ラトナラジュ~ルビー
ラトナラジュ~ルビー
宝石の中でも赤いルビーは、ずっと憧れていた石。
鮮やかな赤は、光を反射して愛らしいベリーのようにも見える。
まるで大人の女性と少女が入り混じったような、不思議な魅力を醸し出す。
今回はそんなルビーにまつわる胸キュンストーリーをお届けします。
今日は定時上がりのはずだったのに、僕が小さなミスを連発したせいで
けっきょく残業になってしまった。
最後の資料を保存して、エンターキーを叩いたところで携帯が鳴った。
「おう、久しぶり!今から軽く飲みにいかないか?」
高校からの友人コウジからの電話だった。
「あぁ、そうだなぁ、まぁ、予定もないしいいよ。」
まぁ、ヤローとつるんだところで面白くはないのだけど、
どのみち遅くなってしまったんだし、コウジと会うことにした。
待ち合わせ場所に行くと、先に来ていたコウジと隣には見覚えのある顔が。
彼女は・・・
僕に気付いたコウジが手をあげる。
隣の彼女も笑顔で手を振る。
「えぇーと・・・なんで?ふたり?」
二人は顔を見合わせて
「いやー、先月同窓会あったじゃん?お前行かなかったけどさ、そん時に偶然となりに座ってさ。」
あぁ、そういや、同窓会の案内きてたな。
ぼんやりと思い起こす。
「で、まぁ、コイツも俺も余りもん同士ってことでさ」
「ちょっと、何よそれ!」
彼女がぷっとむくれる。
「ま、そういうこと。」
「そっか」
僕は笑いながら「良かったな」とコウジの背中をバンバン叩く。
「ってーな!」
「あはは」
彼女の笑顔を目の端で見ながら・・
ふっと時間が大学時代へと遡る。
コウジと僕がいつも入り浸っていたカフェでバイトをしていたのが彼女だった。
同じサークルだと知ったのはしばらく経ってからのことだった。
屈託のない笑顔が印象的で、その笑顔が見たくて店に行ったものだ。
今思えばしょうもない事に落ち込んでは、その笑顔に元気づけられた。
特に進展もなく、そのまま仲良しの三人組で卒業を迎えたのだった。
店で二人の向かいに座って、他愛のない話をしながら
彼女を眺めていた。
昔より痩せたか。いや、髪が伸びたせいか。
笑った顔はやっぱり屈託なくて、大人な雰囲気の中に混在する少女に
ドキリと胸が鳴る。
(いやいやいや、、友達の彼女だろうが。)
自分でツッコミを入れる。
彼女の耳もとでキラリと何かが光る。
(あ、ピアス。)
それは真っ赤なルビーのピアスだった。
動くたびにロングチェーンがしゃらりと揺れて、ルビーが輝く。
無邪気な笑顔に添えられたルビーの輝きは、彼女の魅力を引き出すには十分すぎる。
赤は子供の色だと思っていたけれど、今はそうじゃないと思う。
よく・・・似合ってる。
楽しそうに笑いあう二人を見ながら、
あぁ、そうか。あの頃、僕は彼女が好きだったんだなと気づく。
赤いルビーがちらちらと心の灯を揺らす。
僕の親友と昔恋した女の子と。
幸せそうな笑顔は、そのまま僕の笑顔になった。
どちらも大切なものだから。
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