短くて恐ろしいフィルの時代
お友達にお借りして読んだ「短くて恐ろしいフィルの時代」。
オレンジ色の装丁がドキリと目を引いて、
「あの本読んだ?」「私持ってるよ!」と岸本佐知子さんのファン同士、貸して頂いた。
読んでびっくり。
とても政治的で、ファシズム、そしてジェノサイド?と
なんとも世相を反映している問題作じゃないですか?!
ある種、おとぎの国の様な、個性的な形の主人公達は、人間そのもので、、、、。
小さすぎて一度に一人しか住めず、自国に入るのに順番待ちをする小さい国、「内ホーナー」。
途方もなく広く、きっと世界で最大だと自慢し、国のカフェの通路でも脚をいっぱい伸ばしてコーヒーを飲む国、「外ホーナー」。
一見、ユーモアに富んだ滑稽なおとぎ話!?
嫌々、最後には「ゾゾゾ」としてきたのでした。
外ホーナーのややひねこびているという以外目立った所のないフィルという男が、内ホーナーのキャロルに恋をしていた。そして失恋した。
そこから、フィルは、内ホーナーに対する、「仕打ち」が過激になっていく。
そのうちフィルの時代(独裁者)になったのだが、、短かったのだが、、、、、。
独裁者は、自分一人ではなれない。周りも同調し、協力してなっていく。強いものに巻かれ、その時その時の空気を読み、変幻自在に変えられる周りの人々は、上手に呼吸を合わせ、寄せては返す波の様だ。と言っても「波状攻撃」の方で、ボディーブローの様に後から後から、その打撃が押し寄せる。
最初、絵本にしようとしていたこの物語は、かなり視覚的で、滑稽でややグロテクスな主人公の姿も、その他の登場人物の個性的な姿も、とても効果的だ。そして、絵本じゃなくなったのも効果的だ。読み手各々が想像できるから。
それが、この破天荒な形の登場人物達が、ある時から、なぜか私達と被ってくる。「嫌だな。」と思いながら。「嫌だなー。」と思っていたフィルとも、なぜか、自分が被ってくる。
嫌なやつもいい奴も、正しいことも悪いことも、加害者も被害者も、混ぜこぜ混ぜこぜ・・・・・。
急に壮大な宇宙みたいな話になって
原子に戻った気分になりました。。
おとぎの国にしては、オレンジのはずだ。逃げ出せない。逃げても目立ってしまう。いつか捕まってしまう。囚人服の色。それでもいつか逃げ出すことができるのか?壮大なこの宇宙の創造主から。
最後には、
逃げ出したい自分に気付き、
ちっぽけなのか、壮大なのか???
とにかくホラー好きな私にはハマった
「ゾゾゾ」のお話しでした。
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