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今好きなものについて、心のままに喋る。

久しぶりの投稿になった。最近好きなロックバンドの話。


1. はじめに

UNISON SQUARE GARDEN(ユニゾン)というロックバンドにハマっている。

共感を寄せたところに、私が大事にしている価値観が現れていると思う。

記事前半(4章まで)では単に私が彼らの魅力にはまっていく様を時系列で振り返った。

後半(5章から)では、最近知り共感した彼らのスタンスにいくらか言及した。曲の解釈が入るので苦手な方は注意をお願いしたい。


あるアーティストに、作品に出会って人生が変わった」なんて、個人にとっては大事件かもしれないが他人にとっては全く聞くに値しない些細な話かもしれない。

しかも今のところ、私は人生が大きく変わってすらいない。

なんて退屈な記事を書くのだろう、という甚大な後ろめたさを抱えつつも先に進む。



2. 私とユニゾンについて

まず私の話。

隙あらば耳にイヤホンを詰めるタイプ。

去年9月に音楽の趣味を広げるぞ!と息巻いてサブスクリプション・サービスのSpotifyを始めた。

しかし登録時の動機はどこへ行ったのやら、当初は元々好きだったMiliというアーティストと、にわかにハマっていたChinese-popの偏った音楽ばかりを聴いていた。

せっかちなのでゆっくりとした音楽は苦手で、すぐスキップする。

偏食家と思いきや何度も聴くうちに大抵の曲を好きになれる。

しかし多くの曲に対して何度も聴こうという努力を怠る。

仲のいい友人に「この曲が好きなの!」と伝えられても「よかったね!」としか思わない。歩み寄ることが少ない。

だからこそ、こんな記事を書くことに対するネガティブ感情があまりに大きい。

それでも好きな気持ちが止まらないので書くのだけれど。


ロックバンドの記事を書こう、と思って振り返れば高校生の頃は家に音源があったThe BeatlesとRADWIMPSばかりを聴いていた。

音楽ジャンルを意識したことはなかったが、ロックが好き、という感覚はこの頃に育まれたのかもしれない。


次に、バンドの話。

ギターボーカル斎藤、よく動くベース田淵、ドラム鈴木。全員同い年で今年(2021年)36歳を迎える。

高校時代から共に音楽をしており、大学1年次より現在と同じスリーピースの形態でバンドを始めた。2004年結成、今年の7月に17周年。メジャーデビューは2008年。

ほぼ全ての作詞作曲をライブでよく見切れる田淵が務める。


音楽の楽しみ方なんてたくさんあって、この比べ方はあまり正しい気がしないが。

私がぱっと思いついた邦楽ロックバンド(だと思っているグループ)のSpotify月間リスナー(2021年5月29日現在)で規模を測ってみた。

ONE OK ROCK:3,462,412人
Official髭男dism:3,044,658人
RADWIMPS:2,902,561人
King Gnu:1,985,232人
BUMP OF CHICKEN:1,130,214人
UNISON SQUARE GARDEN:461,839人

※余談だが、私が好きなもう一組のアーティスト、Mili(CDジャンルはアニメ・ゲーム)のリスナーは402,775人とユニゾンと近い値なのを意外に感じた。おそらく海外リスナーが多いのだろう。

