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ぼちぼち帰ろう

甘く漏れる口 苦く滲む耳 ねじれた言葉が やがて痣となる 青く香る春 赤く踊る夏 振り返るとなぜ 烏賊の墨になる ぼちぼち うちへ帰ろう 錆びた街に 陽がのろく落ち ゆらゆら ゆらぐ影は 離れもせず はなしもしない誰か 重く嘆く風 軽く笑う波 寄り添う言葉が やがて花となる 白く語る秋 黒く黙る冬 振り返るとなぜ 色褪せず残る ぶらぶら ぶらつく夜 穴をあけた 月清く凍り ぐるぐる めぐる針は 夢を急かす 音なく騒ぐ声 ひとり迷う雲 ひとり狂う空 行き交う彼らも ぼ

ラジオ

長雨の秋 忘れる人 追いかけてゆく 眠れず 夜 見えぬとも ただ酔う涙 小さな箱の 大きな海に ひとりで浮かんで 鏡も見ずに 心の水に いろはのかたちを 小さな箱の 大きな海に ひとりで浮かんで 震える波は 喉から届く声 眺めの飽き 忘れる日と 老い欠けてゆく 眠れず 寄る 見えぬ友 漂う波だ 小さな箱の 大きな海に ひとりで潜って つまらぬ日々に 埋まらぬひびに でたらめなわけを 小さな箱の 大きな海に ひとりで潜って 震える波は 耳まで届く声 ながめのあき わすれ

続・ラジオ

寂しさと背中合わせ 川の向こう岸まで背負う 思い出せない思い出 いつか忘れたはずの言葉 寂しさと向かい合わせ 川の向こう岸まで話そう 願いすらしない願い いつか忘れてしまう言葉 寂しさと隣り合わせ 川の向こう岸まで歩こう 嗚呼 街を越えて 流れる声 小さな箱から 時の針が 夏の夜を走る

新・ラジオ

広い海原 わたしは東へ発った まだ寒い朝 まっさらな靴を履いて 広い海原 頭の中で揺らいだ 小さな箱が繋ぐ 馴染みのない人 知らぬ街から泣く声 人並ひとり憂く世に 行く旅出会う訪れ 春の小舟来い漕がれて 荒れる海原 あなたは西から去った まだ寒い朝 振り向きもしないままで 荒れる海原 瞼の裏で回った 小さな箱が繋ぐ 馴染み深い人 知らぬ間力なく越え 人波ひとり浮く夜に 幾度出会う音ずれ 春の小舟恋焦がれて しらぬまちからなくこえ ひとりひとなみうくよに いくたびであう

ラジオ・完

ひさかたの月ぞ隠れる 冬籠り春を待ちわぶ 見せばやな濡れし袖だに 夜露のみ睦ましき仲 いさなとり浜辺の波に むべまがふ小さき箱の 流したるさやけき声に 八重葎心慰む 東風ばかりとく吹かなむと 遠つ人松に積む雪 踊る冬の白きを憂み 誤ち けさより酔ひ 瀬は帆こそ寝ぬめれ 我ならで いづくにか居む えも耐へず おとるふゆのしろきをうみ あやまち けさよりゑひ せはほこそねぬめれ わならて いつくにかゐむ えもたへす 補足「踊る〜」はいろは歌になっています。つまり仮名を過