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オードリー若林氏のグランピング事件から考えるキャンプブームとメディアの功罪

はじめに

本来なら自前で運営しているブログにエントリーするところですが、オードリー若林氏も利用されているnoteに投稿してみることにしました。


いつものように登山トレーニングをしつつ、2020年10月31日放送回「オードリーのオールナイトニッポン」をradikoで聴取していた時のこと。若林氏がフリートーク枠の中で奥様とグランピングに行った、というお話をされていました。
ところが自身がイメージしていたグランピングとは違い単なるコテージ泊だったために困惑してしまったのだとか。とは言え、火おこし体験などを通じテンションを少しずつ持ち直し、最終的には満天の星空と紅茶を楽しまれたそうで他人事ながらホッと胸をなで下ろしました。


ご興味ある方は一週間以内であればラジコで聴取可能ですが、間に合わなかった場合は動画共有サイト(46分頃から)に違法アップロードされたものがあるとかないとか、、、

そもそもどうしてグランピングをしたいのにコテージ泊というミスマッチが起きてしまったのか、その後の春日さんのフリートークを上の空で聴きながらわたしはしばらく考え込んでいました。


世界の片隅からアウトドア情報を発信している身として、これは簡単に流してよい話ではないぞ、と自戒したのです。結論として、やはりこれには近年のキャンプブームとメディアの功罪が少なからず関係しているのではないかと。


こんな事言うと「生意気だな」って言われちゃうかもしれませんが、今回はこの「オードリー若林グランピング事件」を通じキャンプ業界が抱える課題を深掘りしてみたいと思います。


グランピング事件の概要

・ヒルナンデスでのグランピング施設「THE FARM」の取材やバイきんぐ西村氏のプレゼンによってキャンプに興味を持った
・ビギナーなので手ぶらで楽しめるグランピングが良いと考えた
・直近で連休が取れたので施設を予約したいが、ブームの影響でなかなか空きが見当たらない
・多忙につき自分では手配できそうもないので、奥様に空きのある施設を探してもらうよう依頼
・ようやく空き施設が見つかったが奥様から「二階のある施設でも問題ないか」という確認が入る
・これが何を意味するのか若林氏はよく分からなかったものの、ようやく見つけた空き施設だったので「すぐに予約してくれ」とGOサイン
・当日、グランピング施設の受付に行くと、別の受付棟に行くよう誘導された
・ここで不審に思ったが、おとなしく指示に従い移動して受付完了
・案内された予約施設に向かうとそれは紛れもなくコテージであった
・グランピング=テント泊とイメージしていた若林氏は困惑
・奥様から「怒ってますよね?」と指摘されるも若林氏はそれを否定
・しかしながら受付から一切言葉を発していないことを奥様より指摘される
・結婚後、3年間は自分では受け入れがたいことも「呑み込んでいこう」という意思を固めていた若林氏
・今回の件も当惑したが、吞み込むことにした
・コテージ泊に納得はいかないものの、火おこし体験で気をよくした若林氏
・夕食の時間を後にずらすほど焚き火を楽しむ
・奥様から「花火の時もそうだったし、火を見るとテンションあがりますよね」と再度指摘される
・一日を終え、コテージ二階の和室で就寝することにしたが、なかなか寝付けない若林氏
・毛布と熱々の紅茶をもってコテージの屋上へ
・椅子に腰かけ視線を上げるとそこには満天の星空が広がっていた
・最高だった

最終的にはめでたしめでたしなわけですが、グランピングがしたかった若林さんのイメージとは当初かけ離れていたようです。では、なぜこのようなミスマッチが発生してしまったのでしょうか。


グランピングはただの概念

発注側(若林氏)も受注側(奥様)もグランピングが何を意味しているのかよく分かっていない、これがまず一番大きな問題点だと思うのですが、「グランピングに行きたいから予約して」という依頼内容(実際のやりとりはむろん不明)はあまりにも漠然としているです。


例として正しいのか自信はありませんが「映画に行きたいから座席予約しておいて」あるいは「スポーツしたいからグラウンド予約しておいて」などというオーダーが成立しない、と言えばご理解いただけるでしょうか。


