホがフォアボールを選んで塁に出る。
続くトーマスが三振に倒れると同時に、トレホがセカンドへ走る!
しかし相手は甲斐。アメリカの地で「甲斐キャノン」が炸裂!鋭い送球がショートの源田の元へ。
しっかりキャッチしてグローブをトレホの体にタッチしようとするが、体をよじらせて源田のグローブをかわす!
何という身体能力!右手でベースを触って判定はセーフ。

しかし、栗山監督からチャレンジが。
ビデオ判定に持ち越された。
かなり長い間判定の時間がとられたが、審判が出てくると判定が覆ってアウト!
試合の流れは絶対に渡さない!パ・リーグを代表するプレイヤーの気迫のこもったプレーだった。

嫌な流れを断ち切る4番の一打!

先制こそしたものの、佐々木朗希→山本由伸のリレーで追加点が奪えないメキシコ。
再三チャンスを作るものの、あと一歩届かず点に結び付けない日本。
膠着状態のまま迎えた7回裏。
甲斐、ヌートバーが共に倒れて2アウト。
バッターは近藤健介。5回から続けて投げているアルキーディからライト前へヒット。
続くバッターは大谷。ここでピッチャーがロメロに交代。
しかし、なかなかコントロールが定まらず、大谷がしっかりフォアボールを選んでランナー1、2塁。
得点圏にランナーを進め、叫ぶ大谷!

そしてバッターボックスには4番、吉田正尚。
内角低めの変化球を救い上げるようにミート!打球は高々とライト方向へ。
ファウルか?ホームランか?
スタジアム中が見守る打球は、ギリギリライトスタンドへ!

値千金の3ランホームランで同点に追いつく!
これで試合の行方はわからなくなった!

山本も打たれた!若き二人に降り注ぐ試練

吉田の3ランで勢い付く日本ベンチ。
8回も山本が続投。しかし、ここで捕まってしまう。
バーンズは三振に討ち取ったものの、続く1番アロサレーナにツーベースを献上。
6回のファインプレーに続き、この回のヒット。得意の腕を組むポーズでメキシコベンチへアピール。
続く2番ベルトゥーゴにもストレートをセンター方向に運ばれ、2点を献上するタイムリーツーベースを被弾。

プレッシャーのかかる場面で打ち込まれてしまった。
負けたら最後の大一番。栗山監督は山本を信じ、次の打者も続投させるが、続くメネセスにもヒットを許してしまう。

ここでピッチャーは湯浅に交代。
メネセスに盗塁を許してしまうが、テレスを三振に討ち取る。
しかし5番パレデスにまたもタイムリーを打たれてしまい、1点献上。
2塁にいたメネセスもホームに飛び込むが、好返球に阻まれてアウト。
2失点で何とか切り抜けた。

佐々木朗希、山本由伸共に、慣れないマウンドにも関わらず好投したが、長打を浴びて大量失点を許してしまった。
ペナントレースではよくある事ではあるものの、一発勝負ではかなり痛い失点。
すぐにでもメジャーで活躍できると太鼓判を押されている二人だが、この大一番で悔しい投球内容だった。
しかし、これもいい経験のひとつ。これを糧にまだまだ国内で多くの経験を積んでほしい。いずれ日本を離れてアメリカで活躍する日が来るだろうが、その時はメジャーのバッターの前に立ちはだかる強力なピッチャーとなって活躍を見せてほしい。

8回裏。
メキシコのピッチャーはロメロからクルーズへ交代。
先頭打者の岡本がデッドボールを受け1塁。
続く山田哲人にヒットが飛び出し、ランナー1、2塁。
ノーアウトで得点圏にランナーを置き、続く源田はバントの構え。
しかし、コントロールが定まらないクルーズの投球に手を焼き、ようやくバントで二人を進塁させる。

ここで甲斐に代わって、代打は山川穂高。
緊張する場面での代打だったが、しっかりレフトへの犠牲フライを打って1点を返した。

8回まで1点差の大接戦。
9回をキッチリ抑えて、その裏でサヨナラを狙いたい。
マウンドには絶対的ストッパー、大勢が上がる。

”村神様”がもたらした歓喜の瞬間!

甲斐に代打が出たので、キャッチャーは大城。
いつもジャイアンツでバッテリーを組む二人。
場所こそ違えど、慣れない場所で大勢にとっては安心材料だろう。
岡本の代走で交代した中野がセカンドに入り、山田がファーストへ。

緊張の場面でマウンドを託された大勢。
いつも通りのピッチングでしっかり抑える。
ひとりデッドボールを与えてしまったが、その後もきっちり無失点で抑えた!
さすがはジャイアンツのバッテリー。いつも通りの仕事ぶりだが、この大一番では大きな貢献だ。

サヨナラを期待し、日本中が固唾を飲んで見守る9回裏。
メキシコもクローザーのガイェゴスにマウンドを託す。

先頭打者は大谷。
初球、ちょっと浮き気味のストレートをしっかりミートしてツーベース!
走塁中にヘルメットを投げ捨てながら渾身の走りを見せる大谷。セカンドベースで叫んだ!

