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世界を取り戻す……?新しい世界を作る……?どうしてこの方はこんなことをしているのだろう…
この方は確かに私を館から一瞬にして連れ出して、この何も見えない真っ暗な場所に閉じ込めた…でもこの方の話し方はいたって穏やかで粗暴な雰囲気は全く見えない…そしてその言葉ひとつひとつは不条理ではあるが丁寧…、とても悪いことをするようには……

いやいや何を考えてる私…この方は私を攫ったのだ、私の命を脅かしこの国と世界を変えてしまおうとしていることは間違いない…
今私にできることは……この方はどうしてここに私を…ここはいったい……

……ドン……ドドン……

……ドドン………ドン…………

この音……どこかで……

……ドン……ドドン……

……ドドン………ドン…………



『 ドガァアアアァァンン!!!!! 』
「きゃぁっ!!」「うわぁあっ!!」
「はっはっは!!驚いたっすか!?このデッケェやつ!
 音もデッケェ!威力もデッケェ!これがあればこの国に誰が攻め込んできても一瞬で撃退っすよ!よぉーっしお前ら次の試験だ、弾ぁ装填しろ!」
「「「 へいっ!! 」」」

「すごいわ……!さすが、もの作らせたらこの国一番の男爵様ね」
「うっへっへ、お姫さんにそんなこと言われたらさすがに照れるっすね」

「これはもう使える段階なのか?」
「あー、そうっすねぇ使えないことは無いっすけど…、まぁまだまだ試作段階なんスよ。破壊力をキープするためには筒を頑丈にしなきゃならない、けどそうなると筒は分厚い鉄で巨大化せざるを得ない。デカさも重さもハンパねぇっす!もちろん資材も金も尋常じゃないくらいかかるっす……」
「そうか……わかった、資金は……あまり気が進まないけど親父にちょっと話してみる。期待できるかどうかは…別だけど…」
「ありがてぇ!資材の方はギルド長に話してあるっすよ」
「そうか…、それなら大丈夫だな。あいつなら信頼できるし間違いなく十分な量を調達してくれるはずだ。じゃぁ男爵、急いで開発と配備を……」

「あー、それがぁ……でっけぇ問題がまだ……。
 そのー、こいつ量産するのはいいんスけどそのあとが問題でしてねぇ……」
「なんだ?」
「こいつらカッコいいけど図体デカイんすよ、俺に似て!」
「お前と同じように強ければ問題ないだろ」
「だぁからぁ!そこなんスよ。強くするためにデカイってのが問題なんス。」
「もったいぶるな、何が問題なんだ」

「あー、そのー、こいつ重くて遠くまで運べないんすよ!
 たぶん使えるとしてこのベリンゲイの周りだけになるっス!」



そうか……この音は男爵様のあの大筒……
たくさん作ってくださって、私を助けに来てくださったのね……
運ぶのが大変っておっしゃってたのに……、私のために…
…………あっ……!



「ここに近づいてはいけないと言っただろう!!
 どうして柵を越えようとしたんだ!!!!」
「うぅぅっ、ごめんなさいおとうさん……!!」
「おとうさまごめんなさい…にいさまはわるくないの!わたしがおにんぎょうをおとして、にいさまはそれをとりに……!ごめんなさい……」

「ふぅ…、そうか……あれはあとで誰かに取りにいかせる。この地下室は危ないんだ。
 ……ずうっと昔のご先祖様の話はお前たちにも聞かせたことがあったな」
「うん……わるいひとたちがわるいドラゴンをつれてきたって…」
「ごせんぞさまがおしろのしたにわるいドラゴンをうめたのよね」

「そうだ。だから私は領主としてその上に座っているのだ。二度と恐怖を世界に巻き散らさないように、この国の皆を守るために、世界を守るためにだ。いいかい、この柵の向こう側には近づいてはいけないよ。お前たちが大人になった時、私の次を継ぐとき、この国と世界を守る順番が来たとき、きちんと見せてあげよう。わかったね」
「「 うん! 」」

イラスト引用:LAN様の作品より
https://twitter.com/W_LAN01/status/1615017377963597824



お父様がおっしゃってた封印されたドラゴン……あの方の思惑……国の外に出せない男爵様の大筒……
……!!そうか……ここは館の地下……!

「あなた……ドラゴンを復活させるおつもりですか!!」

「!?」

「ここはベリンゲイの館の下にあるドラゴンの封印ですね。あなたは封印されたドラゴンを復活させるために私を攫った。新しい世界を作るって、いったい何をしようと企んでらっしゃるの?
あなたのお答え如何によっては、この国を守る家のひとりとしてあなたを行いを許すわけには参りません……!」

「………
 ふふふ……、さすが……この国の女性は聡明でいらっしゃる……。これもあの血のなせる業(わざ)というわけですか。
 そしてアレの事まで知っているとは……。伝えてきたのですか、この国の、いやこの世界の人間は。そこまで憎かったのですか……。
 人間というのはつくづく恐ろしい……。いや、それは私も同じか。この悲願、片時も忘れることはありませんでしたからね。

 なるほど!そうでしたか…!やはり素晴らしい!人間というのはなんとも素晴らしい!そして恐ろしい!とても言葉にはしつくせない!!」

「あなた…いったい…」

「……そうです……そうなんですよ。
 だからこそ、誰かがその力は制御しなければならない…。いま誰かがやらなければならない、これ以上取り返しがつかなくなる前に。そう、私がそれを担わなければならないのです。
 あなたには、理解できないと思いますがね…。歴史に埋もれた真実を知らない哀れなお嬢さん……。

 ……いやしかし、さすがに私もここまでは想定しておりませんでした」

「どうなさるおつもり…?」

「よろしい、教えて差し上げましょう。今あなたがどうなっているのか、そしてあなたがこれからどうなるのか。」



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