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つみき、きりん

 キリンって血圧が高いらしい。たしかに、あんな高いところにある頭に血を巡らせるには、相当圧力をかけなければならない気がする。

 私の弱点四天王の一つも高血圧である(残りは近眼、短足、右肘骨折である)。血圧の測定も兼ねて、できるだけ献血にいこうと努めている。血圧は上が90〜180、下は50〜110の間なら献血可能である。ちなみにさきの記事によると、キリンは上が250で下が200らしいので、残念ながら対象外である。ちなみのちなみに、血圧の上とか下とか未だに判然はっきり理解していないし、聞いてもすぐ忘れるだろう。

 献血にあかるくない方のために宣伝しておくが、献血には大きく二種類に分けられる。全血献血と成分献血だ。

 全血献血とは、その名のとおり血液をまるまる提供するタイプである。普通は400ml抜かれる。一般に献血と聞いて思い浮かべるのはこちらだろう。

 それに対して成分献血とは、いったん血液を抜いて必要な成分を抽出し、残りを身体に返してもらうタイプである。換言すれば、血液が往復するということなので、馴染みのない方はギョッとするかもしれない。これはさらに血漿を提供するのと血小板を提供するのとに分かれるが、いずれにせよ酸素運搬担当大臣の赤血球は体内に帰還するので、体力的な回復は速いと言われている。ただし、往復分の時間はかかる。

 死にそうになった話はこちらでやっているが、成分献血で具合が悪くなったときも、けっこうキツかった思い出である。ただ、これを読んでもどうか献血に恐い印象を持たないでいただきたい。

 ある日、時間もあったし、今まで全血献血は何度もしてきたので、ここで一丁成分献血に挑戦してみようと思い立った。唯一にして最大のミスは、献血の針を刺す腕として右手を指名したことである。私の右手は伸びきることはない(詳細はこちら)。肘を曲げないとリラックスできない身なのだ。しかし、献血中は肘を伸ばさなければならない。私は力を入れねば右肘を真っ直ぐ(に近い形状)にできないので、血を抜かれている間、ずっと身体が緊張している状態であった。

 これがどうやらよくなかったようだ。献血の過程が半分ほど済んだころ、だんだん気分が悪くなり、吐き気がし、肌寒くなってきた。故郷くにの瀬戸内海の波の音が聞こえる。これには「血管迷走神経反応」というイカした専門的な名があるらしい。

 狩野英孝よろしくスタッフさんを呼んで、気分不良を訴えた。頭の位置を下げ、逆に足を上げる姿勢に調整していただいた。その姿勢のまんま、なんとか初めての成分献血を終えた。献血終了後、ベッドで血圧を測ると上が100を下回っていて驚愕した。そんなに下がっていてのか。スタッフの皆さんをバタバタさせてしまって申し訳なかったけれど、何気ない日常にちょっとしたハプニングを提供したと、勝手に前向きに解釈することとした。

 それ以来、献血は必ず左手でお願いしている。ただ、毎度左腕の外側の細い血管を使うので、ほかの人に比べると少し時間がかかる。全血にしろ成分にしろ、まだ献血をしたことがない方も、もし気分が悪くなってもスタッフさんが迅速かつ正確に対応してくださるので、安心して臨んでほしい。首を長くして待たれていることだろう。

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