私がメジャーではないかと考えるアーティストとは桁が違う結果に少し驚いたが、たくさんの人に愛されているアーティストであることには違いがない。



3. 出会い:Catch up, latency

私がユニゾンを聴くようになったきっかけ。

①シュガーソングとビターステップ

2015年に出たバンド最大のヒット作「シュガーソングとビターステップ」は耳にしたことがある人も多いのではないかと思う。

私も高校生の頃この曲を聴き、ハイトーン・ハイテンポが好きなため、好きになった。が、そこ止まり。

ユニゾンスクエアなんとかというバンドのシュガビタは結構好きだけどボーカルの名前もどれくらいの年の人かも知らない。他の曲は一曲も知らないままだった。


②Catch up, latency

大好きな小説『風が強く吹いている』のアニメ化、主題歌を務めたのがユニゾンだった。

原作は箱根駅伝を目指す学生ランナーたちの物語。

スポーツ小説にぴったりな爽やかで高揚感を誘うメロディー、ランナーの鼓動に近いとも言われる少し早目のテンポ、そして物語にしっかり寄り添った歌詞。

君も傷ついてきたんだね
それならその合図で
反撃してやろうじゃないーCatch up, latency 歌詞より
「ねえ、ハイジさん」
大切な秘密を打ち明けるように、走はひそやかに言った。「俺たち明日、走りましょうね。いままでで最高、っつうぐらいに」
ー風が強く吹いている(三浦しをん著、新潮文庫)p.503

放送開始前から好きになり、OPで聴いただけでなく、バンドMVも繰り返し見た。


仲のよい友人がユニゾンを好きでこのCDを買ったという。貸してくれ!と頼んだ。

このシングルと合わせて二つのアルバムを貸してくれた。「MODE MOOD MODE」(MMM)と「Dr. Izzy」(Izzy)だ。

音楽の趣味を広げるのが億劫な私だが、シュガー、レイテンシーと好きな曲が二つあるうえに友人がわざわざ貸してくれたものだ。

これをきっかけにきちんと聴いた。

「美人、如雨露、酸素マスク」(Cheap Cheap Endroll)とか、歌詞の意味は全くわからないのだけれど、耳に心地よく響く曲が多かった。

特に気に入ったのはIzzyではパンデミックサドンデス、MMMでは10% roll, 10% romance

この時はまだそれ以上他のアルバムを試してみようとは思わなかった。



4. 転機:マイノリティ・リポ―ト

おうち時間を持て余している昨年末ごろ読書に目覚めた。

図書館で『マイノリティ・リポート』というSF小説に目を止めた。

友人が貸してくれたアルバム、Izzyの収録曲としてこのタイトルに見覚えがあったからだ。

小説のあらすじと感想は以下記事で簡単に語っている。

小説は中々面白かったし、マイノリティ・リポート(曲)も改めてきちんと聴いてみようかな、という気になった。

小説を読む前よりもユニゾンお得意の難解熟語繰り返しであるこの曲も何を言っているのかわかるような気がした。

無謀的展望視感症 もうカウンセリング不発で
診断は“異端”に落ち着いちゃってーマイノリティ・リポート 歌詞より


この時にはサブスクに加入し色々手軽に聴ける環境に身を置いていたので、IzzyとMMM以外にも手を出し始めた。

なんだかんだで、SpotifyのThis Is UNISON SQUARE GARDENという定番から少し踏み込んだ曲までを押さえたプレイリストが有能だった。

私はポップ寄りのユニゾンから入ったが、思い切りロックバンドらしさが出た曲にも触れて少しずつ「好き」が増えていった。

This is USGで衝撃を受けたのは蒙昧termination世界はファンシーVampiregirl(※トリビュート曲)あたり。



5. 沼落ち:お人好しカメレオン 『いつでも帰れる準備はある?』

2章で私は「ゆっくりとした音楽は苦手ですぐスキップする」と述べた。

だから始めの頃はプレイリストで流れてきても飛ばしてしまっていたのだけれど、うっかり聴いたらそれ以前とそれ以降の私がすっかり変わってしまった曲がある。

お人好しカメレオンだ。

(食わず嫌いというか、頭の3秒で曲を判断してしまうのは本当によくないと反省した。)

残念ながらYouTubeに動画はあがっていないが、各種サブスクで聴くことができる。


『ああ だから今その声を捨てないで』というボーカルから始まるこの曲。

周りの目立つ色に 馴染めるように 馴染めるように
毎日が流れて 続いていくなら 続いていくなら
きっと何千万画素もあるかっこよくて素敵なデジタルカメラなんかは要らなくなるよね ーお人好しカメレオン 歌詞より

