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クソアホ

「クソアホ」
バイト残業帰り・睡眠時間2時間半の1日、駅から降りると自転車がもきゅもきゅの雪でかわいらしくデコレーションされてて草。いや雪。徒歩40分の道のりを雪道で全く使い物にならない愛機と共に短いブーツで歩く。私が帰るために力強く歩むと足に永遠に雪が入ってくる。自転車は水分を多く含むもったりとした雪をかわすことなく全て自身のタイヤで受け止めようとするので(真面目)、私が進むためには腕力と全身の推進力を要した。当然歩く速度がしだいにトボトボと帰る悲壮感溢れる人間みたいになっていく(私じゃねーか!)。
この𝓼𝓽𝓻𝓮𝓼𝓼𝓯𝓾𝓵な状況をせめてツイートしてやると思って信号待ちの間にカバンからスマホを探すがちょうど今日買った直径16cmの片手鍋の入った箱が邪魔をして全然見つけられないってなってるうちにおしっこもれそうになって私の自転車を漕ぐ手元とナトリウム灯があたりをドラマチックに照らす雪景色が写った写真と共に「バカアホ」とツイートすることすらできないというこの状況。だが、私は泣かなかった。そこまで辛いと思わなかった。私が絶望感に潰されその場でへたりこんだり気絶したりしないように感情にぶ厚い城壁を建てるよう脳が指示したということをこの時知った。なので私はただ無になっていた。運動になりすぎているので寒さは感じない。ギァァ…やクェェ…といったカスみてぇな音が普段は自転車でハァ、ハァいいながらもがんばって漕いだいつもの坂を登りながら漏れる、これが悲壮感の鳴き声だ。私の今ある障壁を1つくらいは解消しようと思いおしっこをしにコンビニを目指そうと思い立った。これはとても知的で利口な判断であった。
歩みとともに靴の中に入る雪は積み重なり、涙やつららの形をした透明感のある痛みが次々とつき刺さり私の足が赤く焼けるのを感じた。コンビニに自転車を止める。鍵はかけない。こんな誰が見ても分かる苦労と絶望の象徴はどう考えても絶対盗まれない。まっすぐトイレに向かいひと時の休息、500mlの炭酸やでけぇモナカアイスに身を投げ出そうかと一瞬思ったが、彼らのもつ一時的な快楽的な性質よりも今日ずっと夢想していた私のことを本当に想ってくれて長期的にみても私の糧となるじゃがいもとたまねぎとにんじんのことを思い出して我に返り、何も買わずにおしっこだけして出てった。家への道のりはあと少し。
寮の向かいの部屋に住んでる同級生が買い物から帰るのとばったり会い声をかけたが、この子は私の内側を分かってはくれない…と少し話して判断し、無言になったり一言二言話したりした。寮が見えてきた。私の足は感覚を失い、ぐにゃぐにゃと変形した。今日がんばってくれた自転車を判断力皆無となった私が激狭いところに停め(かわいそう)、寮の同級生に「タイミング悪く悲壮感の塊と歩くことになっちゃってごめんね…。」相手は「いいえ~」と言ってくれた。
そして今帰ってすぐ買ったものを冷蔵庫に入れるよりも先にこの文を打っている。ご飯食べないと死ぬ。春のすてきな象徴である自転車が、急に現れた冬の絶望によって一瞬のうちに重い鉄の塊となり、脳が私の感情にバリアを張る決定的瞬間を捉えることができた、精神的物理的ストレスの大きな帰宅であった。じゃがいもに包まれて死のう。快楽と奈落の紙一重である酒やカロリーのバカ高い菓子などではなく、あたたかいじゃがいもに。(おわり)

202311/11 21:06からの「モボモボぬほほ生活 @mohohoman」のツイートより

写真はコンビニに寄った後に撮ったもの。

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