たった1球で得点圏にランナーを置いた日本。
続く吉田。7回同様長打が期待されたが、しっかりフォアボールを選ぶ。
一塁に進む前に、ネクストバッターズサークルへ合図を送る。
「お前に託した!」と。

1塁に進んだところで、代走は周東佑京。
俊足を誇る走塁のスペシャリスト。
足で揺さぶることもできるし、同じ外野手の交代となるので、同点に追いついた後のタイブレークをも見据えた交代。

9回裏無死1、2塁。
ここで迎えるバッターは、村上宗隆。
昨年の三冠王も、今大会は苦しい内容。
自然と顔色も暗くなり、故障で代表を辞退した鈴木誠也からも「顔を上げてがんばれ!」とSNSでエールを送られた。

今までの打席同様、今回もダメかもしれない。
しかし、チームの明暗を左右する打席は数多く経験してきたはずだ。
日の丸を背負った相当な重圧がかかる局面だが、村上ならやってくれるはず。

日本中のファンが祈る。
頼む、村上!打ってくれ!!

みんなの声が若き三冠王に届いた!
鋭いスイングがガイェゴスのストレートを捉える。
打球はセンターのフェンスを直撃!!

スタジアム中、いや、日本中が大声援を送る中、大谷と周東が走る!
まず大谷がホームイン。
その後ろをものすごい勢いで追いついてくる周東の俊足。
相手の返球も間に合わない。
ホームへスライディングを決めると、既に日本の選手たちはベンチから駆けだしてきていた。

大谷を、周東を、そしてセカンドベースを走り抜けた村上に駆け寄って迎える侍ジャパンメンバー。
スタジアムに轟く大歓声。選手たちも喜びを爆発させる!

村上のタイムリーツーベースで逆転サヨナラ勝ち。
これほど劇的な終幕は誰が予想しただろうか?
祝日の良く晴れた朝、”村神様”が放った神の一打に、日本中が大歓喜に沸いた。
もちろん、私もテレビの前で絶叫したのは言うまでもない。

思い出すのは、2009年のWBC決勝。
それまで安打が出なかったイチローの値千金のツーベース。
その時を彷彿とさせる、村上の復活打。
やはりWBCという大会には「何か」がある。

劇的な幕切れで悔し涙を飲んだメキシコ。
1次ラウンドでアメリカに大賞する金星を挙げたが、「互角の相手」日本の前に屈する結果となった。
今回は一発勝負だったが、日本シリーズのような7試合制だったらどちらが勝っていたかわからない。それぐらい実力が拮抗していたと思う。

出てくるピッチャーも下馬評通り、ものすごく高いレベルだった。
打者も好調だったアロサレーナを始めとして、強力な打線。佐々木や山本の速球をいとも簡単に打ち返してしまうところは、さすがメジャーリーガーと言ったところ。

一発勝負が生んだ好ゲームだった。
正に歴史に残る激戦。
好ゲームを繰り広げてくれたメキシコ代表を称えたいと思う。

遂に決勝へ。世界一奪還なるか!?

決勝戦は3/22。相手は準決勝でキューバを下して決勝に上り詰めたアメリカ。
前回大会、日本が準決勝で敗れた相手。
アメリカはそのまま優勝。ようやく野球母国の面目躍如となった大会だった。

東京オリンピックではアメリカに勝って金メダルを獲得したが、その時とは全く別のチームと言ってもいい。

アメリカ代表なのだから、構成する選手は当然メジャーリーガー。
大谷のチームメイト、トラウトを中心に、野手陣は相当豪華な顔ぶれらしい。
日本の投手陣はどのように攻略するのか?

ただ、メジャーリーグのチームの多くは、先発投手を代表に取られるのを嫌うらしく、他の強豪国と比べて投手陣に難があるとも言われる。
普段からメジャーリーグをあまり見ていないので、選手の情報も詳しくはわからない。
キューバ戦では、元ジャイアンツのマイコラスと元ソフトバンクのデスパイネが対戦した、という話題をTwitterで知ったぐらい。マイコラスはジャイアンツを自由契約となった後、カージナルスと契約したらしい。ヌートバーのチームメイトだったのか…。

とにかく、泣いても笑ってもこれが最後。
準決勝のように総力戦でアメリカに挑んでほしい。
メキシコと五分の戦いを制したのだから、アメリカ戦でも同じように闘える実力は備えていると思う。
難しい闘いになると思うが、最後にあのトロフィーを掲げる姿をまた見たい。

現地には7球団から有志の応援団も現地へ駆けつけ、いつものトランペットの音色がローンデポ・パークに響いた。
記憶では今までこんなことはなかった。応援団の行動に感謝したいし、決勝も盛り上げてほしい。
日本でプレーする時の環境に近づけてくれて、きっと選手達も心強かっただろうと思う。明日も同じように選手達を鼓舞してほしい。

決勝の日が平日なのが恨めしい。どうせなら土日にやってほしいのに…。
とにかく、今大会のために集まった最強侍ジャパンの最後の闘い。楽しみで仕方がない。

タイトル画像は、侍ジャパン公式Twitterより使用させていただきました。
歴史に残る劇的な村上の一打!全選手がフィールド上で喜びを爆発させた瞬間の一枚。今日のヒーローは間違いなく“村神様“ですね。

【お知らせ】
WBC2023の記事をたくさんの方に読んでいただき、ありがとうございます。
過去の記事をまとめるために、新たに「スポーツを語る」マガジンを作りました。
WBC1次ラウンド、準々決勝の記事はもちろん、昨年のサッカーW杯、アントニオ猪木さんの追悼記事や武藤敬司さんの引退についての記事も書きましたので、併せて読んでいただけると嬉しいです。

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