『南南西』ってどこだよ!(シュガーソングとビターステップ)とか、なんで『白い壁』に『fresh tomato』投げつけるんだよ!!(天国と地獄)とか突っ込まなくていい。

え、田淵こんなに真っ直ぐな曲書けたの?と疑問に思うほど珍しくわかりやすい。

君だけのために君はいるんだよ

そして、とても優しい。

大学からの帰路、混沌とした治安の悪い交差点を歩いているところでこの曲が流れ始めて、聴き入った。めちゃくちゃ心に刺さってしまった。


歌詞を眺めながら聴き返していると、2番Bメロ、サビのあたりの解釈に迷った。

『君』はリスナーと勝手に解釈して、『僕』は優しく励ましてくれるのかと思いきや

最低でも半数は見放していく僕の手を掴むのか
別に構わないけど 拍子抜けする準備と いつでも帰れる準備はある?

なんか、ただ寄り添ってくれるのではなさそう?

誰が誰の手を握り、握り返したのか。優しさを単純に解釈してはいけないのだろうか。やはりひねくれているのだろうか?


6. 信頼できる大人に出会った感覚

感動と同時に困った私はすぐにインターネットに答えを求めた。

『片手間ブックマークしてそれは本当に答えなのか』と疑問の声を挙げる曲に対する向き合い方としては残念かもしれない。しかし調べてしまったものはもう仕方がない。

ユニゾンファンがお人好しカメレオンに言及しているいくつかのブログを読み、『僕』の少し突き放したかのような態度の解釈に対するヒントとなる知見を得た。

①UNISON SQUARE GARDENとファンはあくまでただの他人である。
②UNISON SQUARE GARDENはファンと馴れ合わない。

①なんかは特に当然のことに感じられるが、彼らはこの態度を徹底的に貫いているのだそうだ。

②に関しては、他のロックバンドと比べて非常に少ないライブMCなどに表れているという。(私は標準を知らない。)
この曲のときはこうやって盛り上がる、みたいなしきたり、コールアンドレスポンスがないらしい。
ただステージには彼らがいて音を鳴らし、観客は勝手に楽しむという図。


小生田淵がよく喋る○月と題した公式ブログでは作詞を務める田淵の生の言葉をいくらか読むことができた。

我々はいつも好き勝手ライブをやって君の街に行くだけなので
別に来てくださいなんて思ってない
し、ましてや県外からも来て~なんて思ってない。
来たいなら来ればいいし、飽きたんなら来なければいい。―2019.6.21
いつまで経っても君と我々は他人同士なので、君は我々のことを常に考えなくていい。きちんと君の人生を作っていってほしい。
学校行け。仕事しろ。友達や家族を大事にしろ(突如現れる人生訓おじさん)―2016.12.26

また、雑誌のインタビューから、彼らは活動の目標を「長く楽しくバンド(の主業であるライブを続けること」に置いていると知った。

誰かのために音楽をするのではなく、彼らはあくまで自分たちが楽しむために音楽を続ける。

それをカッコいいと思う人がいるのならば、CDを聴き、ライブに来ればいいし、観て勝手に楽しめばいいと言う。

少し寂しくもあるかもしれないが、すごく心地よく感じられる距離感だ。


勝手にUNISON SQUARE GARDENの音楽を楽しみ、救われているのは構わない。

だけど僕らは君のためにいるのではないから、過度に期待しないでね。ということだと思う。

この態度にはむしろ、「私に任せておいて」とか、「私が助けてあげるから」といった期待を抱かせる人よりも誠実さを感じる。

ここまで理解して、私は単に好きなアーティストを見つけたのではなく、信頼できる大人に出会ったのだ、と感じた。

成人して久しい私が「大人」の幻に縋るなんていい加減やめた方がいいのだろうけど。この感覚がしっくりきた。

下手に分かりやすく誰にでも届く言葉ではないが、だからこそ薄っぺらな言葉よりも確かで信じていいと思える。


先の小生田淵の言葉はこのように続く。

時折忘れるぐらいがちょうどいい。すっかり忘れたならそれはそれでいい人生だ。しっかり生きて、もしまた会う時があればその時は派手にやろう。
君がどうなろうと僕の好きなロックバンドはまだまだ続きます。―2016.12.26

