関係性オタク、リングフィットアドベンチャーにご満悦
クリアしました。しかし、運動という習慣には終わりがなく、日々続けることで己を磨くものである。だからゲームクリアという概念は本来ない。
新しいスタート地点に立てた、というのが正しい報告だ。良い作品のエンディングを見届けた後はそんな気分になれる。「っしゃ私も頑張るか!」と。今はまさにそれ。名作の読後感だよほんと。
そんなわけで、「リングフィットアドベンチャー」の感想を書き連ねます。
「運動の楽しさ」を味わえるゲームデザイン
後半はマンネリ化する、軽い運動のつもりでやってるのにボス戦以外でも過酷な運動を強いられる場面がある、一部のフィットスキルがうまく判定されない……など不満点はいくつかあるが、それらを含めても素晴らしいゲームだった。私は本作を通じて、「運動の楽しさ」を確かに感じることができたのだから。幼少期から軟弱だったオタクが、である。これは本当にスゴいことだ。
最初見た時は「ひええぇ……」ってなったけど、一部を除いてどれも楽しかったです。バンザイスクワットはもう二度とやりたくないです……
敵を倒して経験値とお金を稼ぐことで、スキルを増やし、ステータスを上げ、アイテムや装備品を充実させる。私が子どもの頃から愛して止まないRPGというジャンルにおいて、幾度も繰り返してきた行為が、本作では自分の身体と直結する。RPGのお約束と、フィットネスを融合させることで、プレイヤーが自分の身体の変化を節々で感じられる、見事なゲームデザインに仕上がっているのだ。
普段は意識していない筋肉に刺激が与えられる感覚。やがて「おっ、数日前より運動が楽になってるぞ!?」と自分の成長ぶりにテンションが上がる感覚。なるほど、世の中の人間が運動で得ているものは、こういう感覚だったのか……と光に照らされる思いがした。
クリアまでの総活動時間は約26時間(実際のプレイ時間は60時間以上)。総走行距離は89.76km。本作がなければ、人生においてこんなに熱心に運動に打ち込む機会は決してなかっただろう。
身体の健康だけではなく、精神衛生も
運動後に行うスタティックストレッチでは「あっ♡ やばっ♡ これ気持ちよしゅぎぃ……♡」と快楽堕ちしていた。なんて言えばいいんだろう、何かしらの脳内物質がドバドバ分泌される感覚? 最近では仕事の休憩時間でも見様見真似で実践している。これが本当に気持ちいい。気持ちよすぎて職場で「んっ……♡」って声出た。ハズい。
この声真似シリーズすき。
リングくんが「輝いてるね!」「よく乗り切ったね!」と褒めてくれるのも何だかんだ良かった。頑張った分だけ褒めてもらえるのは、やっぱり嬉しいし、もう少し頑張ってみようと思える。だって自己肯定感低いオタクだもの。これがピグマリオン効果かー。やっぱり人を褒めて伸ばすって大事なことなんだなあと、処世術すら学ぶことができた。
プレイが数日空いたとしても「毎日続けることに固執するのではなく、自分のペースで長期的に継続することが大事」「筋肉が形状記憶しているからすぐに遅れを取り戻せる」と諭してくれる。期間が空いてしまったことで戻るのが億劫になってしまうのは多々あることだが、本作ではそれがなかった。いつも明るく出迎えてくれるから。へへっ……サンキュな、リング!
まあでも、家から出て散歩することはあっても、ジョギングすることは今後もないだろうな。だって推しVtuberの配信垂れ流しながら運動できないじゃん?
結局、根本的な引きこもり気質は変わらない。が、逆に言うと、こんな引きこもりでも、部屋の中で運動する機会を与えてくれるんだからありがたい。怠惰な一日を過ごしてしまっても「まあでも今日はリングフィットやったしな〜」と思うことで安眠できる。品切れが続出する前に買っといてよかった。
リンドラてぇてぇ(ラスボス、エンディングのネタバレ注意)
そして何より重要なことがある。それはタイトルの通り、本作は関係性オタクにぶっ刺さる物語が展開されていること。
頭燃えてる人が持ってるのがリングくん。その右にいる黒いドラゴンがドラゴ。
リングとドラゴ。二人は共に身体を鍛えて切磋琢磨していた。しかし、ドラゴは自分の身体が弱いことをコンプレックスに思っており、そんな自分の心の弱さを受け入れることができず、闇のオーラに身を委ねてしまう。
変わり果てたかつての親友。リングはドラゴの蛮行に義憤を燃やしながらも、「ドラゴは本当はいいやつだから」と信じ、彼を救うために奮闘する。
心が虚弱なマッチョは意外と多い、三島由紀夫は病弱体質だった……そんな話をよく聞くので、これは普遍的な悩みなのだろう。それを元に"関係性"を作る着眼点、プレイヤーに教訓を与える姿勢。フィットネス好きな人がちゃんと作っているんだなあ、と感じられて良かった。
そう、本作の物語は「闇堕ちした親友を救出する」というのが骨子なのである。リングとドラゴは見た目からして明らかに種族が違う。つまり異種族もの。ほら、ドラゴンと少女が友情を結ぶファンタジーってよくあるじゃん? 素敵じゃん? 尊いじゃん? あれだよあれ。
彼らの友情、過去、すれ違いがつぶさに描写される。そこから醸し出される雰囲気はBLや百合に近い。
「何これ……てぇてぇじゃん……」
「このカプ、推せる!!!!!!」
と、これには関係性オタクである私もご満悦。間違いなく運動を頑張れた一因となった。運動するためのゲームを買ったら、良質な「尊い」の供給もついてくるとは。まさに瓢箪から駒。
主人公が喋らないので「二人の友情を"壁"として眺める」という作りになっているのも好感触。オタク心を"理解"ってる。これもう確実に製作者に重度のカプ厨いるだろ。私の目はごまかせんぞ。
ラスボス戦。君を筋肉で救うRPG。
ラスボス戦を終えると平和が訪れ、ドラゴが正気を取り戻す。彼は自らの心の弱さを打ち明け、今までの非道を懺悔する。リングはそんなドラゴを赦し、元通りの関係に戻る。見事な大団円である。
長い旅路の果てに、そして最も過酷な身体的負荷を強いられるラスボス戦を乗り越えた末に辿り着いたエンディングなので、達成感と感動もひとしお。「私ってこの二人にこんなにも情が沸いてたんだ……」と気づかされた。リンドラてぇてぇなあ。マジで幸せなってほしいわ。
以上、「リングフィットアドベンチャー」は「引きこもりだけど運動してえ!」「濃い"関係性"を見てえ!」という需要を同時に満たしてくれる良ゲーでした。似たような需要を抱えている方にはオススメです。
ピクシブにリンドラ二次小説あるかな。探してみるか。