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【WBC 2023】世界一奪還!今大会を振り返る

3/22 決勝の日。
世間はお祭り騒ぎでした。
WBC(World Bassball Classic)2023 決勝戦。
相手は野球母国にして、前回大会優勝のアメリカ。

主将マイク・トラウトを中心に現役メジャーリーガーをばかりを集めて結成されたアメリカ代表チーム。
侍ジャパンはどこまで通用するのか?

ここまで来たら目指すのは世界一。
前日の興奮冷めやらぬまま、日本中が固唾を飲んで見守った決勝戦。

記事にするのがだいぶ遅れてしまいましたが、私はその日出勤日で、普通に会社に行って仕事していました。
結果は文字で知ったので、あまり実感が沸かないのが正直なところです。
でも世間の盛り上がりは凄くて、その週はずっとWBC一色でしたね。

後から試合を見たり、選手や栗山監督の話を聞いたりして、ようやく実感が沸くとともに、いろいろ考える事もありました。
今回は決勝戦と今大会を振り返って、感想や考えた事をまとめてみたいと思います。

日本中が固唾を飲んだ決勝戦

”村神様”の一発で流れが侍ジャパンに

さすがに決勝の模様は各メディアで何度も流れ、多くの方が見た通りだと思うので、今回は試合の感想を中心に。

アメリカの先発投手ケリーはあまりいいピッチングとは言えませんでした。
初回こそ抑えましたが、球速もそこまでではないし、あまり怖さを感じるピッチャーではなかった印象。

そこを捉えたのが村上。
彼の持ち味の鋭いスイングから生まれた特大アーチ。
正に、いつものヤクルト戦を見ているような展開でした。

2回表に今永がホームランを打たれたものの、そのすぐ裏で追いつく。
この1発がとても大きかったと思います。
その後も侍打線がケリーを攻め、2回途中でピッチャー交代に追い込み、さらに1点追加する盤石な攻め。
序盤にリードしたおかげで、気持ちも多少は楽になったんじゃないかと思います。

必勝体制!計7人の投手リレー

決勝の先発は山本由伸かと予想していたのですが、勝って決勝に進むために準決勝の中継ぎへ。この投手起用は大当たりだと思いますし、結果劇的なサヨナラ勝ちで日本は決勝に駒を進める事ができました。

となると、決勝の先発は誰になるのか?
誰になっても心配は全くありませんでした。
だって、各チームのエース級が揃う布陣ですから。

結局日本の先発は好調の今永。
2回に被弾したものの、危なげないピッチングで2イニング。

続く3回からは戸郷。初戦以来の登板。
戸郷も好調でした。球も走っていたし、鋭く落ちるフォークでアメリカ打線を翻弄。
トラウトから三振を奪ったのは自信にも繋がったでしょう。
今年は何勝してくれるか?シーズンも楽しみになりました。

4回裏には岡本のホームランも飛び出し、日本が勝ち越し。
その流れで5回は高橋宏斗。
チーム最年少の20歳が気迫のピッチング!
アメリカ代表も見ているファンもびっくりしたのではないでしょうか。

6回は伊藤大海。
最後のバッターを鋭い球で三振に討ち取り、思わずガッツポーズ!
7回は大勢。
連投となったものの、しっかり3人を抑えて相手に流れを渡さない。

ここまで、若いピッチャーをイニングごとに次々と送り出す必勝体制。
ひとりに任せるよりも、状態のいいピッチャーが何人もいるわけですから、細かく使っていった方が有利に決まっています。

その上、発展途上な若いピッチャーをこの大舞台へ、という監督の想いもあったと思います。
MLBで使用されるスタジアムのマウンドで投げられる機会なんて、そうそうあるものではありません。

そんな作戦に5人ともしっかり応え、見事なピッチング。
安心して見ていられるほど、頼もしいピッチャー陣でした。

8回にはダルビッシュがマウンドへ。
5番シュワバーに一発を浴びてしまい1点差に詰め寄られますが、その時ブルペンには大谷の姿。
いよいよ、9回の攻防が始まります。

魂の決戦!大谷vsトラウト

9回表。
レフト奥にあるブルペンから、大谷が走ってマウンドに上がります。
その球を受ける中村雄平は、キャンプから大会を通じて一球も大谷の球を受けていなかったそう。
マウンド上でサインの打ち合わせをしたとき、「どっしり座っていてください」と言われたのだとか。

応援団長として渡米し、リポートを届けてくれた中居さんの「泥だらけのストッパーを見たのは初めてです」。
この一言が、ハイレベルな投打二刀流で数々の歴史を作ってきた大谷の凄さ、そしてこの瞬間起こっている事の凄さを物語ります。

2009年大会の決勝戦。原監督が指名したストッパーは、先発ピッチャーとして大会を通して活躍していたダルビッシュ。
最後の最後で彼を起用したことで、見ているファンは皆驚きましたが、その時と同じような光景。
日米のファンが待ち望む最高の舞台!

