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【番外編】ジェフ千葉vs琉球

ついに、悲しいことに、残念ながら延期が決定したJリーグ。だからと言って指をくわえてオネンネするのも勿体ない。じゃあ折角なので、友人がサポーターをやっているジェフ千葉を、セレッソに2冠をもたらしてくれた尹晶煥が監督をやっているジェフ千葉を観てみよう!ということで初めてフルタイム観戦。そういったささいなきっかけで観始めたのだが、「ん?琉球のサッカーもなかなかポジショナルプレーのエッセンスを落とし込んでいて面白いぞ」とか「尹体制の選手交代せずに4バックから5バックへのシフトを担うのはSHとSBを兼業できる米倉か」とお互いに様々な意図が見え隠れして面白い試合だった。(正直言うと、個の殴り合いの要素が強かったチェルシーvsユナイテッドよりも面白かった。個のレベルに感嘆した回数はPLの方が圧倒的に多いけどね・・・)じゃあせっかくなので桜ログに残しておこうか、ということで番外編。1度しか見ていないので、多少違っても悪しからずですm(_ _)m

【4-4の小さな毛布で守る千葉vsSH-SB-CB-IHのユニット間を狙う琉球】
試合展開としてはキックオフの流れから千葉が幸先よく先制して守り切ったと言えばそれまで。だが、結果は結果として置いておき、まず試合後の樋口監督のコメントを抜粋すると「アクションを起こしながら常に自分たちが主導権を持って戦うんだ、あらためてそういうサッカーで勝つんだということを強く思っています」とのこと。実際に琉球はポゼッション率が68.5%と高い数字をたたき出していた。そんな琉球のスタイルは明確で、4-4のブロック間のハーフスペースで茂木や河合のOMFが、SBとSHの間で沼田とF・タバレスが何度も繰り返してボールを受けていた。この立ち位置は「誰が1stDFとしてチェックに行くの?」という認識が遅れるので、相手からのプレッシャーを緩めることができる点で有用だ。実際に横浜FMの日本代表DF畠中もビルドアップではこの中間ポジションを取るように気を付けており、そうすることで相手のプレッシャーを軽減してビルドアップできる、とコメントしていた

そんな琉球の次の選択肢は2つ。相手のSBやSHの食いつきを見て背後を取るのか、大外からのセンタリングだった。これだけで何度もチャンスを作り出しており、決まっていれば試合はひっくり返っていただろう。あくまでも結果論だが、最後だけが遠かった。

明確な意図と再現性を持って臨んだ琉球が結果的に無得点に終わったのには後付けながら理由付けもできる。この試合において、尹ジェフはおそらくキャンプ以降で最も時間を割いたであろう極薄4-4ライン+2ボランチの手前までFW2枚が引くことで対応してきた。海外ではこの4-4のラインを寸足らずの布団(逆サイドにまで届かないので)に例えるらしいが、まさにそんな丈の短い布団によって、時間が経つにつれて琉球は窒息死して行った。まず肝心なのはクレーベと川又のポジショニング。通常、DFに対してFWをぶつけることが多いが、尹ジェフはDFを”あえて”無視した。代わりにFWをボランチからのビルドアップの壁にすることで、ボールを持って相手を引き出してスペースを空けさせたい琉球の2DFをビルドアップから分断することに成功した。

結果的にこの堅牢な守備を敷くことで、琉球がどれだけセンタリングを供給しても中央の人数が4~5枚程度なのに対して千葉は最大8枚セットしている。阿部は足元もヘディングもそつなくハイレベルでこなせる選手だが、ヘディング一本必勝!とまではいかないFWだ。結果的にこぼれ球などから琉球はシュートまでは持ち込めてもゴールを決めることはできなかった。また尹ジェフは結果的に立ち上がりの先制点を死守して勝ったが、勝利を手繰り寄せるためのポジションチェンジや交代もしっかりとハマっていた。ポイントは以下の2点だろう。
①尹ジェフは短い時間だったが、後半途中から守備に追われていた堀米と米倉のポジションをチェンジした。元々SB経験豊富で守備もハイレベルな米倉と攻撃に強みを持つ堀米は守備のタスクでどうしてもアンバランスなSHの組み合わせだった。この米米CLUB(倉と堀)から先制点を取ったものの、後半途中から堀米がF・タバレスをつかみ切れずに裏を取られるシーンが続いていた。そこで米倉と堀米の左右を入れ替えることで琉球の右サイドの攻撃による流血を防いだ。
②尹セレッソの勝ちパターンとしてFW山村をCBに下げて5バックにすることでクローズするシーンはセレサポにとってお馴染みだと思うが、尹ジェフではその役を左右のSBとSHを兼任できる米倉が担いそうだ。ジェフは守備に追われて足が止まってきたことで、4-4のラインは堅持しているものの、琉球のセンタリングを供給するサイドアタッカーへのアプローチやドリブル突破への対応が遅れてきていた。そこで①でLSHに入った米倉は残り30分と試合がまだ1/3も残っている段階でRSBに下がり、川又がLSHに配置されてジェフは5-4-1へ変更して長い籠城作戦に入った。この戦術になってもしっかりとタスクを敢行するクレーベはfor the teamの精神に溢れており、実に素晴らしい選手だった。本当は点を取りたいはずなのに・・・

その後も琉球はサイドからの攻撃を何度も試みたが、5-4-1をなかなか打ち破れない。そこで琉球は残り10分になると小野や風間を投入して引きこもる相手を引き出すセオリーであるミドルシュートを撃ったものの奏功せず。結果的に1-0で千葉の勝利となった。

【まとめ】
結果論だが、琉球が負けた理由は「常に保持していたものの、ゴール前を数的不利で戦わなければならなかった」ところだろう。開幕戦で新戦力もいたようだが、ほとんど意図してボールを握り、何度もシュートを撃てており、攻撃面はほとんど完成されていた。じゃあ今後同じように堅守を敷かれた時にゴールを決めるの?となると、CBがどこまで前に出てビルドアップできるかだと思う。実際に去年のJ1ではFWからのマークが外れるチームの選手(進藤(札幌)、サンペール(神戸)、高尾(G大阪)、槙野(浦和)、山根(湘南/現川崎F))が高い頻度で攻撃に参加していた。なので千葉のFWまでもが引きこもっていたので、カウンターリスクはないのだから琉球CBがアグレッシブに前に出てよかったのでは?というのが試合後の感想だ。さらに、千葉の2枚のFWに対してボランチまで下がったシーンが見受けられたが、これも千葉の2FWが出て行かないので、いたずらに後ろに枚数がかかっただけで空回りしていた。この修正がもう少し早ければ琉球が勝っていたかもしれない。
一方、千葉は試合後の尹晶煥監督のコメント通り、今後どれだけ攻撃にエネルギーを割けるかが課題だろう。開幕戦は開始早々のゴールで先制できて守りきれたが、CKなどのセットプレーでは流れの中のシーンよりも数的優位な状況が生まれにくく、不測の失点の可能性はある。またミドルシュートも撃たれ続ければ失点する可能性だってある。ただ、これは長い旅が始まったばかりの開幕戦。ここ2シーズンで守備が固まっていなかった千葉だが、長いリーグ戦ではまず守備から入るのが尹晶煥流のチーム作り。今後はボールを取ったあとにサイドが攻撃の起点になれる仕組みを構築すれば、クレーベと川又という強力2トップが控えており、得点も量産されるだろう。中断期間が楽しみだ

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