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日本は世界最大の純債権国です

対外債権の中身は

タイトル通りの話である。この事実を知らない人も多いことだろう。純債権額は対外債権額から対外負債額を差し引いて求める。国際比較をすると、2022年末の純債権額は日本が3.1兆ドル、2位のドイツが2.9兆ドル、中国が2.5兆ドルで3位と続く。世界一なのでなにやら誇らしい気分になる。

財務省の統計から対外純資産(2022年末)の内訳を見ると、総額418兆円のうち直接投資が228兆円、政府が保有する外貨準備が162兆円、証券投資が73兆円である。対外純資産と言うと、かつては生命保険会社による外債投資をイメージしたものだった。巨額の資金を運用する日本の生命保険会社は「ザ・セイホ」と呼ばれ国際金融市場で一目置かれる存在であった。

単位:10億円

直接投資は東日本大震災後に増え始め、2014年には証券投資を追い越した。急増の要因として、震災によって国内のサプライチェーンが寸断したこと、原発停止による電力供給が不安定になったことが挙げられる。こうしたリスクを回避するため多くの企業が生産設備を海外に移転した。その後、円安の進行にもかかわらず直接投資は増加し続けている。

実感のない世界一

対外純資産が世界一という割には個人レベルで豊かさを感じられないというのが多くの人の実感であろう。実感のなさは家計における金融資産の保有形態から説明がつく。日本銀行が作成する「資金循環統計」から対外証券投資(2022年末)、総額693兆円の中身を確かめよう。

対外債権を保有していると感じられる形態は、家計による直接的な保有(3.5%)と投資信託(17.6%)であろう。合わせると2割である。政府による保有(38.4%)の中身は外貨準備と公的年金であるが、外貨準備は家計とは関係がない。

家計と関連はあるが実感できない形態として、まず預金取扱機関による保有(18.6%)が挙げられる。もう1つは保険・年金基金による保有(20.1%)である。これらの機関による対外証券投資の原資は家計からの預金と保険料である。

しかし、預金利子がほとんど付かないような状況なので資産保有の豊かさを実感しようがない。また、年金基金については年金を受給するまで運用のリターンを受け取れないため、現役世代の間は豊かさを実感できない。

家計における金融資産の保有形態は預金の比率が半分余り、そして次に比率が高いのは保険・年金が来る。これでは対外純資産が世界一と言われてもピンとこないはずである。対外純資産を実感するには、年金基金のポートフォリオをのぞいて外国株式、外国債券への投資比率を確かめるといいだろう。

参考文献

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