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10/8(金)の「ガイアの夜明け」が最高だった話

しぶちょーです。
まず、簡単な自己紹介からさせていただきます。私は工作機械メーカーに勤める機械設計者です。工作機械の新機種開発に従事しております。また個人的な活動として、Twitterやブログにて技術関連の情報発信を行っています。

普段は上記のブログをメインに発信を行っていますが、元々noteでの情報発信にも興味を持っていました。10/8(金)に放送された"ガイアの夜明け"をみて非常に刺激を受けたので、せっかくなら感想文を書いてみようと思い立ち、本記事の執筆に至った次第です。稚拙な文章で恐縮ですが、よろしければお付き合いください!

番組概要

番組を見てない方の為に概要を記載します。

◎家食需要で肉の売り上げ急増 スーパーと食肉スライサー物語
静岡県にある「スーパーベイシア」が、リニューアルオープンを控えていた。これを機に新たに肉を薄く切る食肉スライサーの導入を決定。肉売り場を拡大し、オープンの目玉として国産和牛のセールを目論んでいた。その食肉スライサーを製造するのが、大阪にある創業1925年の「なんつね」。日本で初めて肉の薄切りスライサーを開発した業界最大手だ。スーパーなどへの販売で過去最高の売り上げを記録。こだわりは肉の部位によってスライスする厚さが変わる、わずか0.1ミリの違い。しかしスライサーの部品は数百点にのぼり今、請け負う地元の町工場の多くが後継者不足など様々な問題を抱えていた。いつまで部品を安定的に確保できるのか、頼ったのがベンチャー企業のキャディだ。開発したシステムで、最適な町工場を全国から瞬時にマッチング。日本のものづくりの常識が変わろうとしている。
引用:テレ東BIZ HP

良かった点(1) 
番組の流れが最高だった

とにかく番組の"流れ"が良かったですね。ハッキリ言って最高です。食肉スライサーや工作機械などの”生産財”と呼ばれる機械は、普段は日の目をみることはありません。一般大衆の目に触れないところで、縁の下の力持ちとしてひっそりと活躍しています。しかし、この番組では、"日常生活"と"生産財"との関わりが順を追って非常にわかりやすく取り上げられていました。

概要にもあるように、番組は「スーパーベイシア」のリニューアルの話から始まります。リニューアルの目玉として業務用の食肉スライサーを導入したという話から、話題はスライサーメーカーの「なんつね」に移ります。コロナ禍で自宅での食事が増えた影響で、食肉の売り上げが倍増し、それに伴って、食肉スライサーの需要も高まっているとのこと。需要が増える一方で、スライサー用の部品の調達に課題を抱えており、それを解決するためにベンチャー企業"キャディ"が登場します。

実際にキャディが調達した部品が納品され、スライサーが出来上がる。そして、そのスライサーを使用して切った食肉がお客さんに届く。そういった一貫したものづくりの"流れ"を学べる良い番組でした。

私も工作機械という生産財の設計をしていますが、こういう流れを最後まで見る機会ってないんですよね。自分が作った機械が「何を加工して、どんな活躍をしているのか」を具体的に目にする機会ってほぼ皆無なんです。生産財が日の目を見たという意味で、非常に貴重な番組でした。仮に私がなんつねの機械設計者ならば、この番組を録画したBlu-rayを6親等の親族くらいには配布しますよ(笑)

良かった点(2) 
キャディが最高だった

株式会社キャディは創業4年目のベンチャー企業。「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」をミッションに掲げ、製造業の調達関連のDXに取り組んでいる会社です。

今回の特集の主役がこの"キャディ"です。この会社が提供しているのは、製造業のための"受発注プラットフォーム"です。キャディに図面を渡せば、瞬時に最適な見積もりを出し、最適な工場を見つけて、発注・検査・納品まで行ってくれます。"図面を自動で解析して、最適な工場を見つける"という部分にキャディ独自の技術があり、そこがこの会社のコアです。番組内では、マッチングサービスとして紹介されていますが、厳密に言うとマッチングサービスとは少し違ったビジネスモデルを持っています。

番組を通して見えたのは、キャディが持つ良い意味での"泥臭さ"でした。社長自ら、リュックを背負って町工場に出向く。実機を前にして、人同士が打合せを行う。加工を依頼する町工場に出向いて立ち会う・・・など。ものづくりを行う上では絶対に欠かせない現地・現物・現実の"三現主義"。これを愚直に行う泥臭い姿には感動すら覚えますね。ものづくりを知っている人が見れば、誰もが「そうそう、これが大切なんだよ」と言うと思います。

図面解析や自動コスト計算、マッチングといった最先端のITベンチャーでありながら、製造業特有の泥臭さも持ち合わす異質なベンチャー企業キャディ。これがまさにこれからの製造業のDXの姿なのかもしれません。私は個人的に、ものすごくキャディが好きなのでこれからも期待したいですね。

番組から学んだこと

”技術が良いだけでは、お金は稼げない”

良い技術を持っていれば、必ず良い結果が出るかといえばそうではありません。商売である以上、必ず"営業活動"が必要になってきます。町工場では素晴らしい技術を持っていても、それを活かす機会を作る"営業力"が無ければお金は稼げないのです。そして、そういったノウハウを持っている企業は少数であり、埋もれている企業も多いのが現状です。

実際、工作機械を購入するお客様でも"念のため"スペックの高い機械を買うという方が多いです。例えば、工作機械の中でもハイエンドの同時5軸加工機。(下記は同時5軸加工の例)

実は、同時5軸加工機を買って、実際に同時5軸加工機能を使っているお客様は1割程度です。残りの9割のお客様は、「もしも、そういう仕事が来た時に対応できるように・・・」という理由で高い機械を買うという"待ちの姿勢"です。機械のスペックを100%活かせているお客様は少なく、それは言い換えれば、自社の強みを理解していない町工場が多いともいえるかもしれません。

工作機械業界でも、そういった面は問題視されており、メーカーがサービスの一環としてお金の稼ぎ方までコンサルティングするケースも出てきました。例えば、某工作機械メーカーではお客様が"医療用部品加工"の分野の仕事を請け負うためのコンサルディングを行っています。医療用の部品は、航空機産業同様に部品一つ一つに非常に細かいトレーサビリティを要求されます。納品時に必要な書類も通常とは異なりますので、そういった細かいルールや法的な対応も含めて、全てコンサルティングしてくれるサービスです。

このように、機械メーカーは機械単体を売るのではなく、『付加価値を生み出す環境』を売る時代に突入しています。しかしながら、メーカーが提供できるその"環境"は、現時点では機械周辺の狭い範囲でしかありません。お客様の困り事は、機械の外にも、山ほど転がっています。その事実は、今回のガイアの夜明けを見ただけでも容易にわかります。そして、そういった困り事を根本から覆すような仕組みを作ろうとしているのがキャディです。期待せずにはいられませんよね、これは。

「モノづくり産業のポテンシャル解放」というミッションは、彼らに限ったものではなく、我々のような生産財メーカーも真剣に考えていかなければならないことだと感じます。ものづくりに携わる全ての人が、自分の得意なことだけに注力できれば、それがものづくり産業の『最大出力』です。その最大出力を出す為に、今の自分の立場から、何が出来るのかを考えて、自分の仕事に落とし込んでいく必要があると強く感じました。

長くなりましたが、結論としては今回のガイアの夜明けはめちゃくちゃ面白くて、最高だったというお話でした!!

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