最初のバッター、マクニールに四球を与えてしまうものの、続くベッツをセカンドゴロに討ち取り、ダブルプレーで2アウト。

あと一人。
ここでバッターボックスに立ったのは、大谷のチームメイトで、エンジェルスでもアメリカ代表チームでも中心人物となる、マイク・トラウト。

まさかこのタイミングでこんな対決が見られるとは。
まるで物語を見ているような展開。
最後の最後で、魂の決戦が始まる!

初球はボール。しかし鋭いストレートにトラウトのバットが2回も空を切り、遂に2ストライクに追い込む。
あと一球。しかし、相手も超一流。
失投してしまったら相手にチャンスを与えかねない。緊迫した空気が流れる。
大谷の緊張感も伝わってくる。2ストライクを与えたところで1球外してしまい、フルカウントへ。

次の一球で勝負が決まる。
大谷の繰り出したボールは…相手の手元で鋭く曲がるスライダー。
当然、トラウトも狙っていただろう。バットはボールを捉えられず空しく空を切る。

軍配は大谷翔平!
感情をあらわにし、帽子とグローブを投げ捨てて叫ぶ!
中村雄平が、ベンチから侍ジャパンのメンバーが駆け寄る!
緊迫する魂の対決を制し、世界一奪還の歓喜!!

大会MVPはもちろん大谷翔平。
「大谷翔平のための大会」と言っても過言ではないでしょう。
自身、前大会を怪我で欠場した悔しさを晴らした、というレベルでは語れないほどの大活躍でした。

今大会で感じたこと

日本野球はなぜ世界を征する事ができたのか?

2006年、2009年に続く3度目の世界制覇。
これで、世界野球プレミア12、オリンピックに続き、3冠となりました。

2006年の世界制覇から続く日本の強みは「守りの野球」。
当時はスモールベースボールと言われた日本のプレースタイルに、世界がきりきり舞いさせられました。
塁にランナーをためて長打で大量得点、と言った理想的な攻撃ではなく、四球でも塁に出て、犠牲バントで次の塁に進め、盗塁で揺さぶりをかけて1点をもぎ取る。
そして、強力なピッチャー陣を起用して相手に点を取らせない。

トーナメントのような短期決戦では、1点が重くのしかかってきます。
日本野球はトーナメントに強い。
それもそのはず。高校野球では、甲子園でも地方大会でもトーナメントなんですから。
今やプロとして活躍する選手たちは、幼少の頃からトーナメントを戦ってきているのです。

ただ、今大会では強力な守備に加えて、ダイナミックな攻撃も見せてくれました。
特に吉田正尚の長打、そして試合をひっくり返すホームランは本当にパワフルでした。

打線も各チームを代表するバッターばかり。
そんな彼らも常に長打を狙うわけでもなく、しっかりチームのために献身。
何より、どんなピッチャーが投げてもしっかり球を見定める、その選球眼。
四球を選んで塁に出る事も、攻撃面では重要です。
それがどのバッターも当たり前のようにできているのです。

世界各国のメディアがこぞって称えたのが、日本の若手育成システムの優秀さ。
特別な事をしてきたわけではないと思いますが、野球を志す子供たちに、練習場や試合の機会をしっかり与え、プレーを楽しむ環境を整える事は、日本では当たり前の事になっていると思います。
その中から優秀な選手が出てきて、育ってゆく。

それを支えるのは、野球人気が日本の文化に定着しているということ。

昨年の流行語大賞「村神様」。
まぁ、「流行語大賞の選考員、50代の野球好きおじさんがイニシアチブを持っている説」もありますが、多くの人が「村神様」と聞くと、だいたい何の事かはわかると思います。
それだけ、連日ニュースのスポーツコーナーでも扱われ、ネットニュースでも野球関連のニュースは多く目に付きます。
望む、望まないにせよ、野球の話題が目に、耳に入ってきます。

サッカーが盛んな国ならその対象がサッカーになると思うのですが、日本では野球。
他のスポーツでもヒーローが生まれて人気になるスポーツはありますが、野球人気は安定していると思うのです。

野球の話題が日常的になれば、プロ野球も盛り上がります。
今年は新たに「エスコンフィールド北海道」もオープンしますし、WBC制覇の余韻もありますから、もっと野球が盛り上がるでしょう。
すると、それを見た子供たちも野球選手を志すようになる。
前述の通り、子供のころから野球を楽しむ環境があるのですから、優秀な選手が次々出てくる。
今はメジャー経験のある選手も多く、海外でのノウハウも日本野球にフィードバックされる。

