人形の国/弐瓶勉

『BLAME』、『シドニアの騎士」で知られる弐瓶勉の最新作の舞台は、生けるものたちの繁栄を拒む白銀の世界だ。

体積の大半が地底空間で占められている人工天体アポシズム。地底との戦争に敗れた人々は酸素も薄い極寒の地表部分で暮らしている。

攻撃的な自動機械や、現在の連載では詳しく説明されてはいないが、読み切り版で ”体が少しずつ機械に置き換わってしまう病気”だとされている「人形病」などに苦しめられながらも、なんとか人々は生き延びている。

そんな過酷な状況の中で、主人公のエスローは圧政を強いているリドベア帝国の兵士に追われている自動機械の女の子、タイターニアを助けてしまう。タイターニアから正規人形に転生するための「コード」と謎の銃弾を預かったことがきっかけとなり、いままで暮らしていた城は帝国軍により破壊され、仲間たちのそのほとんどが殺されてしまう。

自身も瀕死に追い込まれたエスローはタイターニアの力を借り、「コード」によって強化骨格に覆われた正規人形に転生するが...。


本作では、人形病、自動機械、正規人形(転生者とも呼ばれている)、ヘイグス粒子などの独自用語が多数登場し、SF的な世界観を豊かなものにしています。耳慣れない単語を咀嚼しながら、日常とはかけ離れた世界観に没入していく。

手探りで頭の中に新しい世界をインストールしていくという営みは、SFというジャンルの魅力の一つだと言えるでしょう。また、広大な白銀の世界でこれでもかという程に大きいスケールで展開されるアクションシーンは、否が応にもわれわれを物語の世界へと引きずり込みます。


独特の世界観や物語の謎を楽しめるのと同時にキレのあるアクションが魅力的な本作は、ただのアクション漫画では満足できない人にオススメの作品だと言えるでしょう。ぜひ手に取ってみてください。

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