ファンもいつか彼らから離れていくかもしれない。

元から他人だったのだからいつでも帰ればいいし、好きなところへいけばいい。

それでも、そんな他人の人生を『いい人生だ』と肯定してくれるところに優しさを感じてしまう。

こういう寛容さを持てるようになりたいと思う。


私は誰にでも好かれたいと思っていないし、「私」に限らず万人受けするものなど存在しないと思う。

大好きなものの中にもきっと少し嫌な側面もあるだろう。完全なものはどこにもない。
(イマイチな側面を補ってあまりある「全部好き」は存在すると思うが。)

別に珍しい結論ではないだろうけれども、私はかなり強くこの意識を抱いている。

同様に、昔面白いと思った本が今はつまらなく感じるかもしれないし、今日好きだと思った曲が明日は嫌いになるかもしれない。

これくらい不確定な自分でいる。

それでも、今の私に必要なものならば、今精一杯好きでいればいい。

そんな時に、あくまで私のためにと寄り添ってくれなくても、いつも手に届くところにあり続けるのがUNISON SQUARE GARDENという存在だと思う。

だから今、不確定で曖昧な私でも自信を持って「ユニゾンが大好きだ」と言葉にすることができる。


7.ユニゾンの一番の魅力

私は基本的に、与えられた情報以外の背景を汲み取って味わわなければわからない作品をあまり好ましく思っていない。

具体的に言えば、作者の置かれた時代背景や私生活などがわからなければ何を言っているのか皆目わからない小説・音楽などだ。

もちろんそこまで深読みして一層よく作品を理解できるのは当然のことだが、その作品だけである程度まで楽しめなければ、それはいい作品だと思わない。


今回はユニゾンのスタンスといった作品外の情報にまで踏み込んで話を進めてきた。

しかし、こんなことは何も知らなくてもただ気持ちよく味わえるサウンド、そしてその中にたまに見つかる真っ直ぐな言葉が何よりもユニゾンの魅力だと思う。

きっとこの先飽きる瞬間なんてないのだろうけど、飽きるまで聴き続けたい。


8. 終わりに

書き始めたときは自覚していなかったが、ここまで書いてきて、私は既に立派な「物好き」であったと気づいた。

※ユニゾンは好き勝手やっているだけの他人(自分たち)を見て喜ぶなんて、あなたたち(ファン)も物好きね…といったニュアンスで「物好き」という言葉をしばし使う。

最近にわかに集めた情報だけでここまで書いてきたので、言葉の切り取りで誤読、拡大解釈をしていないといいなと切に願う。


この記事の主軸を担ったお人好しカメレオンについて少しだけ補足情報を。

作詞作曲を手掛けた田淵はこの曲を「魂を削って作った」という。

しかし2013年発売のアルバム、CIDER ROADに収録されていながらこの曲は2019年の15周年記念ライブという特別な場所でただ一度きりしか演奏されたことがない。

単にいい曲、というのではなく特別な曲らしい。



誰かにユニゾンを聴いて欲しい、と思って書いた記事ではない。

ロックが好きだったり、彼らの言葉を心地よく感じたりする人がいたら勝手に聴いてみればいい。中には好きにならない人もいるだろうけれど、それはそれだ。

これを読んだ他人は私に対し「好きなものを見つけられてよかったね、私には関係ないが」程度に思っていただけたら幸いだ。

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