行政とベンチャーとの関係
最近は、Gov-Techという言葉も出てきて、神戸市や福岡市等、ベンチャー企業との連携を取り入れた地域が広がっています。
「行政」と「ベンチャー」、相容れない言葉のようですが、果たしてそれぞれどういったモチベーションで、どういった関係性を築くべきか。
行政を大企業に見立てたオープンイノベーションの議論と捉えると分かりやすいかもしれません。
行政の原資は税金が基本です。
加えて、行政は入札による委託、請負や、補助金のようなスキームで外部にお金を出す仕組みを持っています。
委託、請負は一般企業でも同じですよね。
ベンチャー企業の行政と連携するモチベーションは「お金・事業の成長・信用」ではないかと思います。自治体からお金をもらい、自分の事業の成長に繋がり、加えていわゆる「お上」が後ろだてをしてくれる。
いいことばっかりに聞こえますが、その「お上」は本当にいいお客さんなんでしょうか。
行政は基本は単年度会計です。
なので、3月末で全ての事業は一度区切りを迎えます。
そして4月以降、新たに公募の手続きが始まります。
なので、複数年度を跨いでお客さんになる可能性は低いのです。
サブスクリプション型等、顧客との関係性の維持が必要な時代において、ワンショット型のお客さんになりやすいという懸念があるのではないかと思います。
もう一つの懸念は、「本当に事業成長に繋がってますか?」という点です。
行政がベンチャー企業と組むモチベーションは何でしょうか。
もちろん「住民の課題を解決したい」という純粋な気持ちも多いのでしょう。よりきめ細やかなサービスをつくるためには、大手企業と喧々諤々するより、ユーザー目線のベンチャー企業と連携した方がいい。
ただし、そういった想いとは別に、パフォーマンスの部分もあるのかなと思います。この取組は、うちのブランディングに寄与するぞと。
その行政は、あなたの事業成長について考えてくれてますか?
単に権威を振りかざして、少ない予算で無理を通そうとする、志の高いベンチャー企業を下請けとして扱うお客さんになってないですか。
上記を踏まえた上での新たな懸念は「行政の信用を正しく使えてますか」という点です。
行政は信用力があります。今の日本では。そこは間違いない。
ただ、上記2点目の懸念で、お金を出す側=行政はユーザー目線を持ち合わせていません。ユーザー目線があったら、最初から課題に対して立ち向かっているはず。にも関わらず、資金の出し手であるか、受け手であるか、という関係性により、発注者(行政)>受託者(ベンチャー)となってしまう。
つまりは、本来ユーザーにコミットすべきベンチャーが、発注者である行政へのコミットを求められてしまうという流れになります。
こうなると、「行政の信用力」を使って、ユーザーの幸せを目指したはずのベンチャーが、いつの間にか行政>ユーザーになってしまい、「お上」の威光を借りながら、本来のビジョンとは異なる戦略を取ってしまうことにならないだろうかという懸念です。まさにミイラ取りがミイラになる図ですね。
では、理想的な関係はどういった関係なのか。
私の個人的な想いで言えば、「事業が目指すビジョンに双方がコミットしている」という状況です。
ビジョンが実現できれば、ユーザーが幸せになるはずで、そこを目指すために双方がリソースを出し合うのであって、立場の上下はないですよね。
ただ、単に想いとかフワッとしたものでコミットするのではなく、きちんと軸を整理した上でコミットを確認していくべきなのかなと。
〇双方のビジョンは何か。行政はベンチャーのビジョンにコミットできるか。
〇ベンチャーがビジョンに基づきコミットしているパラメーターは何か。連携することでパラメーターは成長するのか。パラメーターセットができていないのであれば、何の課題・仮説を実証する事業なのか。
この辺りを整理せずに、単にベンチャーだから、行政だから、大企業だからという理由で連携を促進しようとするのは、正にパフォーマンス以外の何物でもないと思います。
ただ、パフォーマンスも大事な要素なので、どこかで上記のような熱い議論交わされた上で、誰を幸せにしたいのか、というところをきちんと双方がコミットしてくれるといいなと思います。
誰も幸せにしないくせに、表面的な言葉だけは立派で、虎の威を借る行政受託が増えていくのはもうたくさん。
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