狭い世界のアイデンティティー/押切蓮介

「まんが道」「編集王」「バクマン」…いままで、漫画家や編集者に焦点を当てたマンガは少なくなく、多くの漫画家や編集者、そして読者が勇気付けられてきたのではないだろうか。

そして2017年、「ハイスコアガール」「ピコピコ少年」で知られる押切蓮介が、この聖域に文字通り"殴り込み"をかけた。それが今作、「狭い世界のアイデンティティ」。

[あらすじ]
マンガの持ち込みをした結果、串刺しにされてしまった兄の仇を討つため、そしてマンガ業界を"暴力"でのし上がるため、神藤マホは新人漫画家として最凶の出版社「件社(くだんしゃ)」に乗り込む...


マホが乗り込むマンガ業界は、”世紀末”だ。
この世界では、出版社主催のパーティーも、編集者と新人持ち込みのやりとりも、作家とアシスタントの衝突も、作家同士の交流も、すべてが"暴力"によって治められていく。

人気マンガ家が強いのか、稼いでるマンガ家が強いのか、彼らの強さの基準が明確にされていない。その都合の良さが清々しい。ああ、清々しい。いっそのことスカウターが使えるメガネキャラが登場して、毎回メガネがふっとんで欲しい。

タイトルの「狭き世界」とはマンガ業界を意味し、「アイデンティティー」とは、作家を作家たらしめるもの(ファン・売り上げ・知名度・自意識)といったものを意味しているのだろう。

押切蓮介なりの”マンガ家観”をふざけつつもシリアスかつ暴力的に描いてくれることを期待し、震えて眠ろう。
そして、マンガ家になろうとしている君、拳を握れ!!!!

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