えび

まだ生きてる


大きくて重量感のあるヒノキの板
まだ水槽から出たばかり、だという
活きのいい茶色の一匹

ここは何処かと
動かぬ顔に
戸惑う脚だけ控えめに動かす

バキッ

倍の長さの刃
殻を割る
大将にとっちゃ
小さな一尾を切り落とすのに戸惑いなどない

首を落とされ
身を削られ
それでもまだジタバタ動く

頭、身、脚

こいつは今生きてるのか はたまた


轟音が鳴り響く 
熱風の蒼が通り過ぎれば
たちまち身体はほのかに赤く
息途絶える

寿司皿の上 頭の炙り

小さな頭を箸で掴む
じっとその顔を見る

脚先は黒焦げ もう動かぬ

つぶらな瞳に問う

お前、さっきまで生きてたよな 

情もなしに口に入れ
ミソの風味 広がり 殻の砕く音 口に響く

取り残された身
2本指に包まれて

静かな一貫

口に頬張る

死にたては旨かった


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?