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if(!Straylight)の「一択選択肢」とコミュ中の好きセリフの話

注意

以下のコミュについてのネタバレが含まれます
・if(!Straylight)(全般、特に OP, ED)
・Catch the shiny tail(一択選択肢だけ)
・天檻(一択選択肢だけ)
・薄桃色にこんがらがって(一択選択肢だけ)
・many screens(一択選択肢だけ)
・轟!-とどろき- 紅蘭偉魔空珠†番外地(一択選択肢だけ)

典型的な「一択選択肢」の使われ方

アイドルマスターシャイニーカラーズ内で 2022 年 6 月 30 日に公開されたイベントコミュ『if(!Straylight)』はストレイライトらしいコミュタイトルと、ストレイライトらしいテーマ、ストレイライトらしい展開のとても良い作品でした。その中で一点不思議だったことについてメモしておこうと思います。

シャニマスのイベントコミュ恒例の「一つだけ現れる選択肢」(以下、一択選択肢。選択肢なのか?)はこれまで基本的に作中のプロデューサーのセリフの中で特に象徴的・インパクトのあるものが選ばれる傾向があります。

『Catch the shiny tail』より。個人的に一番すきな一択選択肢です。
他記事でも触れていますが、シャニマスの思想の根幹だと思っています。
『天檻』より。これだけ見ると何言ってんだ感はありますが、
初見時は前後の文脈から「オオー」と 10 m ぐらいある獣のような鳴き声を出してしまいました。

与えるインパクトという意味でも(もちろん例外は多くありますが)コミュの後半でこの一択選択肢が出てくることが多いように思います。

さて、この一択選択肢がイベコミュにおける役割を考えてみましょう。
まず考えられるのは、やはりプレイヤーが作中のプロデューサーとして行動するという没入感を与える効果です。

これはセリフとしての一択選択肢でも感じるところではありますが、中にはセリフというより行動そのものが一択選択肢として表現されることも少なくありません。

『薄桃色にこんがらがって』より。息詰まる展開の中、チェイン上で
アルストロメリア全員への呼びかけを始めるというアクションを一択選択肢で体験できます。
『many screens』より。一応セリフではありますが、「メッセージの投稿」という
アクションが一択選択肢として表現されています。

if(!Straylight) の一択選択肢

以上が典型的な一択選択肢の使われ方と思いますが、対して『if(!Straylight)』ではオープニングコミュ『ORDINALY』から早速登場します。

夏休みの始まりやストレイの新しい仕事について場面がぐるぐると切り替わりながら今回のコミュの背景をかたどっていくオープニングコミュですが、その中で今回ストレイライトの 3 人が出演することになる舞台の原作のシステムボイス(CV. 田中有紀)が流れる中で今回の一択選択肢が出てきました。

フレームがおしゃれ

このように冒頭で一択選択肢が出てくるケースは他にもあって、世界観への導入という意味で一番近いケースは『轟!-とどろき- 紅蘭偉魔空珠†番外地 』が相当するかなと考えています。
このコミュではオープニングコミュが始まってオート再生で 1 分もしないうちに、放クラの面々が出演したドラマの配信ページで再生ボタンを押す(それ以降プロデューサーは登場せず劇中劇が最後まで続く)行為として一択選択肢が現れます。

プロデューサーの仕事が一瞬で終わるイベコミュ。「仕事をしているアイドル」という意味では
ある意味でファン目線に一番近いコミュなのかもしれません。

ただ、一応このコミュでもプロデューサーが再生ボタンを押すというアクション(実際に選択肢のボタンを押しますしね)が割り当てられているので、近いと言えどやはりプロデューサーの行為を体験するという側面が強いです。

このことを考えても『if(!Straylight)』の一択選択肢は特殊だと思えてきます。プロデューサーが実際に原作を触っている時にログインした、というシチュエーションの描写と読むこともできなくはないですが、そう断言するには少し展開上曖昧すぎて、こじ付けと言われても不思議ではないでしょう。

問2.「どのテキストを一択選択肢にするべきか、テキストボックスに収まる文章を抜き出せ。」

逆に、これまでのコミュと同じように一択選択肢を作るとしたらどこがそれになるのかということを考えてみましょう。

これに関しては各個人で見え方が違うと了承していますが、私個人としてはやはりエンディングコミュの以下のセリフかと考えています。

W.I.N.G. 編を引用すると強くなることを覚えてしまったシャニマス
シャニPかっこよすぎ
初見時ここで大泣きしてた

上記 3 セリフまとめて、というのは少し難しいとので、その中でも真ん中の「まだ探してたんじゃないかな」が一択選択肢として採用されるのかなと考えました。

ストレイのコミュの中では冬優子が本当に働いてくれるので聞き手側に回りがちなプロデューサーですが、だから単刀直入に刺さるセリフを投げてくるプロデューサーがかっこよく映ります。

冬優子 LP といい、もし自分が冬優子だったら完全にこの男に惚れてるなと思うシーンが多すぎ。ふざけるな。助けて。

プロデューサーのセリフを聞くのか、言うのか

このような気持ちに(勝手に)させられるのも上記のセリフが一択選択肢になっていなかったのがいくらか作用しているのかなと思います。

もし一択選択肢になっていたら、やはり憎たらしいほどかっこいいと思いはするものの、言う側の立場としてこのセリフに触れるためアイドル側、聞く側の立場でこのセリフに触れる体験の比重が軽減されるでしょう。

しかし、実際にはこの部分が一択選択肢になっていなく、その上、場面としては「冬優子」と「電話上で会話をするプロデューサー」という冬優子主体の場面からプロデューサー主体に若干移り変わるという状況でした。

この場面の少し前の「プロデューサー」と「電話で話す冬優子」のシーン
今回の該当シーンの主体の移り変わりはシームレス

「『…………もしも、ストレイライトのプロデューサーじゃなかったら』か……」というセリフですが、『』内に「……」があることで引用ではない電話上でのプロデューサーのセリフと思いきや、『』のあとに「か……」と引用を表すような表現をしていて、非常に曖昧なところも面白いポイントです。

その後は『』がなくプロデューサー主体のセリフにはなっていますが、それまでの展開とこのような曖昧でシームレスな接続によって、この一連のセリフを冬優子主体で聞くシチュエーションが形成されていたように感じました。

まとめ

シャニマス全体としてプロデューサーへの自己投影を必ずしも要求しないスタイルをとっている場面はこれまでも色々とありましたが、『if(!Straylight)』ではコミュ中で一枚しか切れない一択選択肢の使い方からその方針をより強く感じました。

そうしなきゃいけないというわけではないのですが、5 年目コミュのパノラマ的・多角的な表現・視点として今回プロデューサーの印象的なセリフを一択選択肢から外してきたというのももしかしたら狙っているのかなと妄想しています。

演出・BGM などもどんどん追加されてコミュの表現力が増してきていますが、一択選択肢をはじめとした既存のコミュ表現を用いた新たなシーンの創出に期待がかかります。

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