見出し画像

鉄道フェスティバル【ドイツ鉄道旅行2023】

 Nördlingenは1500万年前の隕石落下でできたリース盆地に築かれた町。中世の雰囲気を残し、観光客に人気がある。最近は「進撃の巨人」のモデルとしても知られている。私もこの美しい街を見たくて・・・・と言うわけではなく、駅に隣接するBayerisches Eisenbahnmuseum バイエルン鉄道博物館で開催されている"2. Nördlinger Eisenbahnfest" (第2回ネルトリンゲン鉄道フェスティバル)を目的に来たのであった。
 駅で待つことしばし、Donauwörthからのローカル列車が到着し、降りて来たのは親友のまっちゃん。ドイツ鉄道の本職の運転士である彼は筋金入りの鉄道ファン、日本の鉄道も大好きで、特に三陸鉄道が大のお気に入り。
 まっちゃんとの再会を喜んだところで、フェスティバルのチケットを買い、駅の脇に留置された車両たちを見ていく。無造作に置かれているだけにも思えるが、ドイツ鉄道の歴史を彩った車両達である。しかも本職の解説付き、例えば貨物用電気機関車E94であれば、これは何両が作られて、そのうち何両は改造されて前面窓の形状が変わっていて・・・・といった具合である。

西ドイツを代表する急行列車用電気機関車103形と112形
貨物用電気機関車E94 (左がオリジナル仕様、右が改造後)
引退が進む111形も博物館入りしている
西ドイツのローカル線の主役であったレールバス
重貨物列車に重用された151形電機機関車

 一通り見たところで、少しだけ町を取り囲む城壁を散歩する。

 駅に戻ると、到着した列車から降りてきたのは、まっちゃん父。彼も東ドイツ時代から統一後まで長年鉄道運転士を務めたプロフェッショナルである。
 鉄道フェスティバルのメイン会場へ向かう。駅からは陸橋を超えて、線路の反対側へ歩くこと5分あまりで着く。ここは古い機関庫を利用した博物館で、多数の蒸気機関車を多数所有し、動態保存機も多いことため、世界中の鉄道ファンから人気がある。
 会場内は鉄道ファンや家族連れで賑わっており、熱心に機関車にカメラを向ける人も多いが、日本の鉄道イベントに比べると、のんびりした雰囲気である。機関区内では飲食スペースがあり、ソーセージやステーキなどが販売されている。我々もここで腹ごなし。快晴ということもあり、屋外にはビアガーデンも設けられ、日差しを浴びながらビールグラスを傾けつつ談笑する人も多い。

 構内には多くの蒸気機関車が集結し、入換も行われている。本線上では臨時列車も運行されているが、私は二人の解説を受けながら、資料用の写真撮影に集中。特に、最近凝っている44形をじっくり眺め、運転台にも立ち入ることができたのは収穫であった。

バイエルン邦有鉄道を代表する急行旅客用のS 3/6
ドイツで最も有名な01形蒸気機関車 (ボイラー換装後) 
貨物列車用の41形 (東ドイツ時代にボイラー換装を受けた仕様)
貨物列車用の44形 (西ドイツでボイラー換装を受けた仕様)
7000両以上が製作され、世界で最も製造数が多いと言われる蒸気機関車52形
(東ドイツでのボイラー換装後)
ドイツを代表する貨物用蒸気機関車50形と44形
西ドイツで最後まで残った蒸気機関車である44形
44形の運転台
44形の運転台
44形重油焚き仕様の巨大なテンダー
東ドイツ仕様の44形
ローカル線で活躍した64形が並ぶ

 夕方になり、そろそろ鉄道フェスティバルも終わりの時間。名残惜しいが、駅に向かう。線路を超える陸橋上を歩いていると、朝乗った64形牽引の特別列車が駅に入線するところであった。

 我々はNördlingenを17時21分に出るローカル列車に乗る。終点のDonauwörthまでは30分の旅である。車内では、まっちゃんの鉄道仲間に次々と遭遇する。Donauwörthで、まっちゃん父とはお別れ。

Siemensの最新型電車 "Mireo"
Augsburg Hbfの駅舎

 まっちゃんと私はHamburg-Altona発München Hbf行ICE 1707に乗る。7両編成を2本併結したICE-Tによる運行で、幸いにも2等車に空席があった。

 ここまで定刻通りだったが、長距離列車の定時運行率が60%を割り込み、あまりの遅延ぶりに社会問題のまでなっているドイツ鉄道がこのままで済むはずはなかった。何やら運行情報を確認していたまっちゃんによると、Augsburg-München間でトラブルが発生していて、線路が閉鎖されているとのことだった。とはいえ、ジタバタしても仕方がない。Augsburg Hbfには19時前に到着し、このままMünchenへ向かうまっちゃんと別れて下車する。

 まっちゃんから送られてきた追加情報では、長距離列車用の複線のうち、片側の線路閉鎖は解除されたが、まずはMünchen方面のICEをまとめて通して、その後Stuttgart方面のICEを通すことになったとのこと。情報通り、München方面のICEばかりが発車していく一方、Stuttgart Hbf方面のICEはなかなか来ない。
 ようやく列車が来ようかと言う時、突然のホーム変更があり、1番線で待っていた多くの乗客と共に隣の2/3番線ホームへ大移動となる。
 列車は軒並み1時間以上の遅延になっており、最も早く入線して来たMünster行ICE 512に乗る。車両は12両編成のICE 4である。車内は混雑しているが、1等には空席があった。こういう時は収容力のあるICE 4は威力を発揮する。
 しかし、なかなか発車しないと思ったら、後から入線して来たICE 2912が先に発車していく。Augsburg Hbf発車時点では1時間半の遅れになっていたが、それでも発車すると快調に走る。

 お腹が空いたので、食堂車"BordRestaurant"をのぞくが、予想通り満席である。Ulm Hbfで席が空くかもしれないと思い、Ulm到着前にもう一度行ってみると、空席はあれど、雰囲気がおかしい。隣接の売店もシャッターが下りており、営業していないようだ。諦めて自席に戻ると、しばらくして車掌のアナウンスが入り、BordRestaurantのスタッフがStuttgartで降りなくてはならないため閉店した。ただ、代わりのスタッフが乗車するのでStuttgartを発車したら営業を再開できる見込みである、とのこと。周りの乗客は、DBの手配だからねえ、と苦笑している。
 車掌が回った際に、クレームを入れる乗客もいましたが、車掌も謝りつつ、私ももう13時間も働いているのよ!と返すあたり、負けていない。
 列車は開業したばかりの高速新線を順調に走り、少しずつ遅れを取り戻している。Stuttgart Hbfで方向転換して発車。

BordRestaurantの営業も無事に再開されが、目的地のMannheim Hbfまでは30分あまり。諦めて席に留まる。22時前にMannheimに到着、元々の予定よりは40分遅れたが、これくらいで済めば上々であろう。

 空腹と口渇に襲われて、駅前のお店でドネルとビールで遅い夕食とする。こういう時に、すぐに食べられて美味しいドネルは有難い存在である。

 ホテルに着いたのは23時前、朝から27000歩近く歩き疲労困憊であったが、充実した1日であった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?