つまりグランピングとは概念に過ぎず、なんら具体性を伴わないワードなわけです。むろんコットン生地のテントにペンドルトンのカーペットを敷き、ふかふかのベッドやソファで快適に過ごし、豪華なBBQと焚き火を楽しむといったようなゆるい共通認識はあるでしょう。


しかしながら、そもそもこれは近年生まれたばかりの造語に過ぎず、
何をもってグランピングと呼ぶのか正式な定義すら定まっていない、非常に曖昧な存在でもあるのです。そんなグランピングという漠然とした概念だけが独り歩きし、TVを代表とする希釈が得意なメディア(幅広い層にリーチしやすいという意味)によって拡散された結果、このようなミスマッチが発生してしまったのではないでしょうか。


では若林さんはどのように奥様にオーダーすればよかったのでしょうか。
まず絶対条件としてテント泊がしたいことを奥様と共有しておく必要があったでしょう。それもノルディスクを代表するようなベル型やティピー型のコットンテントがお望みだったはず。そこで優雅にお酒やBBQ、焚き火などを手ぶらで楽しめるプラン、おそらくこれが若林さんのイメージするグランピングだったはずなのです。


つまりこれはパブリックなグランピングのイメージとも大きく違っていない。ただ、それが若林さんよりも興味の温度が低いと思われる奥様に正しく伝わっていなかった、すなわちこれは単純にコミュニケーション不足の問題とも言えましょう。


唯一の救いは望み通りでない事態にも、「吞みこむ」ことでモラハラまがいの癇癪を起さず、状況を受け入れた若林さんの柔軟な姿勢。
せっかくの余暇・行楽がささいなボタンの掛け違いで台無しになってしまう、なんてことはどこのご家庭でもあるトラブルかと思いますが、それを回避できたのは天晴れでした。


キャンプ場予約システムのUI(ユーザーインターフェース)問題

もちろん若林ご夫妻の勉強不足も否めませんが、キャンプ場予約システムのUI、あるいは導線と言い換えてもいいでしょうか、これに問題はなかったのかというのも気になるところ。
グランピング目的のユーザーがなぜコテージ泊の予約をしてしまったのか?
グランピングサービスを提供しているキャンプ場であれば、IT化にも対応されているはずですが、そのUIは適切だったのか?


一つでもこうしたミスマッチ案件を減らすには、予約システムという入口の整備をビギナー目線でアップデートし続ける努力も必要なのかもしれません。そもそもコテージ泊はグランピングの定義から外れるのか、というのも難しい設問でありますが。

キャンプブームとメディアの功罪

ご自身が比較的精通している分野が、例えばTVや週刊誌などで紹介されている時、「ずいぶんと浅い情報だなぁ」と感じたことってないでしょうか。
ここ数年続くキャンプブームの影響もあり、TV番組あるいはweb上の記事でもキャンプをテーマとする内容が飛躍的に増えたように感じています。


すると老若男女が理解しやすいよう、事細かにビギナー目線の解説が展開されるわけですが、情報の偏りを感じる場面もしばしば。
例えばコールマンのエントリーテントを紹介していたと思ったら、突然ビギナーには不釣り合いな数万円もする焚き火台やテーブル、チェアなどを紹介してみたり。
グランピングを特集していたかと思えばブッシュクラフト寄りのソロキャンプ特集をしてみたりという、なんとも極端な振れ幅。


むろんどのメディアも少しでも多くの耳目を集めることが目的ですから、エッジの効いた情報が重宝されるのも理解はできますが、中にはある程度リテラシーが要求されるようなことも。とは言え大きなメディアがキャンプ人口の裾野を広げる一助になっていることは間違いない事実。
よって我々アウトドアを主戦場とする小規模メディアはこれらを補完しつつ上手く共存共栄していきたいものです。


総括

要点をまとめると、、、
・グランピングはただの概念
・だからこそキャンプでは何をしたいのか、が最重要
・キャンプ場予約を人任せにする時はしっかりとコミュニケーションを
・テレビや週刊誌など専門メディア以外の情報は鵜呑みにしないのが吉

わたしなりのアドバイスとしては若林さんクラスなら「星のや富士」あたりからはじめると良いのかもと思ったり。
若林さんご夫妻が今後もより良いキャンプライフを送れますように。

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