私は専門家ではないので詳しい事はわかりませんが、素人考えでもここまで日本代表が強くなる要素があるのですから、実際細かいところまで調べると、もっとすごいと思います。

とにかく、日本国民が作り上げた日本野球の強さ。
それを誇りに今シーズンも野球を楽しみたいと思います。

栗山監督の熱い想い

優勝の翌日。
シャンパンファイトの余韻もつかの間。侍ジャパンのメンバーは各チームへ合流するため、それぞれ旅立ちます。
国内組の選手たちは、ダルビッシュらに見送られて帰国の途に。

日本時間の3/23夜。
帰国した栗山監督が早速テレビ朝日の報道ステーションに出演。
そこで次から次へと裏話が飛び出し、私も夢中になって見入ってしまいました。

日本ハムファイターズでダルビッシュ、大谷を育て、今回は日本代表監督として二人を招聘した栗山監督。
二人をどこで投げさせるか?
彼ら二人のコンディションの事ももちろんありますし、彼らが所属するチームとの兼ね合いもあります。

当初、ダルビッシュの登板は2試合のみ、と本人とも話していたそうですが、それでも本人に「行けると思ったら言ってくれ」と伝え、返事を待っていたそうです。
決勝の日、コーチを通してダルビッシュが「行ける!」と伝えてきた。
それで8回の登板に繋がったそうです。

そして大谷。
準々決勝に登板し、アメリカへ渡った後の練習日に、「体の調子が戻れば、決勝行けるかもしれないですよ」と栗山監督に伝えたそうです。
それを聞いた栗山監督は「登板起用の準備をしておいてくださいよ」というメッセージと受け取ったそうです。

二人の事をよく知る栗山監督。
この監督人事はWBCで大谷、ダルビッシュを担ぎ出すためのものだと思っていたのですが、それ以上の強い信頼関係を築いていた事に驚きました。
メジャーで長年キャリアを積んできたダルビッシュと、日本球界の至宝としてメジャーで次々と大記録を打ち立てている大谷翔平。
正に、世界に勝つための信頼関係だったのです。

そして話題は源田について。
韓国戦の走塁の際、右手の小指を骨折した源田。
ベンチ裏で治療を受け、そのまま2塁に戻っていったときの話。
栗山監督はその時に「源ちゃんの指、横向いてます」と報告を受けたそうです。
しかし、ボルタレンという痛み止めを、本来なら水で飲むところをラムネのように口に放り込み、そのまま2塁へ駆け出して行った源田の姿に感動した、と語ってくれました。

その日は途中からショートを中野へスイッチ。
中野もその日から活躍。さすがに次の日から源田は出られず、1次ラウンド終了後に他の選手と交代になるだろう、と誰もが思ったはず。
しかし源田は誰とも交代せず、変わらずスタメンでショートを守りました。
ただし、右手小指はテーピングで薬指と完全に固定したまま。
バットのグリップエンドにもテーピングを施し、打撃も行えるようにして出場しました。

何故負傷した源田を起用したのか?
韓国戦の翌日。監督はスタメンから外そうと源田と話をしたのですが、「このWBCにすべてを掛けます」という気迫が伝わってきたとのこと。
プレーもほぼ問題なく、所属チームである埼玉西武ライオンズからも「源ちゃんの意思を尊重する」と言ってくれたそうです。

その気持ちに応え、監督も準々決勝から源田を起用。
毎試合守備、走塁に大活躍。大事な場面でヒットまで打つという驚異的なプレーを見せ、世界一奪還に貢献してくれました。
選手の気迫に、監督は気持ちで応えた。熱いエピソードです。

ただ、源田本人は「ボルタレンはちゃんと水で飲みました」だそうで…
口に放り込んだ方がカッコイイですけど、強い薬だと思うので、正しく飲まなければいけませんね…。

日本球界の未来のために…ダルビッシュの献身

今大会、ダルビッシュの状態はあまりよくなかった、と栗山監督は話してくれました。
理由は調整不足。体調が悪いわけでも、もちろん怠慢でもありません。

ダルビッシュは2月の宮崎キャンプからチームに合流。
メジャーリーガーにとって、実はこれこそ難しい。
所属チームも目下キャンプ中。シーズンを戦うために戦略を立てる上でも、チーム内でコンディションを整えてほしい。
現に、他のメジャーリーガーが合流したのは、キャンプが終わった後、強化試合が組まれた合間のことでした。チームがストップをかけていたのです。

しかし、ダルビッシュは長年メジャーで活躍し、いくつものチームを渡り歩いたベテラン。
そんなダルビッシュが代表キャンプへの参加を容認したのは、チーム側の計らいであったし、ベテランだからこその発言権があったといいます。

