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農業について思うこと

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大学農学部卒業後、高等学校の農業教員を25年間勤め、2009年に47歳で有機野菜を生産直売する株式会社しあわせ野菜畑を起業しました。 この間、農業について学んだこと、考えたことを…
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2024年7月の記事一覧

お届けするのは「生きる力」

 温室やハウス栽培、あるいは農薬や化学肥料を使う慣行栽培と違って、露地栽培のオーガニック野菜は植えた野菜全部が大きく育つことは期待できません。  「オーガニック野菜は味が濃い、香りがする」、「オーガニック野菜でアトピーが治った、健康になった」などと言っていただけることがありますが、それは生産技術によるものではなく、オーガニックというフィルターを通して「生きる力」を持っている野菜が残ったという結果ではないかと思います。  太陽や風や病害虫に負けないで育ったということが、露地栽

足を洗う毎日

  毎日暑くて体中が汗だらけ、畑で仕事をすると、靴の間から入った土が汗と一緒になって足がとても汚れます。  昔、時代劇の水戸黄門などで、歩いて旅をして夕方に旅籠に着くと、たらいに入れた足を女中さんが洗ってくれるシーンがありました。  足を洗うのは、部屋に土を持ち込まないためだと思っていたのですが、汚れた足を洗うと疲れが取れて、気分がすっきりします。  単なる気持ちの問題なのか、東洋医学的に足ツボに関係しているのかはわかりませんが、シャワーや顔を洗うより、足を洗うと疲れがとれる

農業から学んだこと(その2)・・・「教えることは学ぶこと」

農業高校の教員時代に教えていた生徒が、環境大賞として県知事から表彰された作文です。 「教えることは学ぶこと」、そんなふうに思います。 7月15日投稿の「農業から学んだこと(その1)」の続編です。 最初にそちらからお読みください。 この作文は、生徒が読売新聞社の「農業に関する想い」(そんな感じの)コンクールに応募したいというので、いろいろなテーマを与えては書かせて、それをまとめて推敲してという手順で生徒が書き上げたものです。 良くできた作文だなぁと思いながら、生徒と一緒にポス

農業から学んだこと(その1)・・・「教えることは学ぶこと」

農業高校の教員時代に教えていた生徒が、環境大賞として静岡県知事から表彰された作文です。 「教えることは学ぶこと」、そんなふうに思います。   農業から学んだこと(その1) 静岡県立小笠高等学校 3年 中林由佳   「よし、それじゃあ、今収穫したトウモロコシを生のまま食べてみよう」、先生の言っているその話の意味が私は最初理解できませんでした。「きっと、だましているんだ」と思いながら、そっとかじった一粒の生のトウモロコシはとても甘くておいしく、私はとても感動してしまいました

有機農業の本質

当社は年間50品目の有機野菜を育てています。参考にしているのは農業高校の教員時代に行かせていただいたヨーロッパ環境保全型農業の視察研修です。 研修の中で感じたことは、日本とヨーロッパでは有機農業の捉え方が異なるということでした。日本の有機農業は無農薬で味が良いことを目的としていますが、  ヨーロッパの有機農業は「環境保全のために持続的な生産が行われること」(Sustinability)が目的です。その土地が本来持っている力で作物が作られていることが重要で、味が良いことは目的で