ではなぜ、早くからキャンプに合流したにもかかわらず、不調だったのか。
これは、栗山監督が番組内で強調されていたのですが、ずっと若手ピッチャーの練習に付き合い、様々なアドバイスをしていたそうです。

特に決勝戦。
普段相対するアメリカのバッターですから、データは豊富。
その日登板したピッチャーに、細かいアドバイスをずっと続けていたそうです。
また、決勝戦前日でも村田バッテリーコーチへトラウトの対戦データを持ち込み、フォーシームであれば打ち取ることができる、と話をしていたそうです。

それをずっと見ていた栗山監督。
最後、ダルビッシュに「本当に申し訳ない。自分の調整ができなくて苦しかったよね。おかげで本当に日本の野球のためになった」と謝ったそうです。

自分の調整よりも、若手へ多くのアドバイスを伝える。
世界一奪還も重要なミッションですが、ダルビッシュはその先、日本球界の未来をも見据えた行動を取ってくれていたのです。

ダルビッシュからたくさんのアドバイスを受けたピッチャーたちは、本当に貴重な経験ができたと思います。
多くの選手が、2009年にダルビッシュが最後のマウンドで投げ、WBCを征した時にはまだ子供でした。
ダルビッシュに憧れ、ピッチャーとして成長した選手も数多くいますし、それ以前に長年メジャーの第一線で活躍している選手なのですから、皆から尊敬を集める存在のはずです。

さらに、チームが一つになることを考えて、積極的に食事会をセッティングするなど、今大会の彼のチームへの貢献度は計り知れません。

今大会のダルビッシュの献身は、今後の日本野球界に大きな意味をもたらした、と言っても大げさではないと思います。
ダルビッシュの行動にファンとして感謝しますし、様々な教えを受けた若きピッチャーたちの今後の活躍が楽しみでなりません。

※ANN NewsChannelの公式YouTubeより。
報道ステーションに栗山監督が生出演した模様を、ノーカットでアップしてくださいました。
選手への信頼がより濃く感じられる話をたっぷり聞くことができました。

今後の侍ジャパンは?

世界一奪還という最高の結果に終わったWBC2023。
次のWBCは3年後、2026年になります。
長いようで短い3年。今大会に参加した選手の中から、どれぐらい次も参加できるかわかりませんし、新たなる若い選手が台頭し、代表入りを勝ち取るかもしれません。

日本野球のレベルの高さは、今大会で選手たちが十分証明してくれました。
次はどんなチームになるのか?新たにヒーローが生まれるのか?
そんな楽しみを抱きつつ、今年もプロ野球のシーズンを楽しもうと思います。

その前に、来年11月には「もうひとつの野球世界一決定戦」世界野球プレミア12が開催されます。

WBCがMLBを中心とした団体が主催していますが、プレミア12は世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が主催する大会。
メジャーリーガーの参加はありませんが、もうひとつの侍ジャパンの舞台です。

前回の2019年大会では、日本が優勝。
WBCの勢いそのままに、再び頂点に立てるか。こちらも今から注目の大会です。

侍ジャパンの今後も楽しみですが、いよいよ2023年シーズンが開幕。
次の侍ジャパンを担う選手は誰になるのか?
今年からスタジアムへの入場制限も撤廃され、そして何と言っても声出し応援が解禁。
WBCで野球に興味を持った方も、これを機にダイジェストでいいのでプロ野球を楽しんでみませんか?
誰のプレーが輝いているか?次に誰が侍ジャパンに呼ばれそうか?
そのあたりを意識して見てみると、面白いと思いますよ。

タイトル画像は、MLB公式Twitterより。
ダルビッシュを囲む投手陣たち。彼が投手陣やチームをまとめたことによる勝利でしょうし、若いピッチャーにとってかけがえのない経験になったことと思います。
日本野球の未来をも見据えたチームへの献身、心から感謝します。

最後は大会終了から1週間以上経ってしまいましたが、大会を通して侍ジャパンの試合をすべて語ってきました。
コロナ禍の影響で、前回大会から実に6年も待った今大会。本当に楽しみにしていましたし、試合を見て盛り上がったすぐ後に記事を書くことによって、よりじっくり試合を楽しむことができました。

そして何より、数多くの方に記事を読んでいただいただき、記事を通じて多くの方がフォローしてくださいました。本当にありがとうございました。
これからも折を見て野球についての記事を書いてみたいと思いますので、その時も楽しんでいただけると嬉しいです。

【お知らせ】
WBCの記事を書くのを機に、「スポーツを語る」マガジンを作りました。
今大会の日本戦の振り返りはもちろん、昨年のサッカーW杯や、武藤さんの引退、猪木さんの追悼文などプロレスの記事も書いています。
多くのスポーツファンに読んでいただき、楽しんでいただければと思いますので、是非よろしくお願いします!

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